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製造業に経営企画室を立ち上げる。職人組織に横串を通す現実

製造業の経営企画室。言葉にすると整って聞こえますが、実態は「つくってみたけど機能しない」「誰を置けばいいかわからない」という声が大半です。とくに職人気質の組織では、現場が強い分だけ、横串を通す機能が根づかないまま空回りするケースが後を絶ちません。

先に結論を言います。製造業に経営企画室を立ち上げるとき、最初にやるべきは戦略立案でも中期経営計画でもありません。現場と経営の間に「通訳」を置くことです。計画は後からついてきます。まず必要なのは、部門間に漂う沈黙を言語化し、社長の頭の中にある絵を現場が動ける粒度に翻訳する人間の配置です。

本記事では、製造業で経営企画室を立ち上げる際にぶつかる壁と、それを乗り越えるための現場寄りのアプローチを解説します。教科書的な組織論ではなく、職人組織に横串を通すために必要な泥臭い実行論をお伝えします。

なぜ製造業の経営企画室は「お飾り」になるのか

一般的に、経営企画室の役割は「全社戦略の策定」「経営会議の運営」「数値管理」などと定義されます。しかし、製造業の現場にこの定義をそのまま持ち込むと、ほぼ確実に浮きます。理由は単純で、製造業の価値の源泉が「現場の手」にあるからです。手を動かさない部署に対して、現場は本能的に距離を取ります。

あなたの会社では、新しい部署や役職をつくったとき、現場から「で、何してくれるの」と冷ややかな視線を向けられた経験はないでしょうか。製造業の経営企画室が機能不全に陥る最大の原因は、戦略が足りないことではありません。現場との信頼回路がないまま箱だけつくってしまうことです。

大手コンサルが描く組織図には、きれいに経営企画室が配置されています。けれど、その図の通りに人を配置しても、職人たちが心を開かなければ情報は流れてきません。情報が流れなければ、経営企画室はただの「社長の伝書鳩」になります。

職人組織に横串を通すための3つの手順

手順1:現場の言葉を聞きに行く

経営企画室の立ち上げ初期に、いきなり全社方針や数値目標を掲げるのは逆効果です。まずやるべきは、各部門のキーマンに「困っていること」を聞いて回ることです。製造、品質管理、出荷、営業。それぞれが抱えている不満や諦めを、先入観なく拾い集める。ここで得た声が、経営企画室の存在意義そのものになります。

手順2:小さな成果を現場に返す

聞いた声のなかから、1週間以内に手を打てる小さな課題を見つけて解決します。部門間の連絡ルートが曖昧なら整理する。月次の数字が現場に届いていないなら届ける仕組みをつくる。派手な戦略ではなく、「あの人たちに頼んだら動いてくれた」という実績を積むことが、製造業の経営企画室が根づく唯一の道です。

あなたが経営企画室に求めているのは、半年後の美しいレポートですか。それとも、来週から現場が少しだけ楽になる仕組みですか。答えは明白なはずです。

手順3:社長の言葉を「現場語」に翻訳する

社長の頭にはビジョンがあります。しかし、そのビジョンが現場に届くころには抽象度が高すぎて、職人たちには響きません。経営企画室の本質的な機能は、社長の意志を現場が腹落ちする言葉に変換することです。逆に、現場の声を経営判断に使える情報へ変換することでもあります。この双方向の翻訳ができたとき、経営企画室は初めて組織の「背骨」になります。

経営企画室に「誰を置くか」という問い

製造業で経営企画室を新設するとき、必ず突き当たるのが人選の問題です。教科書的には「MBA保持者」「戦略コンサル出身者」といった人材が推奨されます。しかし現場の実態はどうでしょうか。外部から来たエリートが、油まみれの工場を歩き回り、古参の職人と膝を突き合わせて話せるでしょうか。

私たちが見てきた限り、製造業の経営企画室で最初に機能するのは「社内の信頼残高が高い人間」です。営業と製造の両方に顔が利く中堅社員、あるいは現場を知ったうえで数字も読めるアトツギ自身。肩書きよりも、廊下ですれ違ったときに声をかけてもらえるかどうか。それが製造業の経営企画室における人選の基準です。

もちろん、社内人材だけでは視野が偏るリスクがあります。だからこそ外部の伴走者が必要になる場面もあります。ただし、その外部人材は「戦略を授ける人」ではなく「社内の翻訳と実行を一緒に泥だらけになって支える人」でなければ意味がありません。

まとめ:製造業の経営企画室は「箱」ではなく「回路」である

本記事の要点を整理します。

  1. 製造業の経営企画室が空回りする原因は、戦略の不足ではなく現場との信頼回路の欠如にある
  2. 立ち上げ初期は、全社戦略より先に現場の声を拾い、小さな成果を返すことで信頼を積む
  3. 人選の基準は「スキル」ではなく「現場との信頼残高」。社長の言葉と現場の言葉を双方向に翻訳できる人間を置く

経営企画室は、つくった瞬間に機能するものではありません。現場との対話を重ね、小さな信頼を積み重ねた先に、組織の血流が変わる瞬間が訪れます。その地道な過程を、あなたは一人で抱え込む必要はありません。

職人たちが誇りを持って働く組織に、横串を通す覚悟があるなら。まずは、その一歩を踏み出してください。

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