株式会社勝継屋
MENU
Home » 経営コラム » 経営企画室を内製化するとき。社内人材を抜擢する判断基準

全ての記事

経営企画室を内製化するとき。社内人材を抜擢する判断基準

経営企画室の内製化を考えるタイミングは、たいてい「外部に頼り続けることへの限界」を感じたときです。コンサルに依頼しても報告書が増えるだけで現場が動かない。かといって社長が一人で旗を振り続ける体力も、もう残っていない。そんな手詰まり感の中で、「うちの社員で経営企画をやれないか」という問いが浮かぶのではないでしょうか。

結論から言えば、経営企画室を内製化する際に最も見るべきは、スキルや経歴ではなく「社内の翻訳ができるかどうか」です。経営と現場の間に立ち、双方の言葉を変換して届けられる人材。その一点に絞って人を選ぶことが、内製化の成否を分けます。

本記事では、経営企画室を社内で立ち上げるときに誰を抜擢すべきか、その判断基準を3つの視点からお伝えします。教科書的な「求める人材像」ではなく、地方中小企業の現場で実際に機能する基準です。

経営企画室の内製化で最初にぶつかる壁は「人選」ではなく「役割の定義」

「誰を経営企画に置くか」を議論する前に、一つ確認させてください。あなたの会社で経営企画室は何をする部署ですか。中期経営計画を作る部署でしょうか。予算管理をする部署でしょうか。社長の右腕ポジションでしょうか。この問いに即答できない状態で人を抜擢すると、配属された本人が路頭に迷います。

一般的には「経営企画=戦略立案」と語られがちです。しかし、地方中小企業で本当に必要なのは、戦略を描くことよりも、部門間に横串を刺して情報を流通させる機能です。営業が抱える顧客の声、製造が感じている負荷、管理部門が見ている数字。それぞれがバラバラに存在している状態を束ねる。その「交通整理」こそが、内製化した経営企画室の最初の仕事になります。

役割を「戦略立案」と大きく構えすぎると、抜擢された社員は何から手をつけていいかわからず止まります。まずは「社内の情報を集めて、経営判断に使える形に整える」という具体的な一歩目を定義してください。人選はその後です。

社内人材を抜擢する3つの判断基準

基準1:現場から「あいつに言えば話が通る」と思われている人

経営企画室に必要なのは、MBAホルダーでも分析の達人でもありません。各部門のキーパーソンと日常的に会話ができる人です。あなたの会社に、部署を超えて相談を受けている社員はいませんか。昼休みに別部門の人間とメシを食っているような存在。そういう人こそ、経営企画の適任者です。

なぜなら、内製化した経営企画室の最大の敵は「現場からの拒絶」だからです。外部コンサルが嫌われる理由と同じ構造が、社内でも起きます。「あいつは現場を知らないくせに」と思われた瞬間、情報が上がってこなくなる。信頼の貯金がある人間を配置することで、この壁を初日から越えられます。

基準2:数字を「翻訳」できる人

経理ができる人を指しているのではありません。たとえば、売上が落ちている事実を見て「現場が怠けている」ではなく「受注単価が下がった背景に何があるか」と問いを立てられる人です。事実を事実のまま報告するのではなく、経営者が判断できる文脈に変換して伝えられるかどうか。この「翻訳力」が、経営企画の中核スキルです。

大手企業の経営企画経験者を中途採用する手もありますが、地方中小企業の空気感を知らない人材が機能するまでには相当な時間がかかります。それよりも、自社の数字と現場の肌感覚を両方持っている社内人材のほうが、立ち上がりは圧倒的に早い。完璧な分析力より、60点の数字を社長と現場の両方に伝えきる力を選んでください。

基準3:「嫌われる覚悟」を持てる人

経営企画室は、ときに各部門にとって耳の痛いことを伝える役割を担います。「この事業、撤退の検討が必要です」「この人員配置、根拠を教えてください」。古参社員に対してもそれを言えるかどうか。好かれることを優先する人には、この役割は務まりません。

あなたの周りに、会議で空気を読まずに本質的な質問をする社員はいないでしょうか。周囲からは少し煙たがられているかもしれません。でも、その人が言ったことが後から「あれは正しかった」と認められた経験があるなら、その社員は候補の一人です。

内製化のタイミングと「外部の使い方」を間違えないために

経営企画室の内製化は、すべてを社内で完結させることではありません。むしろ、内製化を進めるからこそ「外部に何を頼むか」が明確になります。社内に翻訳者を置いた上で、分析のフレームワークや業界比較データなど、自社だけでは手に入らないものを外部から調達する。この順番を間違えると、また「報告書だけが溜まる経営企画室」に逆戻りします。

もう一つ。内製化を急ぎすぎて、抜擢した社員を孤立させるケースが後を絶ちません。人を配置しただけで経営企画室が機能するほど、組織は甘くない。立ち上げの最初の半年間、その社員に伴走する仕組みがあるかどうか。あなたは抜擢した社員を、一人にしない覚悟がありますか。

まとめ:経営企画室の内製化は「誰を選ぶか」で決まる

本記事のポイントを3つに整理します。

  1. 内製化の前に、経営企画室の役割を「戦略立案」ではなく「社内の情報流通」と定義する
  2. 抜擢基準は「現場の信頼」「数字の翻訳力」「嫌われる覚悟」の3点に絞る
  3. 内製化は「すべて自前」ではなく、外部に頼む範囲を明確にするための起点である

経営企画室は、社長の頭の中を組織に翻訳する装置です。その装置の核になるのは、システムでもフレームワークでもなく、一人の人間の覚悟と信頼です。

まずは、あなたの会社で「この人なら」と顔が浮かぶ社員に、声をかけることから始めてください。

無料相談はこちら