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経営録

2026.01.25

古参社員が変わらない理由|抵抗勢力を「改革の味方」に変えるアプローチ

「新しいシステムを導入しようとしても、『昔はこのやり方でうまくいっていた』と拒絶される」

「理念を刷新したのに、ベテラン層が冷ややかな態度をとり、若手の士気を下げている」

「会社を良くしたいだけなのに、なぜ彼らはこれほどまでに変化を嫌うのか」

組織改革やリブランディングに取り組む経営者が直面する最大の壁、それが「古参社員(ベテラン層)の抵抗」です。彼らは時に「抵抗勢力」と呼ばれ、改革の足を引っ張る存在として疎まれることもあります。

しかし、結論から申し上げます。古参社員が変化に抵抗するのは、彼らが悪意を持っているからではありません。彼らが守ってきた「過去の成功」と「居場所」を失うことへの、生存本能に近い恐怖があるからです。

彼らを排除したり、力でねじ伏せたりしようとするのは逆効果です。彼らが持つ豊富な知識と組織への忠誠心を「改革のエネルギー」に転換できれば、これほど心強い味方は他にいません。

本記事では、古参社員が変化を拒む心理的メカニズムを解明し、彼らを疎外することなく「改革の主役」へと巻き込むための本質的なアプローチを解説します。

なぜ、古参社員は「変化」に抵抗するのか

抵抗の裏側には、単なる「頑固さ」では片付けられない、深刻な心理的理由が潜んでいます。

1. 成功体験という名の「呪縛」

古参社員は、会社が今よりも小さく、苦しかった時代を支えてきたという自負があります。彼らのやり方があったからこそ、今の会社があるのは事実です。

新しい手法の導入は、彼らにとって「これまでの自分の人生や貢献を否定される」ことと同義に聞こえてしまいます。

2. 専門性の喪失(アイデンティティの危機)

長年の経験で培った勘やスキルが、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの新しい仕組みによって不要になる。これは彼らにとって、組織内での「自分の価値」がゼロになる恐怖を意味します。「何者でもなくなる」ことを恐れる人間が、防衛反応として変化を拒むのは自然なことです。

3. 「損失回避」のバイアス

人間には「得る喜び」よりも「失う痛み」を大きく感じる心理特性(プロスペクト理論)があります。

改革によって得られる未来のメリットよりも、今持っている「慣れ親しんだ環境」や「権威」を失うデメリットに目が向いてしまうのです。

改革を阻む「心の壁」を壊すための3つの処方箋

力による改革の押し付けは、面従腹背を招くだけです。彼らの「心」に寄り添ったアプローチが必要です。

処方箋1:過去への「敬意」を言語化する

改革の第一歩は、新しいことを始めることではなく、古いものの功績を認めることです。

「今までのやり方は古い、ダメだ」という否定の文脈ではなく、「皆さんが積み上げてきたこの強みがあるからこそ、次のステージへ行けるんだ」という、**「継承と進化」**の物語を語ってください。

彼らのプライドを満たし、「自分たちは捨てられるのではなく、必要とされている」という確信を与えることが、抵抗を和らげる鍵となります。

処方箋2:彼らに「役割」と「居場所」を再定義する

新しい仕組みの中での彼らの役割を明確にします。

例えば、ITツールそのものを使いこなす役割ではなく、そのツールを使って「長年の勘や暗黙知をどう言語化し、若手に伝承するか」というアドバイザーやエバンジェリスト(伝道師)としての役割を依頼します。

彼らの持つ「経験値」に、新しい「形」を授ける。この設計がなされたとき、彼らは自らの経験を活かすために変化を受け入れ始めます。

処方箋3:個別対話(1on1)による不安の解消

全社会議での号令だけでは不十分です。抵抗の強いキーマンとは、個別に膝を突き合わせて対話する時間を設けます。

「何が不安なのか」「何が不満なのか」を徹底的に聴き(リスニング)、彼らが懸念しているリスクを経営者として真摯に受け止めます。「社長は自分の話を聞いてくれた」という実感こそが、理屈を超えた信頼と協力に繋がります。

抵抗勢力を「改革のリーダー」に変える巻き込み術

最も効果的な方法は、抵抗勢力の中で影響力を持つキーマンを、改革プロジェクトの「メンバー」に引き入れることです。

インサイダー戦略の活用

あえて批判的な立場のベテラン社員を、新しい仕組みを作るチームのリーダーやサブリーダーに任命します。「外側から文句を言う立場」から「内側で一緒に責任を負う立場」に変えるのです。

彼らの鋭い批判は、実は「現場の想定されるリスク」そのものです。それを吸い上げ、改善に活かすことで、システムの完成度は高まり、同時に「自分たちが作ったものだ」という当事者意識が芽生えます。

「成功の果実」を最初に味わわせる

改革によるメリットを、まず古参社員が感じられるように設計します。

「新しいシステムのおかげで、長年面倒だったあの作業が楽になった」

「理念を刷新したら、若手が自分たちの指示に従順になった」

このように、彼らにとっての個人的なベネフィットを早期に提示(クイックウィン)することで、「変化は自分たちにとっても得だ」という確信を植え付けます。

「文化」として定着させるために経営者が守るべき一線

インナーブランディングや組織改革において、経営者が絶対にやってはいけないことがあります。

妥協のない「一貫性」

古参社員の機嫌を取るために、新しいルールを彼らだけ例外にしたり、理念に反する行動を見逃したりしてはいけません。

一度でも例外を認めれば、改革は「本気ではない」と見抜かれ、若手社員の離職を招きます。敬意は払いつつも、向かうべき方向(ビジョン)に関しては一歩も引かない。この「愛のある厳しさ」こそが、組織を再編する力となります。

「卒業」の選択肢を誠実に提示する

どれだけ対話を尽くしても、どうしても新しい価値観に馴染めない、あるいは会社の未来を阻害し続ける存在が残ることもあります。

その場合は、彼らのこれまでの功績に最大限の敬意を払いつつ、早期退職支援や配置転換など、お互いにとって不幸にならない「出口」を誠実に提案することも、経営者としての大切な決断です。

まとめ:古参社員は「敵」ではなく「資産」である

組織の空気を停滞させているように見える古参社員。しかし、彼らはかつて、誰よりも情熱を持って会社を支えてきた人たちです。

彼らが変わらないのは、あなたが掲げる未来に「自分の席」が見えないからです。

  1. これまでの貢献に対する「感謝」を伝える
  2. 新しい時代における「役割」を明確にする
  3. 改革のプロセスに「主体」として巻き込む

この手順を踏むことで、かつての「抵抗勢力」は、会社の歴史と未来を繋ぐ「最強の守護神」へと生まれ変わります。

彼らの胸の内にある「会社を良くしたい」という、今は少し錆びついてしまった情熱に、もう一度火を灯せるのは、経営者であるあなたしかいません。まずは、彼らの一番の功績を思い出し、そこから対話を始めてみてはいかがでしょうか。