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経営録

2025.06.06

地方企業の海外進出は採用にもインパクトがあります

1. はじめに

地方企業の採用難は年々深刻化しています。都市部や大企業の方が給料やブランド力で優勢という構図が固定化され、地方で人材を募ろうとしてもなかなか応募が集まらない、内定を出しても辞退される――そういった状況に多くの地方経営者が頭を抱えているかもしれません。

一方で、地方企業の中には逆境を乗り越え、ユニークなビジョンやアグレッシブな戦略で組織を成長させている例も存在します。実は、その**「魅力的な取り組み」のひとつに、海外進出が挙げられる**のです。「わざわざ地方にある企業が、なぜ海外?」と驚くかもしれませんが、その事実こそが学生や若手人材の心を強く掴む要素になることが少なくありません。

本記事では、「地方企業の海外進出は採用にもインパクトがあります」という切り口で、地方企業がどのように海外市場へ打って出て、それが結果的に採用課題の解決につながるのか、その背景と理由を深掘りします。単に海外へ拠点を置けばいい、という話ではなく、企業が掲げるビジョンや理念が背景にあるからこそ、採用に大きな効果を生み出すという流れを紐解きます。

「地方企業であること」がハンディキャップに見えがちですが、海外展開というダイナミックな取り組みにチャレンジする事実、そしてその背後にある理念や想いを発信することで、**「そんな面白い会社が地方にあるのか」**と学生や若手が興味を示す効果が期待できます。ここでは、その具体的なシナリオと実践のヒントを提案します。

2. 地方企業が抱える採用ハンディキャップ

2-1. 給与や知名度で大手・都会に劣る

地方の中小企業は、大都市圏の有名企業と比べて給料水準や福利厚生、ブランド認知度などで劣ることが多いです。若い学生が就職先を選ぶ際、どうしても都市部の華やかなイメージや給与の高さに目が向きやすく、地元や地方の企業が候補から外れがち。

2-2. 若年人口の都市流出

そもそも地方は人口減少若年層の流出が進んでおり、そもそも学生の母数自体が少ない。さらに多くの若者が大学進学などを機に都会へ出てしまい、そのまま戻らないケースが多い。結果として採用プールが限られ、競争が激しくなるのが実情です。

2-3. 「地方企業=地味」のステレotype

地方企業に対して「地味」「古い社風」「グローバル感がない」といったステレotypeを持つ学生も少なくありません。こうした先入観は説明会や求人票だけでは払拭しづらい。結果的にエントリーすら集まらないまま採用が終わってしまう状況が起こりがちです。

3. 海外進出というインパクトがもたらす採用上の強み

3-1. 「地方にあるのにグローバル」――意外性が学生の興味を引く

例えば、地方企業がヨーロッパやアジアに支社や代理店を置いていたり、海外の展示会に出展していると聞けば、学生の印象は一変します。**「地方の小さな会社かと思いきや、海外にも打って出ているんだ!」**という意外性が、新鮮さやワクワク感を喚起するのです。
これだけでも、「他の普通の地方企業とは違う」「なんか面白そう」と感じる学生は一定数います。

3-2. 高い成長意欲を感じ、キャリアチャンスがあると思わせる

海外進出を果たすには、大きなチャレンジとリスクも伴います。あえてそれを実行している会社は、成長や挑戦を大切にしていると学生に伝わります。すると、「この会社なら自分が海外案件に関われるかも」「若手でも重要ポジションを任せてもらえるかも」と感じ、キャリア志向の高い学生が興味を持つのです。

3-3. グローバル人材の受け皿になる

語学力や海外志向のある学生は、都会や大手でしかチャンスがないと思いがち。しかし地方企業が海外に販路を広げているならば、「通訳や海外営業、現地対応」などの業務が発生し、グローバル人材として成長したい若者を受け入れやすいという強みが生まれます。大企業よりも早い段階で海外出張や現地マネージャーを任されるかもしれません。

4. 「なぜ海外なのか?」――理念・ビジョンと結びつける重要性

4-1. 海外進出を形だけやっても響かない

単に「補助金があるから海外市場を狙ってみる」「なんとなく海外展開がカッコいいから」といった理由で海外進出をアピールしても、社員や学生には**“何のために?”が伝わらず、興味は半減するでしょう。
逆に、地方企業ならではのストーリー――たとえば「この地域の産品を世界に届けたい」「伝統工芸を海外で評価されるブランドにする」など明確な理念があれば、学生は
「それって面白そうだ」**と深く共感する可能性が高まります。

4-2. 理念を掲げると協力者が集まる

海外進出は企業単独ではハードルが高いかもしれませんが、明確なビジョンを語ることで、行政や金融機関、商工会などからの支援を得られるかもしれません。また、学生にとっても、会社の理念に共感できるかが志望度を左右する大きな要素。
「地元の誇りを世界に届ける」という理念があるなら、そこに惹かれる学生が応募してきたり、実際の業務でモチベーション高く取り組んでくれたりします。

4-3. 海外進出×理念=地方と世界を繋ぐ“ワクワク感”

「都会より資本力が劣る」と悩んでいる地方企業こそ、海外進出の意義を理念に紐づけて打ち出すことで、社員や学生の心に火をつけやすい。「こんな田舎にあるのに海外企業との商談もバンバンやってるんだ。面白い!」と周囲が驚くほど**“ワクワク感”**が出ると、会社全体が活性化し、人材採用にも好影響を及ぼします。

5. 実例:地方企業が海外進出で採用を強化したストーリー(仮想シナリオ)

5-1. “地方の伝統工芸A社”の物語

  1. 背景:地元で100年続く伝統工芸品を作るA社。若手が定着せず、売上も停滞気味
  2. 社長の決断:海外の展示会で工芸品を出品し、新市場を狙うことに。ビジョンを「日本が誇る伝統技術を世界に届け、職人文化を未来に残す」と明確化
  3. 取り組み
    • 地元の商工会議所や海外進出支援機関と連携
    • SNSで海外顧客向けに動画配信、英語ECサイト構築
    • 若手社員が海外出張や翻訳、SNS運営を担当
  4. 採用面:ビジョンを採用サイトに大きく掲げ、「海外と繋がる伝統工芸の未来創造企業」という打ち出しで学生の興味を引く
    • 会社説明会やインターンシップで「実際に海外顧客とのコミュニケーションを体験」
    • やりがいを感じる学生が内定を承諾してくれる
  5. 結果:数年後、海外顧客が増え売上も拡大。若手社員がイキイキ働き、新卒採用の応募数が倍増

このように、地方×伝統工芸×海外進出という意外な組み合わせが学生にとって魅力的に映り、採用難を克服できるシナリオがあり得ます。

6. 海外進出で採用に活きる具体的アクション

6-1. ストーリーテリングを採用サイトやSNSで強化

海外拠点や海外顧客との取引事例、現地での写真、社員が渡航して現地スタッフと交流している様子などをストーリーとして発信すると、学生は「こんな体験ができるんだ!」とワクワク。地方の風景や人の温かさグローバルな視点が組み合わさった発信は、差別化にも効果的。

6-2. インターンシップや説明会で海外要素を体感

先述したようにインターンシップは効果的。海外取引先とのオンラインミーティングを見学させる、輸出事務や海外向けマーケティングを簡単に体験してもらうなどで、学生が**「英語や海外市場に関わる仕事があるんだ」**と実感。これによりエントリー率・内定承諾率が上がる可能性大。

6-3. 社員の語り口:理念と海外エピソードを結びつける

採用面接や会社説明会で、社員が自社のビジョンを語る際に**「実際に海外でこんなやりがいを感じた」**というエピソードを交えると説得力が増します。地方にいながらにして世界を見据える楽しさを社員が体現していれば、若者が抱く「地方=閉鎖的」イメージを一気に覆せるでしょう。

7. 気をつけるポイント:海外進出を「形だけ」にしないために

7-1. しっかりした戦略と準備が必要

当たり前ですが、海外進出にはリサーチや現地パートナー探しなど現実的な準備が必要で、軽々しく始めて失敗すると逆効果です。海外にも通用するプロダクトや営業力があるか検証しないと、費用だけかかって成果が出ないリスクがあります。

7-2. 地域顧客をないがしろにしない

海外へ力を入れるあまり、地元の既存顧客が「もううちを大事にしなくなったな」と感じる恐れがないよう注意。地方企業として地域貢献や地元需要を大切にしつつ、新たな市場として海外を狙うスタンスが理想です。両立を目指すには、社内のリソース配分を丁寧に考える必要があるでしょう.

7-3. 具体的に学生が関われる業務を用意する

採用上のインパクトを狙うだけで海外拠点を設けても、実際には学生が何も関われない…となれば意味がありません。業務として海外とのやりとりが発生するポジションを明確に作り、入社後に若手がチャレンジできる設計を整えることが大事。形だけ「海外進出」を謳うと、内定後に学生から「話と違う」と不満が出る可能性があります。

8. まとめ:理念で海外進出を貫く地方企業こそ採用に強くなる

地方企業が大手や都市部に負けない採用力を獲得するために、海外進出というインパクトある取り組みは有力な策になり得ます。ただし、ただ海外に拠点を置くだけでは、学生に対する魅力発信としては不十分。そこに必要なのは明確な理念(ビジョン)、すなわち「なぜ地方にいながら海外市場へ挑むのか?」というストーリーです。

  • 地域への想いがあってこそ、学生や社員は「地方の価値を世界に届ける」と共感しやすい
  • 会社のビジョンに紐づいて海外展開を進めるからこそ、社員もモチベーション高くチャレンジし、学生も「ここでなら成長できそう」と思える
  • SNSやインターンシップなどで、海外取引のリアルを見せれば、都市部志向の学生も興味を持つ可能性が高まる

地方企業が海外進出を成功させるには、しっかりとした下準備と戦略が不可欠です。しかし、その先に得られる効果は、単なる売上増だけでなく採用ブランディングや社内の活性化といった多方面へ広がります。結果として持続的に優秀な人材が集まり、地域に根ざしつつ世界と繋がる強い企業になり得るのです。

地方企業だからこそできる“海外×地域”のユニークな組み合わせを大切にしつつ、ビジョンを軸に社員・学生に魅力を伝えましょう。海外進出の事実とその裏の理念がリンクしたとき、採用課題の解決に大きな一手を打てるはずです。

新卒採用においても、今まで見向きもしなかった学生が「こんな面白い会社が地方にあるんだ!」と応募してくれる可能性が高まります。「地方はハンディがある」と嘆くのではなく、海外という舞台を使って魅力を創出し、学生を惹きつけることが、地方企業の採用戦略の鍵となるでしょう。