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経営企画室の立ち上げ手順。最初の3ヶ月でやるべきこと
「経営企画室を立ち上げたい。でも、何から手をつければいいのかわからない」。地方中小企業のアトツギから、この相談を受けない月はありません。先代から引き継いだ会社に、戦略を考える部署がない。社長が一人で数字を見て、一人で方針を決めて、一人で現場に降ろしている。その限界に気づいたあなたが、経営企画室の立ち上げという選択肢にたどり着いたのだと思います。
結論から言います。経営企画室の立ち上げ手順で最も大切なのは、最初の3ヶ月で「組織図」や「中期経営計画」をつくることではありません。まず現場の情報を集め、経営と現場のあいだに「橋」を架ける人と仕組みをつくること。これが最初の3ヶ月の全てです。
この記事では、経営企画室を新設するときの具体的な手順を3つのフェーズに分けて解説します。教科書的な正解ではなく、地方の中小企業で実際に起きる「つまずき」を踏まえた実行論としてお伝えします。
手順の前に確認すべきこと。経営企画室は「何のため」につくるのか
経営企画室の立ち上げ手順を調べているあなたに、最初に問いたいことがあります。その経営企画室は、誰のためのものですか。社長の右腕がほしいのか。現場の声を吸い上げる仕組みがほしいのか。それとも、銀行や取引先に「ちゃんとした会社です」と見せるための看板がほしいのか。目的が曖昧なまま箱だけつくると、半年後には「何をやっている部署かわからない」と社内で浮きます。
よくある失敗は、大手企業の経営企画部をそのまま真似るパターンです。中期経営計画の策定、予算管理、IR対応。それは社員数百名規模の会社の話です。社員30名の会社に必要なのは、立派な計画書ではなく、社長の頭の中にある方針を現場が理解できる言葉に「翻訳」し、現場の実態を社長に「翻訳」して返す機能です。経営企画室の本質は、翻訳機関。まずこの認識を持つことが、手順のゼロ番目になります。
最初の1ヶ月目。経営企画室の立ち上げは「聞くこと」から始まる
1ヶ月目にやるべきことは、ひたすら聞くことです。社長へのヒアリング、幹部への個別面談、現場社員との雑談。経営企画室の担当者がまず手に入れるべきものは、フレームワークでもExcelの管理表でもなく、「社内の地図」です。誰がどんな情報を持っていて、どこで情報が詰まっているのか。その地図は、会議室ではなく現場を歩かないと手に入りません。
ここで多くのアトツギがつまずくのは、古参社員の反応です。「なぜ今さらそんな部署をつくるのか」「先代のやり方で回っているのに」。この反応は自然なものです。大切なのは、反論することではなく、その声も含めて「現状の地図」に書き込むこと。反発の裏にある不安や本音こそ、経営企画室が最初に扱うべき情報です。あなたは、その声を聞く覚悟がありますか。
2ヶ月目の手順。小さな「横串」を1本通す
2ヶ月目にやるべきことは、部署を横断する小さな仕組みを1つだけつくることです。全社の経営会議体を整備する、という大きな話ではありません。たとえば、営業と製造のあいだで毎週起きている納期トラブル。その情報共有のために、週1回15分だけ関係者が顔を合わせる場をつくる。それだけで十分です。
経営企画室の立ち上げで失敗する典型は、最初から大きな仕組みをつくろうとすることです。全社戦略の立案、KPIの設計、経営ダッシュボードの構築。どれも必要な仕事ですが、2ヶ月目にやることではありません。現場が「この部署があると助かる」と感じる小さな成功体験を1つつくること。それが経営企画室の存在意義を社内に証明する最短の手順です。泥臭い調整役を引き受けられるかどうか。ここが分かれ道になります。
「嫌われ役」を引き受ける機能をどうつくるか
横串を通すとは、部署間の利害を調整するということです。営業は「もっと早く納品したい」、製造は「急な変更に対応できない」。この間に立って、どちらの顔も立てながら落としどころを見つける。社長が直接やれば角が立つ調整を、経営企画室が代わりに担う。これは綺麗な仕事ではありません。しかし、この「嫌われ役」こそが経営企画室の存在価値の核です。
3ヶ月目の手順。経営企画室の「型」を決める
3ヶ月目に入ったら、ようやく経営企画室の運用ルールを固めます。定例の報告フォーマット、会議体の頻度と参加者、社長への報告ライン。1〜2ヶ月目で集めた情報と、小さな成功体験をもとに、自社に合った型を設計します。他社の事例をそのまま持ち込んでも機能しません。あなたの会社の規模、文化、社員の性格に合わせた型を、自分たちの手でつくる必要があります。
もう一つ、3ヶ月目に決めておくべきことがあります。経営企画室に「誰を置くか」です。社外から経験者を採用するのか、社内から抜擢するのか。どちらにもリスクがあります。外部人材は社内の文脈が読めない。社内人材は既存の人間関係に縛られる。だからこそ、最初の3ヶ月で社内の地図を描いておくことが生きてきます。地図があれば、どんな人材が必要か、解像度の高い判断ができます。
まとめ:経営企画室の立ち上げ手順は「聞く・通す・固める」の3ステップ
1. 1ヶ月目は現場を歩き、経営と現場の「情報の地図」を描く
2. 2ヶ月目は部署間に小さな横串を1本通し、存在意義を証明する
3. 3ヶ月目に自社に合った運用の「型」と人材配置を固める
経営企画室の立ち上げに、完璧な準備は必要ありません。必要なのは、現場に足を運ぶ泥臭さと、経営者の想いを社内に届ける翻訳力です。先代がつくり上げた会社の歴史は、変えるべき古い慣習ではなく、次の戦略を組み立てるための土台になります。
最初の一歩を、今日踏み出してください。