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経営録

2026.01.27

離職率が高い会社の特徴|「去る者は追わず」で組織が弱体化していませんか?

「辞めたいと言う人間を無理に引き止めても意味がない」

「代わりはいくらでもいる。去る者は追わずが自社のスタイルだ」

離職者が相次ぐ組織において、経営層がこのように口にすることがあります。一見すると個人の意思を尊重しているようにも、あるいは潔いようにも聞こえますが、実はこの「去る者は追わず」という開き直りこそが、組織を崩壊へ導く危険なサインかもしれません。

結論から申し上げます。「去る者は追わず」を免罪符に、離職の根本原因から目を背けている会社は、優秀な人材から順に流出し、組織の質が底なしに低下する「負のスパイラル」に陥っています。

人が辞めるのには必ず理由があります。そして、その理由に向き合わない姿勢そのものが、残された社員のエンゲージメントをさらに削り取っているのです。

本記事では、離職率が高い会社に共通する構造的な特徴を解き明かし、なぜ「追わない」姿勢が組織を弱体化させるのか、そして離職を止めるために経営者が今すぐ変えるべきマインドについて解説します。

離職率が高い組織に共通する「沈黙」の正体

離職率が高い職場を観察すると、共通して漂っている空気があります。それは「健全な対話の欠如」から生まれる冷ややかな沈黙です。

1. 相談しても無駄だという「学習性無力感」

離職者が多い組織の社員は、現状に対して声を上げることを諦めています。「上司に相談しても改善されない」「意見を言うと『文句を言っている』と見なされる」。こうした経験が積み重なると、社員は不満を抱えたまま口を閉ざし、水面下で転職活動を始めます。会社側が気づいた時には、すでに修復不可能な段階まで心が離れているのです。

2. 「去る者は追わず」が招く「大切にされていない」という実感

退職の意向を伝えた際、理由を深く聞かれることもなく「分かった、手続きを進めてくれ」とあっさり処理される。これは会社側からすればスムーズな対応かもしれませんが、本人やそれを見ている周囲の社員には「自分たちは単なる交換可能な部品に過ぎない」というメッセージとして伝わります。人が組織に定着する最大の要因である「居場所感(所属意識)」が、この冷淡な態度によって破壊されます。

3. 離職理由を「個人の資質」にすり替える

「あいつは根性がなかった」「最近の若手は忍耐力が足りない」「家庭の事情だから仕方ない」。

離職が続く理由を、辞めていく個人の側に求める傾向があります。組織の問題として捉えず、個人の問題として処理し続ける限り、組織のOS(文化)は改善されず、同じ理由で次の離職者が生まれます。

「去る者は追わず」が組織を弱体化させる3つのルート

「追わない」ことが、具体的にどのように組織の競争力を削いでいくのでしょうか。

1. 優秀な人材から順に消えていく

労働市場において価値の高い優秀な人材は、常に「より自分を大切にしてくれる環境」や「より成長できる環境」を選べる立場にあります。組織の空気が悪化し、経営陣が社員に関心を持たなくなったとき、真っ先に決断を下すのは、会社に残ってほしいエース級の人材です。結果として、他に行く場所がない人材だけが残る「逆選別」が起こります。

2. ノウハウの流出と教育コストの増大

一人が辞めるたびに、その人が持っていた暗黙知や顧客との信頼関係、業務のコツが失われます。新しい人を採用するためのコスト、教育するための時間、その間の生産性の低下。これらを合算すれば、一人の離職による損失は年収の数倍に達するとも言われます。「代わりはいる」という考え方は、この膨大な経済的損失を無視した、極めて非合理な経営判断です。

3. 「残された社員」の疲弊と不安

仲間が次々と辞めていく光景は、残された社員に「自分もいつか辞めるべきではないか」という不安を植え付けます。さらに、欠員による業務負担が既存社員にのしかかり、労働環境が悪化。そのストレスからさらなる離職が生まれるという、負の連鎖が止まらなくなります。

離職の真因を探る「エグジット・インタビュー」の重要性

離職を止めるためには、まず「なぜ辞めるのか」という真実に向き合う勇気が必要です。そこで有効なのが、退職を決めた社員に対する「エグジット・インタビュー(退職面談)」です。

本音は「退職願」には書かれていない

一身上の理由、家庭の事情……。退職願に書かれた言葉を鵜呑みにしてはいけません。彼らは円満に辞めるために、本当の不満を隠しています。

「もし、〇〇という環境が整っていたら、続けてくれましたか?」

「次に選んだ会社は、うちと何が決定的に違いますか?」

このように、第三者(人事担当や役員)が真摯に耳を傾けることで、現場の管理職のパワハラ、評価制度への不信感、将来への不安といった、経営層が隠されてきた「不都合な真実」が見えてきます。

辞める人を「追う」のではなく「声を聴く」

ここで言う「追う」とは、無理な条件提示で引き止めることではありません。

「辞めると決めたことは尊重するが、あなたの声を今後の会社作りに活かしたい」

この誠実な姿勢が、退職者を「敵」から「アルムナイ(卒業生・協力者)」に変えます。そして、その対話の姿勢こそが、残された社員に「この会社は自分たちの声を聞こうとしている」という希望を与えるのです。

離職率を劇的に下げるための「3つの処置」

空気の淀んだ組織を再生し、定着率を高めるために、経営者が手をつけるべき優先順位があります。

1. 心理的安全性の確保

「何を言っても大丈夫だ」という環境を整えます。失敗を責める文化から、失敗から学ぶ文化へ。不満を「わがまま」と切り捨てるのではなく、「改善の種」として歓迎する。経営者自らが弱さをさらけ出し、社員の本音を受け入れる器を見せることが、沈黙を破る第一歩です。

2. 「条件」ではなく「意味」を語り直す

給与や福利厚生だけで繋ぎ止めるのには限界があります。

「自分たちの仕事が誰を幸せにしているのか(社会貢献)」

「この会社で働くことで、どんな自分になれるのか(自己成長)」

理念(パーパス)を再構築し、日々の業務と理念を紐付ける対話を繰り返すことで、社員は「ここにいる理由」を見出します。

3. 1on1による個別の期待伝達

「みんな頑張ってくれ」という全体へのメッセージではなく、「あなたに、この役割で、こう輝いてほしい」という個別の期待を伝えます。一人の人間として正当に評価され、期待されていると感じる時、人は初めて「この会社のために頑張ろう」という当事者意識を持ちます。

まとめ:定着率は「経営者の愛」のバロメーター

離職率が高いのは、市場のせいでも、若者の気質のせいでもありません。

それは、組織の文化が「人を大切にする」という本質から逸れていることの警告です。

「去る者は追わず」という言葉を、思考停止の言い訳に使ってはいけません。

辞めていく一人ひとりの背中に向き合い、その痛みを組織の進化の糧にする。

その泥臭いプロセスを厭わない経営者の姿勢こそが、社員の信頼を取り戻す唯一の道です。

人は、自分を大切にしてくれない場所からは去り、自分を必要としてくれる場所に集まります。

あなたの会社は、社員にとって「自分の人生を預けるに値する場所」になっていますか?

今日、誰かが辞めると言ったとき、あなたは「なぜ?」と心から問いかけることができますか?

離職を止める戦いは、経営者であるあなたが「社員の幸せ」に本気で責任を持つと決めた瞬間から始まります。