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経営企画室の担当者に必要なスキル。地方企業で活きる能力とは
経営企画室の担当者を置きたい。でも、誰を任命すればいいのかわからない。地方の中小企業でこの悩みを抱えるアトツギ経営者は少なくありません。MBAホルダーを採用すればいいのか、コンサル出身者を引き抜けばいいのか。答えが見えないまま、結局は社長自身がすべてを抱え続けている。そんな状態ではないでしょうか。
結論から言います。地方企業の経営企画室担当者に求められるのは、華やかな分析スキルではなく、「社長の言葉を現場に届け、現場の声を社長に届ける」翻訳力です。戦略を描く能力より、社内の断絶をつなぐ人間としての胆力のほうが、はるかに成果に直結します。
本記事では、教科書的なスキル一覧ではなく、地方中小企業の現場で本当に機能する経営企画担当者の条件を3つの切り口で解説します。人選で迷っているあなたに、判断の軸をお渡しします。
経営企画室の担当者に求められる「翻訳力」とは
一般的に、経営企画担当者のスキルとして挙げられるのは財務分析、市場調査、中期経営計画の策定といったものです。もちろん、これらの知識はあるに越したことはありません。しかし地方の中小企業で最初に必要になるのは、もっと手前の能力です。それは、社長が頭の中で考えていることを言語化し、現場が理解できる粒度に翻訳する力です。
あなたの会社では、社長の方針が現場に正確に届いていますか。多くの場合、社長は「言ったつもり」、現場は「聞いていない」。この認識のズレが、戦略以前の問題として組織を蝕んでいます。経営企画室の担当者は、この間に立つ通訳です。社長の言葉を噛み砕き、現場の反応を拾い上げ、双方の「本音」を交通整理する。泥臭い仕事ですが、ここが機能しなければどんな立派な計画も紙の上で終わります。
分析力より「聞く力」が先に来る理由
大手企業の経営企画部であれば、データを集めて分析し、経営会議に資料を出すのが主な仕事かもしれません。しかし地方中小企業では、そもそもデータが整備されていないことのほうが多い。数字の前に、人の話を聞くところから始まります。古参社員が何を不安に思っているのか。営業と製造の間にどんな感情のしこりがあるのか。こうした「数字にならない情報」を拾える人こそ、地方の経営企画室で真価を発揮します。
地方企業の経営企画担当者が持つべき「嫌われる覚悟」
社長の右腕として経営企画室に入る人間は、社内で好かれる存在にはなりにくい。部門間の利害調整に踏み込めば、どこかから必ず反発が出ます。「あの人は社長の手先だ」と陰で言われることもあるでしょう。それでも、会社の未来のために必要な問いを投げかけられるか。ここが担当者の資質を分ける境界線です。
あなたが経営企画の担当者を選ぶとき、「社内の人望が厚い人」を真っ先に候補にしていませんか。人望はたしかに大切です。しかし、全方位に好かれようとする人は、本質的な課題に切り込めません。必要なのは、嫌われた後でも関係を修復できる胆力と誠実さです。八方美人ではなく、筋を通せる人間。それが地方企業の経営企画担当者に求められる人物像です。
外部人材か、社内抜擢か
経営企画の担当者を社外から採用するか、社内から抜擢するか。これも多くのアトツギが悩むところです。外部人材はフレームワークや分析手法を持っていますが、社内の人間関係や暗黙のルールを知りません。社内人材は逆に、関係性のしがらみに縛られて切り込めないことがある。どちらにも落とし穴があります。だからこそ、「社内の文脈を理解しながら、外の視点で問いを立てられる存在」が理想です。自社だけで難しければ、外部の伴走者を活用する選択肢も現実的です。
経営企画室の担当者選びで失敗しないための判断基準
では具体的に、どんな基準で担当者を選べばいいのか。私たちが現場で見てきた中で、機能する担当者には共通点が3つあります。1つ目は、社長と1対1で率直に話ができること。2つ目は、現場に自分の足で出向いて話を聞けること。3つ目は、完璧な資料を作るより、60点の段階で動き出せること。この3つが揃う人材は、MBAを持っていなくても経営企画室を回せます。
あなたの社内に、会議では目立たないけれど部門をまたいで相談を受けている人はいませんか。そういう人が、実は経営企画室の担当者として最も機能する可能性があります。スキルは後から身につきます。しかし、人の間に立てる性質は簡単には育ちません。履歴書のスペックではなく、社内での立ち振る舞いを見てください。
まとめ:経営企画室の担当者は「スキル」より「立ち位置」で選ぶ
本記事のポイントを3つに整理します。
- 地方企業の経営企画室担当者に最も必要なのは、社長と現場の間をつなぐ翻訳力である
- 全員に好かれる人より、嫌われても筋を通し、関係を修復できる人が機能する
- 完璧なスキルセットより、60点で動き出せる行動力と、人の間に立てる性質を優先する
経営企画室は、つくること自体が目的ではありません。社長が一人で背負ってきた荷物を、組織として担げる状態にするための仕組みです。そして、その仕組みの核となる担当者選びは、会社の未来を左右する意思決定でもあります。
もし今、「うちにはそんな人材がいない」と感じているなら、それは人がいないのではなく、任せ方がまだ見えていないだけかもしれません。一歩目の踏み出し方を、一緒に考えさせてください。