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経営企画室の評価方法。数字で測りにくい仕事の成果を可視化する
経営企画室の評価をどうつけるか。この問いに明快な答えを持っている経営者は、ほとんどいません。売上を直接つくるわけでもない。製造ラインに立つわけでもない。だからこそ、「あの部署、何やってるの?」という視線が社内に生まれ、担当者のモチベーションは静かに削られていきます。
結論から言えば、経営企画室の評価は「経営課題がどれだけ前に進んだか」で測るのが筋です。売上や利益といった最終成果ではなく、その手前にある”詰まり”を解消できたかどうか。ここに評価の物差しを置くと、数字で測りにくい仕事にも輪郭が出てきます。
本記事では、経営企画室の評価が難しい理由を整理したうえで、現場で実際に使える評価の考え方と、評価を仕組みとして定着させるための手順を解説します。
経営企画室の評価が難しい本当の理由
一般的には「経営企画室はスタッフ部門だから定量評価が難しい」と説明されます。しかし現場を見ていると、本質はもっと手前にあります。そもそも経営企画室に「何を任せているか」が曖昧なまま走り出しているケースが大半です。ミッションが不明瞭なのに、評価だけ求める。これでは測りようがありません。
あなたの会社の経営企画室には、明文化されたミッションがあるでしょうか。「社長の右腕」「全社横断の調整役」といったふわっとした期待だけでは、本人も周囲も何をもって成果とするかわかりません。評価の問題は、多くの場合、役割定義の問題です。
加えて、中小企業では経営企画室が一人部署であることも珍しくありません。比較対象がいない、前任者もいない。だから評価基準を社内でつくれない。この構造的な孤立が、評価の難しさをさらに深くしています。
数字で測りにくい仕事を可視化する3つの物差し
物差し1:経営課題の進捗率
経営企画室が取り組む課題を四半期ごとにリスト化し、「着手前・進行中・完了」の三段階で進捗を記録します。KPIのような精緻な数値管理は不要です。大切なのは、課題が「放置されていない」ことを見える化すること。社長の頭の中にしかなかった経営課題が、テーブルの上に出ただけでも前進です。
物差し2:部門間の接続回数
経営企画室の本質的な仕事は、部門と部門のあいだに橋を架けることです。営業と製造の間で起きていた情報の断絶を何回つないだか。会議体を何本設計し、実際に回したか。「横串を刺した回数」は、地味ですが組織の変化を映す鏡になります。
物差し3:意思決定までのリードタイム
経営企画室が機能している会社では、社長が判断に必要な情報を手にするまでの時間が短くなります。以前は一週間かかっていた数字の集約が三日で届くようになった。そうした変化は、経営企画室がいなければ起きなかったものです。あなたの会社で「判断待ち」の案件が滞留しているなら、この物差しは特に有効です。
教科書的なバランストスコアカードやOKRを導入しようとして頓挫する中小企業を、私たちは何度も見てきました。フレームワークの精度を上げることよりも、「この三つだけ見る」と決めて愚直に記録を続けるほうが、現場には百倍刺さります。
評価を仕組みとして定着させる手順
物差しを決めたら、次は「誰が・いつ・どう振り返るか」を決めます。経営企画室の評価は、人事評価シートに書いて年に一度点数をつけるものではありません。月に一度、社長と経営企画担当者が三十分だけ対話する。その場で課題リストを開き、進んだこと・止まっていること・止まっている理由を共有する。これだけで十分です。
ここで見落とされがちなのが、古参社員や現場管理職からのフィードバックです。経営企画室の仕事は、社長から見える成果と現場から見える成果がずれやすい。社長は「よくやっている」と思っていても、現場では「勝手に仕組みを変えられた」と不満がたまっていることがあります。逆に、現場の信頼を地道に積み上げている担当者の努力が、社長の目には映っていないことも。評価の場に現場の声を一つでも載せる工夫が、経営企画室を孤立させない鍵になります。
あなたは、経営企画室の担当者と最後に腰を据えて話したのはいつでしょうか。評価制度を整える前に、まずその対話の場をつくること。順番を間違えると、制度だけが形骸化します。
まとめ:経営企画室の評価は「前に進んだか」で測る
本記事の要点を三つに絞ります。
- 評価が難しいのは、成果が見えにくいからではなく、役割が曖昧だから。まずミッションを明文化する。
- 物差しは「課題の進捗率」「部門間の接続回数」「意思決定のリードタイム」の三つで十分。精緻なフレームワークより、愚直な記録が勝つ。
- 評価は年次の人事制度ではなく、月次の社長対話で回す。現場の声を一つ載せることで、経営企画室の孤立を防ぐ。
経営企画室は、成果が派手に見える部署ではありません。だからこそ、評価の仕組みが担当者の背骨になります。数字に表れにくい仕事の価値を、社長自身の言葉で認める。それだけで、組織の空気は変わり始めます。
評価の物差しを一緒につくるところから始めてみませんか。