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経営録

2025.06.27

M&A詐欺の餌食にならないためにM&Aの基礎知識をインプットしておきましょう

「会社を売却して、ハッピーリタイアしたい」

「事業を拡大するために、良い会社を買収したい」

M&Aは、経営者にとって夢のような未来を拓く可能性を秘めています。しかし、その一方で、M&Aに関する知識が不足していると、悪質なM&A詐欺やトラブルの「餌食」になってしまうリスクも潜んでいます。

「まさか自分が詐欺に遭うなんて…」そう思っていても、M&Aの複雑なプロセスや専門用語に慣れていないと、巧妙な手口を見抜くのは難しいものです。大切な会社や財産を守るためにも、M&Aの基礎知識をしっかりとインプットしておくことが何よりも重要です。

本記事では、M&A詐欺の手口やその兆候、そして詐欺被害に遭わないために経営者が押さえておくべきM&Aの基礎知識を、どこよりも分かりやすく解説します。M&Aの成功だけでなく、安全な取引を実現したいと願うすべての経営者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

1. M&A詐欺はなぜ起こるのか?その背景と巧妙な手口

M&A詐欺やトラブルが起こる背景には、売り手・買い手双方のM&Aに関する知識不足や、情報の非対称性、そしてM&Aプロセスの複雑さがあります。悪質な業者は、これらの隙を突いて巧みにアプローチしてきます。

1-1. M&A詐欺の主な手口の例

M&A詐欺には様々な手口がありますが、代表的なものを知っておきましょう。

  • 過剰な着手金・月額報酬の請求と放置: 「すぐに良い買い手(売り手)が見つかる」と甘い言葉で高額な着手金や月額報酬を請求し、契約後は碌な活動をせず、案件を放置するケースです。M&Aが成立しなくても着手金などは返金されないため、被害が発生します。
  • 不当に高い成功報酬の請求: 一般的な相場(レーマン方式など)を大きく超える不透明な成功報酬体系を提示したり、報酬基準額を意図的に高く設定したりして、M&A成約後に法外な金額を請求する手口です。
  • 「必ず成功する」といった断定的判断の提供: M&Aは水物であり、必ず成功する保証はありません。「絶対に成約させます」「この案件は確実に成功します」などと断定的な言い方で契約を迫る業者は、危険な兆候です。
  • 虚偽の企業情報提供や隠蔽: 売り手企業が自社の財務状況を偽ったり、簿外債務や訴訟リスクといった不利な情報を意図的に隠蔽したりするケースです。買い手側はデューデリジェンスでこれらを見抜けなければ、買収後に大きな損失を被る可能性があります。
  • 独占契約を執拗に迫る: 他のM&A仲介会社との比較検討をさせず、自社との独占契約を強く迫るケースです。比較検討させないことで、不透明な料金体系や不適切な条件を押し付けようとする意図がある場合があります。
  • 専門家でない者が専門的な助言をする: M&Aには税務、法務、会計の専門知識が必須ですが、無資格者が専門家を装って不正確な助言をしたり、特定の専門家(提携先の弁護士など)を利用するよう強く促し、不当な利益を得ようとしたりするケースです。

1-2. 詐欺の「兆候」を見逃さない

上記のような手口に共通する「兆候」を早期に察知することが重要です。

  • 「早く決断を!」と焦らせる: 考える時間を与えず、早期の契約締結や意思決定を促す。
  • メリットばかり強調し、リスクを説明しない: M&Aに伴う潜在的なリスクやデメリットについて触れず、良い面ばかりを強調する。
  • 不透明な料金体系: 手数料の種類や計算方法が明確でない、または説明を避ける。
  • 過度な自信や断定的な発言: 「絶対に大丈夫」「必ず高値で売れる/買える」など、根拠のない断定的な発言が多い。
  • 契約書の内容が一方的: 売り手・買い手にとって不利な条項が盛り込まれているにも関わらず、修正に応じない。

2. M&A詐欺の餌食にならないための「基礎知識」

M&A詐欺に遭わないためには、何よりも経営者自身がM&Aに関する基礎知識を身につけることが重要です。以下のポイントを理解しておきましょう。

2-1. M&Aの主要な手法と特徴を理解する

M&Aには主に以下のような手法があります。それぞれの特徴や、買収対象・売却対象の違いを理解しておくことで、提示されたM&Aスキームが自社の目的に合致しているかを判断できるようになります。

  • 株式譲渡: 会社の株式を売買することで経営権を移転する。手続きが比較的簡便。
  • 事業譲渡: 会社の一部または全部の事業を切り出し、売買する。必要な事業だけを選択できるが、個別の契約承継が必要。
  • 合併: 複数の会社が一つになる。包括承継だが、債権者保護手続きなど複雑。
  • 会社分割: 会社の一部または全部の事業を他の会社に承継させる。組織再編によく用いられる。

2-2. M&A仲介手数料の「相場」と「仕組み」を知る

前述の通り、M&A仲介手数料には様々な種類と計算方法があります。

  • 相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬など、それぞれの費用がどのようなタイミングで発生し、相場はどの程度かを知っておきましょう。
  • 最も一般的な成功報酬の計算方法である**「レーマン方式」の仕組み(料率、計算例)を理解し、特に「報酬基準額」の定義**を必ず確認しましょう。移動総資産方式は高額になりやすいなど、算出基準によって報酬額が大きく変わるため、注意が必要です。
  • 最低成功報酬額が設定されていることも多いため、小規模なM&Aでもどの程度の費用がかかるのかを事前に把握しておくべきです。

2-3. デューデリジェンス(DD)の重要性を理解する

**デューデリジェンス(DD)**とは、買い手がM&A対象企業の事業内容、財務状況、法務、税務、人事など、あらゆる側面を詳細に調査することです。これは、対象企業のリスクや問題点を洗い出し、M&Aの取引価格や契約条件を決定する上で不可欠なプロセスです。

  • 売り手側は、開示を求められた資料を正確に提供する義務があります。隠蔽は後のトラブルにつながります。
  • 買い手側は、自社だけではなく、会計士、弁護士、税理士といった外部の専門家を起用して、徹底的なDDを実施することが、リスク回避の最も重要な手段となります。この費用を惜しむべきではありません。

2-4. 契約書の内容を必ず専門家と確認する

M&Aのプロセスでは、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書など、多くの契約書が交わされます。

  • これらの契約書の内容は非常に専門的であり、法務の専門家(弁護士)のリーガルチェックを必ず受けるようにしましょう。
  • 特に、手数料に関する条項、独占交渉権の期間、表明保証(売り手が対象会社の情報が真実であると表明する保証)や補償(表明保証違反時の賠償責任)の範囲など、後々のトラブルにつながりやすい箇所は厳しくチェックが必要です。

2-5. 複数のM&A仲介会社を比較検討する

一つのM&A仲介会社からの提案だけで安易に決めるのではなく、複数の仲介会社から話を聞き、比較検討することが重要です。

  • 料金体系、担当者の専門性、過去の実績、対応の丁寧さなどを比較しましょう。
  • 信頼できる仲介会社は、焦らせることなく、丁寧に疑問に答えてくれるはずです。

3. まとめ:M&Aの知識は、あなたの会社を守る盾となる

M&Aは、企業経営における大きな転換点であり、成功すれば会社の成長や個人のハッピーリタイアに繋がる素晴らしい機会です。しかし、その裏にはM&A詐欺や予期せぬトラブルのリスクが潜んでいることも事実です。

  • 「甘い話」には裏があると考え、安易に信用しない。
  • M&Aの各手法や仲介手数料の仕組み、レーマン方式の計算基準を正しく理解する。
  • デューデリジェンスの重要性を認識し、外部の専門家を積極的に活用する。
  • 契約書の内容は必ず弁護士と確認し、複数の仲介会社を比較検討する。

これらのM&Aに関する基礎知識は、あなたの会社を守るための**強力な「盾」**となります。 M&Aを検討する際は、焦らず、そして臆することなく知識武装し、信頼できるパートナーと共に、安全で実りあるM&Aを実現してください。