全ての記事
経営企画室に未経験で入るとき。最初の6ヶ月でやるべきこと
経営企画室に未経験で配属された。あるいは、自社に経営企画室をつくろうとしているが、誰もやったことがない。地方の中小企業では、この状況が当たり前です。教科書を開けば「中期経営計画の策定」「KPIの設計」と書いてありますが、現場にはそれ以前の問題が山積みではないでしょうか。
結論から言います。未経験で経営企画室に入った最初の6ヶ月は、戦略を描くことではなく「社内の通訳者」になることに全力を注いでください。経営と現場のあいだに立ち、双方の言葉を翻訳する。その土台ができなければ、どんな立派な計画も紙の上で眠るだけです。
この記事では、未経験から経営企画室を機能させるために、最初の6ヶ月で具体的に何をやるべきかを3つのフェーズに分けて解説します。大手コンサル向けのフレームワークではなく、地方アトツギ企業の現場で実際に使える話だけをお伝えします。
最初の2ヶ月:未経験の経営企画担当がまずやるべきは「聞くこと」
経営企画室の立ち上げでありがちな失敗は、着任早々に課題を整理しようとすることです。ホワイトボードにSWOT分析を書き、競合調査のスプレッドシートをつくる。一見正しく見えます。しかし、社内の誰がどんな不満を抱えていて、何が意思決定を止めているかを知らないまま分析しても、空回りするだけです。
最初の2ヶ月は、ひたすら聞く期間にしてください。営業部、製造部、総務部。古参の社員も、入社2年目の若手も。「この会社で一番困っていることは何ですか」というシンプルな問いを、一人ひとりに投げかけるのです。あなたはこの問いを、経営者として、あるいは経営企画の担当者として、自社の社員に直接聞いたことがあるでしょうか。
ここで出てくる答えは、戦略ではなく感情です。「社長に言っても変わらない」「あの部署とは話が通じない」「昔からこうだから」。泥臭い不満の中にこそ、経営企画室が最初に解くべき課題が埋まっています。この工程を飛ばして計画に走ると、現場から「また上がよく分からないことを始めた」と冷めた目で見られます。
3〜4ヶ月目:経営企画室の役割を「横串」として社内に示す
聞き終えたら、次は小さな成果を見せるフェーズです。ただし、ここで大きな改革を打ち出す必要はありません。一般的には「中期経営計画を策定せよ」と言われますが、未経験で立ち上げたばかりの経営企画室に、そんな大きな看板は荷が重すぎます。それよりも、部署間で止まっている小さな案件を1つ動かしてください。
たとえば、営業部が要望していた見積もりフォーマットの変更が、総務との調整で半年止まっている。製造部が欲しがっていたデータを、経理が別の形式で持っている。こうした「誰かがつなげば30分で終わる話」を見つけて、自分がつなぎ役になるのです。あなたの会社にも、部署のあいだに落ちたまま誰も拾わない仕事がありませんか。
この小さな横串が、経営企画室の存在意義を社内に伝えます。「あの部署に頼めば話が動く」という実感が生まれれば、情報は自然と集まるようになります。逆に、最初からコンサル的な資料作成に閉じこもると、現場との距離は開く一方です。経営企画室は会議室ではなく、現場の通路にこそ居場所があります。
5〜6ヶ月目:経営と現場を「翻訳」する仕組みをつくる
半年が見えてきたら、仕組みづくりに着手します。ここで初めて、定例の報告会や数字の可視化といった「経営企画室らしい」仕事が出てきます。ただし、形から入らないでください。月次のレポートを20ページつくるよりも、社長が本当に知りたい数字を1枚にまとめる方が百倍価値があります。
未経験で経営企画を担う方が見落としがちなのは、経営者の言葉と現場の言葉はまったく違う言語だという点です。社長が「生産性を上げたい」と言ったとき、現場は「また人を減らされるのか」と受け取ります。経営企画室の仕事は、この翻訳です。社長の意図を現場が受け取れる言葉に変え、現場の声を社長が判断できる情報に変える。あなたの社内で、この翻訳を担っている人は今いるでしょうか。
仕組みといっても、最初は週1回15分の情報共有で十分です。経営と現場のあいだに定期的な接点をつくるだけで、意思決定のスピードは変わります。半年後に振り返ったとき、「社内に通訳者がいる」という状態が生まれていれば、経営企画室の立ち上げは成功です。
まとめ:未経験の経営企画室は、泥臭い6ヶ月でつくられる
未経験で経営企画室を立ち上げる最初の6ヶ月。やるべきことを3つに絞ります。
- 最初の2ヶ月は戦略を描く前に、社内の声を一人ずつ聞いて回る
- 3〜4ヶ月目は部署間に落ちた小さな課題を拾い、横串の実績をつくる
- 5〜6ヶ月目は経営と現場を翻訳する仕組みを、小さくてもいいから形にする
フレームワークも戦略資料も、この土台があって初めて機能します。経営企画室とは、組織に「対話の回路」を埋め込む仕事です。未経験であることは弱みではありません。社内のどこにもしがらみがないからこそ、部署の壁を越えられる。その立場を武器にしてください。
6ヶ月後、あなたの会社に必要な経営企画室の形は、あなた自身の足で歩いた先にしかありません。まず明日、現場の一人に声をかけることから始めてみてください。