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ベンチャー企業に経営企画室を作るとき。「早すぎる」はあるか

ベンチャー企業に経営企画室をつくる。そんな話を持ち出すと、「うちはまだ早い」「そんな余裕はない」と返されることが少なくありません。社員数十名、プロダクトもまだ磨いている途中。走りながら考えるのが当たり前の環境で、「企画室」という言葉はどこか大企業の匂いがして、現場から浮いて見えるのかもしれません。

結論から言います。ベンチャーに経営企画室が「早すぎる」ことはありません。ただし、大企業のそれをそのまま持ち込めば確実に失敗します。必要なのは、立派な組織図ではなく、社長の頭の中を現場に翻訳し、現場の声を経営判断に届ける「機能」のほうです。

この記事では、ベンチャーが経営企画室を立ち上げるべきタイミングの見極め方、よくある失敗パターン、そして小さな組織だからこそ機能する経営企画のかたちについて解説します。

「まだ早い」と感じるベンチャーほど、経営企画機能が足りていない

経営企画室と聞くと、中期経営計画をつくり、予算を管理し、取締役会の資料を整える部署を想像する方が多いかもしれません。しかしベンチャーの現場で本当に不足しているのは、計画書の作成能力ではありません。社長が朝令暮改で出す方針を、各部門が同じ解像度で理解しているか。その確認と調整を、誰がやっているか。そこに穴があるのです。

社員が20名を超えたあたりから、社長の言葉は伝言ゲームになります。営業が聞いた話と開発が聞いた話が微妙にずれ、気づいたときには現場同士がぶつかっている。あなたの会社で、部門間の「なんか話が違う」が増えていないでしょうか。それは人の問題ではなく、構造の問題です。経営企画室とは、その構造を整える最小単位の仕組みにほかなりません。

ベンチャーが経営企画室の立ち上げで陥る2つの失敗

失敗1:大企業モデルをそのまま真似る

教科書やコンサル資料に載っている経営企画室の役割一覧をそのまま適用しようとするケースがあります。中計策定、KPI管理、IR対応、新規事業評価——。やるべきことを並べた瞬間、ベンチャーの経営企画室は「何でも屋」になり、結局どれも中途半端になります。大企業には各機能を支える周辺部署がありますが、ベンチャーにはそれがありません。同じ設計図で家は建たないのです。

失敗2:「優秀な人材を採れば解決する」と思い込む

大手企業やコンサルファーム出身者を経営企画担当として迎えるパターンも多く見られます。しかし、整った環境で力を発揮してきた人が、仕組みそのものが存在しないベンチャーで同じように動けるとは限りません。むしろ、現場との距離が開き、「あの人は現場を知らない」というレッテルを貼られて孤立するケースを何度も見てきました。採用の前に、その人が何をする役割なのかを現場と握っておく。この順番を間違えると、人も組織も傷つきます。

ベンチャーに合う経営企画室は「横串の通訳者」である

私たちが考える、ベンチャーにおける経営企画室の役割はシンプルです。社長の意思決定を現場語に翻訳し、現場の事実を経営語に翻訳する。この「通訳」を担う機能です。戦略を描くことよりも、すでに社長の頭の中にある方針を、全員が同じ粒度で理解できる状態にすることのほうが、はるかに価値があります。

具体的には、週次で各部門のリーダーと15分ずつ話し、数字だけでなく「困っていること」を拾う。社長が会議で発した一言の背景を補足し、部門ごとに「うちは何をすればいいのか」を言語化する。地味で泥臭い作業です。でも、この横串がなければ、ベンチャーの意思決定スピードはそのまま現場の混乱スピードになります。あなたの会社で、社長の決断が速いのに実行が遅いと感じるなら、足りないのは戦略ではなく、この通訳機能かもしれません。

もうひとつ。経営企画室をつくると、社長自身の思考が整理されるという副次的な効果があります。壁打ち相手ができることで、感覚的に下していた判断が言語化され、再現性が生まれる。これは、次のステージに進むベンチャーにとって見過ごせない変化です。

まとめ:ベンチャーの経営企画室は「小さく・早く・泥臭く」

本記事のポイントを3つに整理します。

  1. 経営企画室が「早すぎる」ことはない。社長の言葉が伝言ゲームになり始めたら、それが立ち上げの合図である。
  2. 大企業モデルの模倣と、採用頼みの丸投げは、ベンチャーの経営企画室を壊す二大パターンである。
  3. ベンチャーに必要な経営企画室は、戦略を描く参謀ではなく、社長と現場をつなぐ「横串の通訳者」である。

立派な部署をつくる必要はありません。まずは一人、社長と現場の間に立って言葉を揃える人間がいるだけで、組織の景色は変わります。

その一歩を、今日踏み出してみてください。

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