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経営録

2025.07.28

親が亡くなった後、スムーズに株を名義変更する方法

「親が亡くなって、株式を相続することになったけど、どうやって名義変更すればいいんだろう…」

「複雑そうだし、手続きを間違えてしまうのが不安だ…」

大切なご家族を亡くされた後、悲しみに暮れる中で、残された財産の手続きを進めることは、精神的にも大きな負担となります。特に、会社の株式(株券や証券口座のデータ)は、名義変更を適切に行わなければ、相続人がその権利を行使したり、売却したりすることができません。しかし、「どこから手をつければいいのか」「どんな書類が必要なのか」と、その複雑さに戸惑う方も少なくないでしょう。

本記事では、親が亡くなった後に、株式をスムーズに名義変更するための具体的な手順や必要書類、そして知っておくべき注意点を、どこよりも分かりやすく徹底解説します。上場株式と非上場株式(自社株)では手続きが大きく異なるため、それぞれのケースに分けて詳しく説明します。大切な財産を確実に引き継ぎ、安心して手続きを進めるための知識を、ぜひインプットしてください。

1. 株式の名義変更とは?なぜスムーズな手続きが必要なのか

株式の名義変更とは、故人名義になっている株式を、相続人である新しい所有者の名義へと変更する手続きのことです。この手続きは「相続による株式の移転」と呼ばれます。

1-1. 名義変更の重要性

  • 権利行使の不可: 名義変更が行われないと、相続人は株主としての権利(配当金の受領、株主総会での議決権行使など)を行使することができません。
  • 売却や担保設定の不可: 株式を売却したり、担保に入れたりすることもできません。
  • 税務上の問題: 相続税の申告は、相続開始後10ヶ月以内に行う必要がありますが、名義変更の手続きと並行して進めることで、スムーズな納税や売却による納税資金の確保が可能になります。

1-2. スムーズな手続きのために共通して押さえるべきこと

株式の名義変更は、上場・非上場問わず、以下の共通の流れで進みます。

  1. 相続人の確定と遺言書の確認: 誰が相続人となるのか、遺言書があるのかを確認します。
  2. 相続財産の調査・評価: 故人がどのような株式をどれくらい所有していたかを調査し、評価します。
  3. 遺産分割協議: 遺言書がない場合、どの相続人がどの株式を相続するのか、相続人全員で話し合って決定し、遺産分割協議書を作成します。
  4. 必要書類の収集: 名義変更に必要な各種書類を収集します。
  5. 名義変更手続きの実行: 証券会社や発行会社を通じて、名義変更手続きを行います。

2. 【上場株式】スムーズに名義変更する方法

上場株式は、証券取引所で売買される株式であり、通常、証券会社を通じて管理されています。手続きは比較的システム化されており、スムーズに進めやすい傾向にあります。

2-1. 名義変更の窓口は「証券会社」

故人が保有していた上場株式の名義変更は、その株式を管理していた証券会社が窓口となります。故人が複数の証券会社に口座を持っていた場合は、それぞれの証券会社で手続きが必要です。

2-2. 必要となる主な書類

証券会社によって多少異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。

  1. 故人の戸籍謄本: 出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本含む)。これにより、法定相続人を確定します。
  2. 相続人全員の戸籍謄本: 現在の戸籍謄本。
  3. 相続人全員の印鑑証明書: 発行から3ヶ月以内のもの。
  4. 遺産分割協議書: 相続人全員の実印が押印されたもの。遺言書がある場合は、遺言書の写しと検認済証明書(自筆証書遺言の場合)。
  5. 名義変更請求書(証券会社の書式): 証券会社から取り寄せ、必要事項を記入・押印します。
  6. 相続人の証券口座情報: 名義変更後の株式を受け入れる相続人自身の証券口座が必要となります。口座を持っていない場合は、新規開設が必要です。
  7. 故人の本人確認書類: 免許証、マイナンバーカードなど(証券会社が求める場合)。

2-3. スムーズな手続きのポイント(上場株式)

  • 取引履歴の確認: 故人がどの証券会社で取引していたか、まずは故人の郵便物や過去の取引報告書、預貯金通帳などを確認しましょう。不明な場合は、証券保管振替機構(ほふり)に照会することも可能です(有料)。
  • 相続人代表者の決定: 相続手続きを進める代表者を決めておくと、証券会社とのやり取りがスムーズになります。
  • 口座開設の事前準備: 株式を相続する相続人が証券口座を持っていない場合、事前に開設手続きを進めておくと、名義変更が早く完了します。
  • 相続税申告との連携: 株式の相続税評価額は、相続発生日時点の株価を基準に計算されます。相続税申告(相続開始後10ヶ月以内)と並行して名義変更手続きを進めるため、税理士とも連携を取りましょう。

3. 【非上場株式(自社株)】スムーズに名義変更する方法

非上場株式は、市場で取引されておらず、会社の株主名簿で管理されています。名義変更の手続きは、発行会社(その自社株を発行している会社)が窓口となります。上場株式よりも複雑になる傾向があります。

3-1. 名義変更の窓口は「発行会社」

故人が保有していた非上場株式の名義変更は、その株式を発行している会社が窓口となります。まずは、その会社の総務部や経理部、あるいは経営者に連絡を取り、名義変更の手続き方法を確認しましょう。

3-2. 必要となる主な書類

上場株式と共通する書類に加えて、非上場株式特有の書類が必要となります。

  1. 故人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続)
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 相続人全員の印鑑証明書
  4. 遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)。遺言書がある場合は、遺言書の写しと検認済証明書。
  5. 株式名義書換請求書(発行会社の書式): 会社から取り寄せ、記入・押印します。
  6. 株券: 株券発行会社の場合。株券不発行会社の場合は不要。
  7. 受贈者の印鑑証明書・本人確認書類: 新しい株主となる相続人のもの。
  8. 発行会社の定款: 株式の譲渡制限に関する規定(譲渡制限株式)があるかを確認します。

3-3. スムーズな手続きのポイント(非上場株式)

  • 譲渡制限株式の確認: ほとんどの中小企業の株式には**「譲渡制限」**が付いています。これは、「会社の承認がなければ株式を譲渡できない」という規定です。相続による取得であっても、名義変更には原則として会社の承認(取締役会決議、株主総会決議など)が必要です。承認が得られない場合や、会社が買い取る場合は、複雑な手続きが生じます。
    • 対策: まず会社の定款を確認し、譲渡制限の有無と承認手続きについて把握しましょう。事前に弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
  • 株主名簿の書換え: 会社法では、株式の取得者は、その株式について株主名簿の書換えを請求できると定められています。会社が名義書換えに応じない場合、法的な手続きが必要になることもあります。
  • 会社の協力が不可欠: 上場株式と異なり、非上場株式の名義変更は、発行会社側の協力が不可欠です。円滑な手続きのためにも、事前に会社(特に経営者や経理担当者)と十分にコミュニケーションを取り、協力体制を築きましょう。
  • 相続税評価の複雑さ: 非上場株式の相続税評価は非常に複雑です。必ずM&Aや事業承継に詳しい税理士に評価を依頼し、適切な相続税申告を行いましょう。評価方法によって税額が大きく変わる可能性があります。

4. 株式の名義変更で知っておくべき税金と専門家の活用

株式の名義変更は、相続税の申告と密接に関わります。

4-1. 相続税の申告と納税

  • 申告期限: 相続開始の翌日から10ヶ月以内に税務署へ相続税申告書を提出し、納税する必要があります。名義変更手続きと並行して、税理士に相続税の計算と申告を依頼しましょう。
  • 納税資金の準備: 特に非上場株式は換金性が低いため、納税資金を別途現金で用意しておく必要があります。
  • 事業承継税制の活用: 中小企業の自社株の場合、要件を満たせば**「事業承継税制」**の適用を受け、相続税の納税を猶予・免除できる可能性があります。この制度を活用する場合も、税理士との綿密な連携が不可欠です。

4-2. 専門家の活用でスムーズに

複雑な株式の名義変更や相続税の申告を、ご自身だけで行うのは非常に困難です。

  • 税理士: 株式の評価、相続税の計算・申告、事業承継税制の適用支援。
  • 司法書士: 相続関係書類の作成、遺産分割協議書の作成、株主名簿の書換え手続きの助言。
  • 弁護士: 遺産分割協議が難航した場合の調停・交渉、譲渡制限株式の承認に関する法的助言。
  • M&Aアドバイザー: 非上場株式の評価や、将来的な事業承継(M&A)の相談にも対応。

これらの専門家と連携することで、手続きの漏れやミスを防ぎ、税務上のリスクを最小限に抑えながら、スムーズに株式の名義変更を完了させることができます。

5. まとめ:親が亡くなった後の株式名義変更は「計画」と「プロのサポート」で

親が亡くなった後の株式の名義変更は、遺族にとって精神的にも肉体的にも負担の大きい手続きです。しかし、この手続きを適切に、そしてスムーズに進めることは、故人の残した大切な財産を確実に引き継ぎ、事業の継続を可能にするために不可欠です。

  • 上場株式: 証券会社が窓口。必要書類を揃え、相続人の証券口座を用意する。
  • 非上場株式: 発行会社が窓口。譲渡制限株式の承認手続きが特に重要。会社の協力が不可欠。
  • 共通の注意点: 相続人の確定、遺産分割協議、相続税申告の期限、納税資金の準備。
  • 税金対策: 特に非上場株式の場合、事業承継税制の活用を検討する。
  • 専門家活用: 税理士、司法書士、弁護士などのプロに依頼することで、手続きの負担を減らし、リスクを回避できる。

ご自身だけで抱え込まず、早めに専門家へ相談し、サポートを得ながら計画的に手続きを進めることで、不安なく、故人の想いを未来へとつなぐことができるでしょう。