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経営録

2025.06.25

M&A仲介手数料の相場とは?|騙されないためのM&A基礎知識

「M&Aを検討しているけど、仲介手数料ってどれくらいかかるんだろう?」

「高額な費用を請求されたらどうしよう…」

M&Aは企業の未来を左右する重要な経営戦略ですが、仲介会社に支払う手数料については、その仕組みや相場が分かりにくく、不安を感じる経営者の方も少なくありません。「もしかして騙されるんじゃないか…?」と心配になる方もいるのではないでしょうか。

確かにM&A仲介手数料は高額になるケースもありますが、その仕組みを正しく理解し、相場感を持つことで、不透明な請求に騙されることなく、安心してM&Aを進めることができます。

本記事では、M&A仲介手数料の種類とそれぞれの相場、最も一般的な計算方法である「レーマン方式」の仕組み、そして仲介会社を選ぶ際に騙されないための重要なポイントを、どこよりも分かりやすく解説します。M&Aを検討中のすべての経営者の方に、自信を持って交渉に臨むための知識を提供できれば幸いです。

1. M&A仲介手数料の種類と発生タイミング

M&A仲介会社に支払う手数料には、成功報酬だけではなく、いくつかの種類があります。それぞれの費用がどのタイミングで発生するのかを知っておきましょう。

1-1. 相談料

M&A仲介会社に初めて相談する際に発生する費用です。

相場は無料~数万円程度ですが、最近では多くのM&A仲介会社が初回相談を無料としています。中には、2回目以降や時間制で有料となるケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

1-2. 着手金

M&A仲介会社と正式に業務委託契約を締結する際に支払う手数料です。M&Aのプロセス開始にあたって、仲介会社が案件発掘や資料作成などの準備を進めるための費用という意味合いがあります。

相場は無料~300万円程度と幅があり、案件の規模や仲介会社の方針によって大きく異なります。注意すべきは、M&Aが成約しなかった場合でも返金されない点です。

1-3. 月額報酬(リテイナーフィー)

M&Aの交渉期間中、毎月継続して支払う顧問料のような手数料です。仲介会社が案件を進めるための人件費や経費に充当されます。

相場は月額30万円~200万円程度で、こちらも案件の難易度や規模、仲介会社によって変動します。月額報酬が発生しない仲介会社もあります。

1-4. 中間報酬(中間金)

売り手と買い手の間で**「基本合意書」を締結した時点**で発生する手数料です。M&Aプロセスが一定の段階まで進んだことへの対価として支払われます。

相場は成功報酬の10~20%程度、または固定で30万円~200万円程度が多いです。着手金と同様に、M&Aが最終的に不成立に終わった場合でも返金されません。ただし、M&Aが最終的に成約した場合、成功報酬から中間報酬が差し引かれる(充当される)ケースも多く見られます。

1-5. 成功報酬

M&Aの最終契約が締結され、M&Aが成立した時点で発生する手数料です。M&A仲介手数料の中で最も大きな割合を占める費用であり、一般的には「レーマン方式」という計算方法が採用されます。

相場は算出基準額の1%~5%程度で、後述するレーマン方式の料率が適用されます。多くの仲介会社では、最低成功報酬額が設定されており、案件規模が小さい場合でも数百万~数千万円の最低費用が発生することがあります。

1-6. その他の実費

上記の手数料以外に、M&Aのプロセスで発生する実費(出張費、資料作成費、弁護士・会計士などの外部専門家費用など)が別途請求される場合があります。これらの費用が着手金や成功報酬に含まれている仲介会社もあれば、実費精算となる会社もあるため、契約前に確認が必要です。

2. 成功報酬の計算方法「レーマン方式」とは?

M&Aの成功報酬の計算で最も一般的に用いられるのが**「レーマン方式」**です。これは、取引金額(報酬基準額)をいくつかの段階に分け、それぞれの金額帯に異なる料率をかけて算出する方法です。取引金額が高くなるほど、料率が低くなる累進的な構造が特徴です。

2-1. レーマン方式の一般的な料率(例)

一般的なレーマン方式の料率は以下のようになっています。

  • 取引金額が5億円までの部分:5%
  • 取引金額が5億円超10億円までの部分:4%
  • 取引金額が10億円超50億円までの部分:3%
  • 取引金額が50億円超100億円までの部分:2%
  • 取引金額が100億円超の部分:1%

2-2. レーマン方式の計算例

例えば、取引金額が25億円の場合の成功報酬を計算してみましょう。

  1. 5億円までの部分: 5億円 × 5% = 2,500万円
  2. 5億円超10億円までの部分(5億円分): 5億円 × 4% = 2,000万円
  3. 10億円超50億円までの部分(残り15億円分): 15億円 × 3% = 4,500万円

これらを合計すると、2,500万円 + 2,000万円 + 4,500万円 = 9,000万円が成功報酬となります。

2-3. 報酬基準額の注意点

レーマン方式で最も注意すべきは、**「何をもって報酬基準額とするか」**という点です。主な基準額の考え方には以下のようなものがあります。

  • 移動総資産(GFA:Gross Fee Amount)方式: 株式譲渡対価に負債総額(有利子負債だけでなく、買掛金や未払金なども含む)を加算した金額を基準とする方法。仲介会社が受領する報酬額が最も高額になりやすい傾向があります。
  • 企業価値(EV:Enterprise Value)方式: 株式譲渡対価に有利子負債を加算した金額を基準とする方法。
  • 株主価値(Equity Value)方式: 純粋な株式の譲渡対価のみを基準とする方法。売り手が実際に受け取る金額に近いため、最もシンプルな基準と言えます。
  • オーナー受取額方式: 株式譲渡対価に加え、オーナー経営者への役員借入金返済額などを加算した金額を基準とする方法。

仲介会社によって採用している報酬基準額の考え方が異なるため、契約前にどの方式で成功報酬を計算するのかを必ず確認し、具体的な計算例を提示してもらいましょう。 これを怠ると、予想外に高額な手数料を請求されるリスクがあります。

3. 騙されないために!M&A仲介会社を選ぶ際のポイント

M&A仲介手数料の仕組みを理解した上で、不誠実な仲介会社に騙されないために、以下のポイントを押さえて仲介会社を選びましょう。

3-1. 料金体系の透明性

最も重要なのは、料金体系が明確で透明であるかどうかです。

  • 相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬など、すべての費用の種類と金額、発生タイミングを明確に提示しているか。
  • 成功報酬の計算に用いるレーマン方式の料率と、報酬基準額の定義が明確か。
  • 最低成功報酬額が設定されているか、またその金額はいくらか。
  • 実費(出張費など)の取り扱いがどうなっているか。

これらの質問に対して曖昧な回答しか得られない仲介会社は、後々トラブルになる可能性が高いため注意が必要です。

3-2. 実績と専門性

M&Aの実績が豊富で、特に自社の業界や規模のM&Aに強い仲介会社を選ぶことも重要です。

  • 過去の成約実績(件数、金額、業界など)を具体的に確認する。
  • 担当アドバイザーの専門知識や経験はどうか。財務、法務、税務などの専門知識を有しているか。
  • 担当者の説明が分かりやすく、誠実に対応してくれるか。

3-3. デュアルアドバイザリー(両手取引)の確認と注意点

M&A仲介会社は、売り手と買い手の双方と契約を結び、双方から手数料を受け取る**「両手取引」**を行うことが一般的です。これは日本のM&A仲介業界の主流ですが、利益相反のリスクがあるという指摘もあります。

  • 仲介会社が両手取引を行っているかどうかを確認する。
  • 両手取引の場合でも、売り手・買い手双方にとって公平な立場を保ち、適正な交渉を支援してくれるかを見極める。
  • 「価格交渉します!」など、片方の利益だけを強調するような宣伝文句には注意が必要です。本当に信頼できる仲介会社は、双方の納得感を重視します。

3-4. 契約内容の精査

業務委託契約書は、仲介会社との関係性を規定する非常に重要な書類です。

  • 手数料体系が契約書に明記されているか。
  • 契約期間や途中解約の条件、専任契約(他の仲介会社と契約できない)の有無などを確認する。
  • 特に、独占契約を促す仲介会社の場合、その理由やメリット・デメリットをしっかり確認し、安易に契約しないようにしましょう。 複数の仲介会社を比較検討することで、より客観的に売却・買収条件を把握できる場合もあります。

4. まとめ:M&A仲介手数料の知識は成功への第一歩

M&A仲介手数料は、M&Aを成功させる上で必要な投資です。しかし、その費用体系は複雑であり、知識がないまま進めると、不必要な費用を支払ってしまったり、適正なM&Aが実現できなかったりするリスクがあります。

  • M&A仲介手数料には、相談料、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬などの種類があることを理解する。
  • 成功報酬は「レーマン方式」で計算され、取引金額だけでなく「報酬基準額」の定義が重要であることを把握する。
  • 仲介会社を選ぶ際は、料金体系の透明性、実績、担当者の専門性・誠実性、契約内容の精査を徹底する。

これらのM&A仲介手数料に関する基礎知識をしっかりと身につけることで、あなたは不誠実な業者に騙されることなく、信頼できるパートナーを見つけ、M&Aを成功に導くことができるでしょう。

M&Aは、あなたの会社の未来を大きく変える可能性を秘めています。不安な点があれば、M&Aの専門家に相談し、最適なサポートを得ながら進めていくことを強くお勧めします。