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経営企画室という部署は必要か。「部署」と「機能」を混同するな

「うちにも経営企画室をつくるべきだろうか」。事業を引き継いでから、あるいは引き継ぐ直前に、一度はこの問いが頭をよぎったことがあるはずです。組織図を眺めて、大手企業のように経営企画という部署を置けば、社内の課題が整理されるのではないか。そんな期待を抱く気持ちは、よくわかります。

しかし、先に結論を言います。経営企画室という「部署」が必要かどうかは、実はどうでもいい問いです。本当に必要なのは、経営と現場をつなぐ「機能」のほうです。部署の看板を掲げても、中身が伴わなければ、社長の隣に空箱が置かれるだけで終わります。

この記事では、なぜ多くの中小企業で経営企画室が形骸化するのか、「部署」と「機能」の違いとは何か、そして機能を先に立ち上げるために何から手をつければいいのかを解説します。

経営企画室が「部署」として失敗する構造

大手企業には経営企画部や経営企画室が当たり前のように存在します。中期経営計画を策定し、取締役会の資料をまとめ、全社のKPIを管理する。その姿を見て「うちにも」と考えるのは自然なことです。しかし、あなたの会社に同じ箱を置いたとして、同じように動くでしょうか。

大手と中小では前提が違います。大手には、経営企画の仕事だけで手一杯になるほどの事業ポートフォリオがある。一方、社員数十名の地方企業では、経営企画に専任を割けるほどの人的余裕がないのが普通です。結果、総務部長や管理部門の誰かが「兼任」で経営企画室長を名乗り、日常業務に追われて何も動かないまま半年が過ぎる。これは特定の会社の話ではなく、ほぼ共通して起きるパターンです。

部署を置くことがゴールになってしまうと、組織図が更新されただけで安心してしまう。安心した瞬間に、課題は元の場所に戻ります。

「部署」ではなく「機能」で捉え直す

では、経営企画室の機能とは何か。煎じ詰めれば、たった一つです。経営者の意思決定と現場の実行を接続すること。言い換えれば、社長の頭の中にある構想を、現場が動ける粒度の言葉と仕組みに翻訳する仕事です。

教科書的には「中期経営計画の策定」「予算管理」「新規事業開発」といったタスクが並びます。しかし、中小企業の現場で最初に必要なのは、計画書をつくることではありません。部門間で止まっている情報を流し、社長と現場の間にある「言葉のズレ」を埋めることです。あなたの会社で、営業部と製造部が同じ数字を見て違う解釈をしていることはありませんか。その断絶を解消する横串こそが、経営企画の機能の本質です。

この機能は、必ずしも専任部署がなくても動かせます。社長直下のプロジェクト体制でもいいし、外部パートナーと組む形でもいい。大事なのは看板ではなく、誰が・何を・いつまでに接続するかが明確になっていることです。

機能を立ち上げるとき、最初にやるべきこと

現場の「本音の地図」をつくる

経営企画の機能を動かす第一歩は、戦略策定ではありません。まず現場を歩いて、各部門が何に困っているか、何を諦めているかを聞くことです。ここで出てくるのは、整理された課題ではなく、愚痴に近い生々しい声です。「社長に言っても変わらない」「あの部署が情報を出さない」。その泥臭い声の中にこそ、組織の本当のボトルネックが隠れています。

大手コンサルが入ると、最初にフレームワークで課題を整理しようとします。しかし、社員数十名の会社で3C分析のスライドを見せられても、現場は動きません。それよりも、古参社員の「実はずっと気になっていた」という一言を拾い上げるほうが、組織は確実に前に進みます。

社長の構想を「現場語」に翻訳する

もう一つ欠かせないのが、社長の言葉を変換する作業です。経営者が語るビジョンは、しばしば抽象度が高い。「もっと攻めの営業を」「DXで生産性を上げたい」。その言葉を聞いた現場は、具体的に何をすればいいのかわからず、結局これまで通りの仕事を続けます。経営企画の機能とは、この翻訳を担うことです。社長の「攻め」を、来月の訪問件数と提案書のフォーマットにまで落とし込む。地味ですが、これができる人材や仕組みがあるかどうかで、会社の実行力は決定的に変わります。

まとめ:経営企画室は「箱」より「中身」から始めよ

この記事のポイントを3つに絞ります。

  1. 経営企画室という「部署」を置くこと自体に意味はない。必要なのは経営と現場をつなぐ「機能」である。
  2. 機能の本質は、部門間の横串と、社長の構想を現場語に翻訳する接続作業にある。
  3. 最初にやるべきは計画策定ではなく、現場の本音を聞き、言葉のズレを特定することである。

組織図に新しい箱を描くのは簡単です。しかし、その箱の中に誰が立ち、何を動かすのかが決まっていなければ、経営企画室はただの飾りになります。逆に言えば、機能さえ正しく設計すれば、部署の形は後からいくらでも整えられます。

まずは、あなたの会社で止まっている「経営と現場の間の通訳」を、今日から一つだけ動かしてみてください。

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