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経営録

2025.06.17

地方企業は副業人材をうまく活用しましょう

1. はじめに ― 正社員にこだわらない時代へ

「人が足りない」「いい人が採れない」

これは地方企業の経営者から日常的に聞こえてくる言葉です。少子高齢化や若年層の都市部流出により、地方では慢性的な人手不足が続いています。正社員を雇いたくても応募が来ない、来たとしても思ったようなスキルや志を持つ人材と出会えない――そんな状況に悩まされる会社も多いのではないでしょうか。

しかし、時代は確実に変わっています。副業解禁が進み、企業・働き手ともに「ひとつの会社でフルタイム勤務」という従来の常識に縛られない、柔軟な働き方を求めるようになりました。

地方企業にとって、これはチャンスです。

正社員を確保することが難しい今だからこそ、“副業人材”という新しい戦力を活用することで、自社の組織に新たな風と機能を取り入れることができるのです。

本記事では、地方企業が副業人材を活用すべき理由、そのメリット、実際の活用法、そして理念経営と副業の相性について詳しく解説していきます。

2. 地方企業が抱える人材の課題

2-1. 若手が集まらない構造的課題

大学進学や就職を機に、若者の多くが都市部に出て行き、地方に戻ってこない現状があります。地域には魅力的な企業があっても、「そもそも知ってもらえない」「選択肢に入らない」という課題が根強く、特に中小規模の地方企業では人材の流入が極めて限定的になっています。

2-2. 採用しても育つ前に辞めてしまう

せっかく採用できた若手社員が、十分に育つ前に辞めてしまう――これは地方企業に限らず多くの会社で起きていることですが、特に人材リソースが限られる地方企業にとっては大きな損失です。育成コストに対するリターンが見込めず、「人を採ってもどうせすぐ辞める」という採用疲れが広がってしまっています。

2-3. 特定のスキル人材がどうしても見つからない

マーケティング、ブランディング、EC、システム構築、SNS活用、海外対応――今や地方企業にも求められるスキル領域は多岐に渡りますが、それらに対応できる専門人材が地元にいるとは限りません。仮にいたとしても、タイミングや条件が合わず採用できないということも。

このように、地方企業が人材面で抱える問題は、正社員採用にこだわり続ける限り、なかなか解決の糸口が見えにくいのです。

3. 副業人材とは?いま注目される理由

3-1. 副業解禁と働き方改革

大企業を中心に「副業解禁」が進み、政府もそれを後押しする中で、「本業を持ちながら他社の仕事をする」ことが当たり前の時代になりつつあります。特にスキルや経験のあるビジネスパーソンが、平日の夜や週末を使って他社のプロジェクトに関わる“副業的フリーランス”として活動するケースが増えています。

3-2. 地方企業が「選ばれる」時代に

かつては都会の人材から見て“地方企業=遠い存在”でした。しかし今はリモートワークの普及によって、物理的な距離のハードルが下がり、**「理念やビジョンに共感できる地方企業と一緒に仕事がしたい」**という価値観が生まれつつあります。副業だからこそ関われる。副業だからこそ、まずはライトに挑戦できる。そう考える優秀人材が、地方に目を向け始めているのです。

4. 地方企業が副業人材を活用するメリット

4-1. 必要なスキルを必要な期間だけ確保できる

副業人材はプロジェクト単位・タスク単位での関与が基本です。たとえば「3カ月だけSNS施策を立ててもらう」「半年だけ英語サイトの翻訳と立ち上げを頼む」など、必要なときに、必要な分だけ、必要な人を呼び込むことができます。正社員採用に比べて固定費リスクが低く、費用対効果が明確です。

4-2. 外部の視点を取り入れ、組織に刺激を与える

外の世界で活躍している副業人材が入ることで、社員にも良い刺激が生まれます。ときには、「今のやり方は古いのでは?」「この工程は自動化できますよ」など、内部だけでは気づけない視点から課題を指摘してもらえることも。これは地方企業が革新していく上で非常に貴重な存在です。

4-3. 社員の成長機会になる

副業人材が持つスキルや思考法に触れることで、社員が間接的に学ぶ機会が生まれます。社内だけでは得られない情報や考え方に触れることで、若手や中堅社員が“気づき”を得て、自らの成長につながることも少なくありません。

4-4. 副業からの採用・後継者登用の道も

副業人材との関係性が深まり、結果的にその人が正社員や役員としてジョインするケースも増えています。「まずは副業から」という関わり方が、採用や事業承継の“お試し期間”としても機能するのです。

5. 副業人材活用と理念経営の相性

副業人材にとっても、どんな会社に関わるかは重要です。給与額よりも「なぜその会社に関わるか」「何のためにその事業をやっているか」を重視する人が多い。だからこそ、**理念経営を実践している企業ほど、副業人材から“選ばれる”**のです。

「地元の伝統を100年後に残したい」
「若者が帰ってきたくなるまちを作りたい」
「誇れる地元食材を世界に届けたい」

そんなビジョンに共感する副業人材が、「自分のスキルを活かしたい」「一緒に実現したい」と集まってきます。つまり、副業人材の力を引き出すカギは、“スキル”ではなく“理念”です。理念のある地方企業は、副業人材にとって最も魅力的な舞台になり得ます。

6. 活用の流れと注意点

6-1. 活用のステップ

  1. 目的を明確にする:「何の課題を、どのくらいの期間、どんなスキルで解決したいのか」
  2. 副業マッチングサービスやSNSで募集:ビジョンを丁寧に説明した募集文を用意
  3. 契約形態の整理:業務委託契約を締結。NDA(秘密保持契約)も忘れずに
  4. 社内受け入れ体制を整備:窓口社員の設定、定期的な進捗確認のルールなどを設計
  5. 成果の可視化とフィードバック:目的に対してどこまで進捗したかを双方で確認

6-2. 注意点

  • 情報管理の徹底:副業人材は複数の企業と関わっていることが多いため、情報漏洩防止のルール整備は必須です。
  • 社員の不安への配慮:「自分たちの仕事が取られるのでは」という誤解が生まれないよう、役割分担を明確にし、社内コミュニケーションを丁寧に行う必要があります。
  • 理念との整合性の確認:副業人材を採用する際も、「理念に共感しているか?」を面談などでしっかり確認しましょう。

7. まとめ ― 副業人材は“短期の助っ人”ではなく“未来の仲間”

副業人材を単なる“外注”と捉えてしまうと、十分な効果は得られません。

副業という形であっても、理念に共感し、会社の未来に貢献しようとしてくれる仲間と捉えることが大切です。副業人材の本質的な価値は、単にタスクをこなしてもらうことではなく、

  • 外部からの風を社内に入れる
  • 社員に刺激と学びを与える
  • 中長期的には採用や事業承継の候補となりうる

といった多面的な価値にあります。

そして何より、地方企業が副業人材と真の協働関係を築くには、経営者自身がビジョンを語り、発信し続けることが必要不可欠です。理念に沿って進める副業人材の活用は、単なる人材不足の対処ではなく、組織の進化そのものを加速させる経営戦略になり得るのです。

正社員だけが戦力ではない時代。
今こそ、地方企業にとって副業人材は、未来を変える“本気の選択肢”になっています。