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経営企画室の立ち上げにかかる費用。採用と外注の比較
経営企画室の立ち上げを考えたとき、最初にぶつかる壁が「費用」です。人を採るのか、外に頼むのか。社内にノウハウがない状態で、いったいいくら用意すればいいのか。ネットで調べても大企業向けの話ばかりで、地方の中小企業にフィットする情報はほとんど見つかりません。
結論から言えば、経営企画室の立ち上げ費用は「採用」と「外注」で構造がまったく異なります。正社員を1名採用すれば年間600〜800万円の固定費が発生し、外注型であれば月額30〜80万円の変動費に収まるケースが大半です。ただし、本当に比較すべきは金額の大小ではなく、「その費用で何が動くか」という一点です。
この記事では、採用と外注それぞれの費用構造を分解し、地方アトツギ企業が判断するときに見落としがちな落とし穴を整理します。最後まで読めば、あなたの会社にとって現実的な選択肢が見えてくるはずです。
経営企画室を「採用」で立ち上げる場合の費用構造
経営企画の経験者を正社員として採用する場合、年収レンジは500〜900万円が一つの目安です。これに社会保険料や採用コスト、PCや環境整備の費用を加えると、初年度だけで700〜1,000万円近くになることも珍しくありません。しかも、この金額は「採用できた場合」の話です。
地方の中小企業が経営企画の実務経験者を採用しようとすると、そもそも応募が来ないという現実があります。転職市場で「経営企画」と検索する人材の多くは、都市部の上場企業やコンサル出身者です。あなたの会社の求人票が、その人たちの目に留まる確率はどれくらいあるでしょうか。仮に採用できたとしても、現場との関係構築に半年、成果が見え始めるまでにさらに半年。つまり、1年分の固定費を払い終えた頃にようやくスタートラインに立つ計算です。
もう一つ見落とされがちなのが「辞めるリスク」です。経営企画は社長の右腕的な役割を担うため、社長との相性が合わなければすぐに離れていきます。古参社員との摩擦に疲弊して辞めるケースも少なくありません。採用にかけた費用と時間がゼロに戻る。この「見えないコスト」を、見積もりに入れている経営者はほとんどいません。
経営企画室を「外注」で立ち上げる場合の費用構造
外注の場合、月額30〜80万円が相場の中心帯です。年間にすると360〜960万円。金額だけ見ると採用と大きく変わらないように映るかもしれません。ただし、外注には「初月から動ける」という決定的な違いがあります。採用・教育・関係構築にかかる半年〜1年のタイムロスが発生しません。
一方で、外注にも落とし穴はあります。大手コンサルに依頼すれば月額で数百万円に跳ね上がることがありますし、きれいな報告書だけ納品されて現場が何も変わらないという話は、あなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。「戦略を描く人」と「現場を動かす人」が別々では、経営企画室としては機能しません。
外注を選ぶ際に確認すべきは、費用の安さではなく「誰が、どこまで、現場に入るか」です。資料作成だけなのか、部門横断の会議に出るのか、古参幹部との対話まで引き受けるのか。この守備範囲の違いが、同じ月額50万円でもまったく別の成果を生みます。
採用か外注か。判断の分かれ目は「フェーズ」にある
費用だけを比べても答えは出ません。判断の軸になるのは、あなたの会社が今どのフェーズにいるかです。経営企画室の「型」がまだ何もない段階で正社員を採用するのは、設計図なしに大工を雇うようなものです。まずは外部の力を借りて型をつくり、回り始めてから内製化する。この順番が、費用対効果の面でも現実的です。
逆に、すでに中期計画や予実管理の仕組みがあり、それを回す実務担当が足りないだけであれば、採用のほうが合理的な場合もあります。つまり「ゼロから立ち上げる」のか「既にある仕組みを運用する」のかで、最適な手段は変わります。あなたの会社に今あるのは、仕組みですか。それとも、仕組みを作りたいという意思だけですか。
私たちが現場で見てきた限り、地方のアトツギ企業の多くは後者です。戦略も数字も、社長の頭の中にだけある。それを言語化し、部門を横断して共有する仕組みがない。この状態で人を採っても、その人は何をすればいいか分からず孤立します。経営企画室の立ち上げ費用を考える前に、「何を立ち上げるのか」を定義する工程が必要です。
まとめ:経営企画室の立ち上げ費用を正しく見積もるために
1. 採用は年間700〜1,000万円の固定費に加え、半年〜1年の立ち上がり期間と離職リスクを織り込む必要がある
2. 外注は月額30〜80万円の変動費で初月から動けるが、「現場に入る深さ」で成果が大きく変わる
3. 型がない段階では外注で仕組みをつくり、回り始めてから内製化するのが費用対効果の高い順番である
経営企画室の立ち上げ費用は、単なるコストではなく投資です。そして投資である以上、リターンの出る順番で打ち手を選ぶ必要があります。金額の比較表を眺めている時間があるなら、まずは「自社に何が足りないのか」を言葉にするところから始めてみてください。
その最初の一歩を、一人で踏み出す必要はありません。