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古参社員と経営企画室。長年の実績を持つ社員を動かす方法

経営企画室を立ち上げようとしたとき、最初にぶつかる壁は戦略でも予算でもありません。古参社員の存在です。「また新しいこと始めるんですか」「うちのやり方はこうだから」。その一言が、どれほどアトツギ経営者の足を止めてきたか。あなたにも心当たりがあるのではないでしょうか。

結論から言います。古参社員は敵ではなく、経営企画室にとって最大の資産になり得ます。ただし、動かし方を間違えると組織は一瞬で分裂します。教科書的な「巻き込み」では通用しない、現場の力学を理解した上でのアプローチが必要です。

この記事では、古参社員がなぜ抵抗するのかという構造を解き明かし、経営企画室の立ち上げ期に彼らをどう味方につけるか、具体的な方法をお伝えします。

古参社員が経営企画室に抵抗する本当の理由

「変化を嫌っている」「プライドが高い」。古参社員の抵抗を、多くの経営者はそう解釈します。しかし現場で見てきた実態は少し違います。彼らが恐れているのは変化そのものではなく、自分の居場所がなくなることです。長年かけて築いた仕事のやり方、社内での立ち位置、取引先との関係。経営企画室という新しい機能が入ってくることで、それらが否定されるのではないかという不安が、抵抗の正体です。

もう一つ見落とされがちな事実があります。古参社員の多くは、先代社長と二人三脚で会社を支えてきた自負を持っています。その自負は、裏を返せば「この会社のことは自分が一番わかっている」という信念です。外から来た理論や、若い世代が持ち込む新しい手法に対して身構えるのは、むしろ自然な反応と言えます。あなたは、彼らの抵抗の裏にある感情を正確に読めていますか。

経営企画室の立ち上げ初期にやるべきこと、やってはいけないこと

古参社員を「説得」しようとしない

コンサルの教科書には「キーパーソンを巻き込み、変革のビジョンを共有せよ」と書いてあります。正しいように見えますが、地方中小企業の現場ではほぼ機能しません。なぜなら、古参社員にとって「ビジョン共有の場」は「自分のやり方を否定される場」に見えるからです。説得の姿勢で臨んだ時点で、相手は壁を作ります。

私たちが現場で繰り返し目にしてきたのは、説得ではなく「聞くこと」から始めた経営企画室だけが機能するという事実です。古参社員が持つ取引先の情報、現場の暗黙知、過去の失敗の記憶。これらは数値化されていないだけで、経営企画の土台になる情報そのものです。最初の1か月は、戦略を語る前に、彼らの話を聞く時間に充ててください。

「お伺い」ではなく「頼る」という構造をつくる

聞くといっても、ご機嫌取りとは違います。「教えてください」と頭を下げるのでもありません。経営企画室が本当に必要としている情報を、古参社員が持っているという事実を、仕組みとして見える化することです。たとえば、新規事業の市場調査をする前に、既存顧客の離反傾向を古参社員にヒアリングする。数字の裏にある文脈を、彼らの言葉で補完する。この「頼る構造」が、古参社員の当事者意識を自然に引き出します。

古参社員の経験を経営企画室の武器に変える方法

一般的に、経営企画室は「未来を描く部署」として位置づけられます。しかし未来は過去の延長線上にしか存在しません。特に地方の中小企業では、地域との関係性や長年の取引慣行が経営の根幹にあります。これを無視して描いた未来は、絵に描いた餅で終わります。あなたの会社の歴史を一番深く知っている人は誰ですか。おそらく古参社員です。

具体的な手法を一つ挙げます。古参社員に「過去の成功体験」ではなく「過去の危機とその乗り越え方」を語ってもらう場をつくることです。成功体験は自慢話になりがちですが、危機の記憶は組織の判断基準そのものです。リーマンショック後にどう立て直したか、主要取引先を失ったときに何をしたか。その判断の軸は、経営企画室が策定する方針の「地盤」になります。

古参社員の経験を「昔話」として処理するか、「経営資産」として活用するか。その翻訳をするのが、経営企画室の最初の仕事です。過去の事実は変えられませんが、その意味づけは変えられます。「あの苦しい時期を乗り越えた判断力がある会社だからこそ、次の挑戦ができる」。そう再定義したとき、古参社員は抵抗勢力から推進力に変わります。

まとめ:古参社員と経営企画室が噛み合う組織をつくるために

本記事の要点を3つに絞ります。

  1. 古参社員の抵抗の正体は「変化への拒否」ではなく「居場所を失う不安」である。その感情を正確に読み取ることが出発点になる。
  2. 経営企画室の立ち上げ初期は、説得より傾聴。古参社員が持つ暗黙知を「頼る構造」で引き出す仕組みをつくる。
  3. 過去の経験を「昔話」ではなく「経営資産」として翻訳する。それが経営企画室の最初の、そして最も泥臭い仕事である。

古参社員と経営企画室の関係は、どちらかが折れることで成り立つものではありません。長年の実績を持つ人間の経験と、新しい視座を持つ機能が噛み合ったとき、組織は静かに、しかし確実に動き始めます。

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