株式会社勝継屋
MENU
Home » 経営コラム » 経営企画室の設置を検討するとき。コストより先に考えるべきこと

全ての記事

経営企画室の設置を検討するとき。コストより先に考えるべきこと

経営企画室の設置を考えはじめるとき、多くのアトツギ経営者はまず「いくらかかるのか」「誰を配置するのか」という問いに向かいます。当然の思考です。ただ、その問いから入ると、たいてい話が止まります。費用対効果が見えず、人選で揉め、結局「もう少し様子を見よう」で半年が過ぎる。よくある光景です。

コストや人材の前に決めるべきことがあります。それは「この会社で経営企画室に何を背負わせるのか」という問いへの答えです。役割の定義が曖昧なまま箱だけつくると、現場からは「また社長の思いつきか」と冷ややかに見られ、配属された本人は板挟みで潰れます。

本記事では、地方中小企業が経営企画室を設置する前に整理すべき論点を3つに絞ってお伝えします。教科書的な組織論ではなく、現場で実際に起きる摩擦とその乗り越え方に焦点を当てます。

経営企画室の設置前に問うべきは「何を解決したいか」

経営企画室と聞くと、中期経営計画の策定、予算管理、新規事業の調査といった業務が思い浮かぶかもしれません。大手企業の経営企画部はそうした機能を担っています。しかし、社員数十名から数百名規模の地方企業で同じ絵を描くと、まず機能しません。そもそも、計画をつくる前に現場の数字が揃っていない。部門間の情報共有がない。社長の頭の中にしか戦略がない。そんな状態のほうが圧倒的に多いのです。

あなたが本当に解決したいのは何でしょうか。部門間の壁を壊したいのか、社長の右腕がほしいのか、先代から続く暗黙知を言語化したいのか。答えによって、経営企画室の形はまったく変わります。計画策定の専門チームが必要な会社もあれば、現場を横断して情報をつなぐ「通訳」が一人いれば足りる会社もあります。

最初にやるべきは、社長であるあなた自身が「一人で抱えている荷物」を棚卸しすることです。誰にも渡せていない判断、誰にも見せていない数字、言葉にできていない危機感。それを書き出すだけで、経営企画室に持たせるべき機能の輪郭が見えてきます。

経営企画の担い手を「採用」で解決しようとする落とし穴

役割がぼんやり見えてくると、次に浮かぶのは「誰にやらせるか」です。ここで多くの企業が、外から経験者を採用しようとします。大手出身で経営企画の経験がある人材。履歴書は立派です。ただ、地方中小企業の経営企画は、大手のそれとはまるで別の仕事です。

大手での経営企画は、整備されたデータと明確な権限のもとで動きます。一方、中小企業の経営企画は、データを自分でつくるところから始まります。現場に入り込み、古参社員の懐に入り、時には社長と現場の間で嫌われ役を引き受ける。そんな泥臭さが求められます。華麗な戦略スライドより、週次で現場を回る足腰のほうがよほど価値を生みます。

採用がうまくいかないもう一つの理由は、受け入れ側の準備不足です。既存の幹部や古参社員からすれば、突然やってきた「社長の側近」は脅威でしかありません。あなたの会社で経営企画室が機能するかどうかは、配属する人材の能力以上に、その人が動ける土壌を社長自身がつくれるかにかかっています。

設置の「タイミング」は完璧を待つと永遠に来ない

「まだうちには早い」「もう少し業績が安定してから」。経営企画室の設置を先送りする理由は無限に出てきます。しかし、経営企画的な機能が必要だと感じた時点で、すでにタイミングは来ています。組織の課題は放っておいて小さくなることがありません。

ここで一つ、視点を変えてみてください。経営企画室は、立派な部署として完成形でスタートさせる必要はありません。最初は「社長と月2回、課題を言語化する時間を持つ」だけでもいい。外部の人間に壁打ち相手を頼む形でもいい。小さく始めて、機能を後から足していくやり方が、地方中小企業には合っています。

あなたの会社の歴史や現場の力は、整理されていないだけで、すでに十分な強みを持っているはずです。それを「自分たちだからできること」として翻訳し、経営の意思決定に反映させる仕組みをつくる。それが、地方企業における経営企画室の本来の姿です。完璧な準備を待つ必要はありません。

まとめ:経営企画室の設置で最初に決めるべき3つのこと

1. 解決したい課題を明確にする。箱ではなく、役割から設計する。
2. 採用より先に、その人が動ける土壌を社長自身がつくる。
3. 完成形を目指さない。小さく始めて、現場と一緒に育てる。

経営企画室は、つくること自体が目的ではありません。社長が一人で背負ってきた判断と孤独を、組織の力に変えるための仕組みです。計画書の美しさではなく、現場に横串を通す泥臭い実行にこそ価値があります。

まずは、あなたが抱えている荷物を一つ、テーブルの上に出すところから始めてみてください。

無料相談はこちら