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経営録

2026.01.14

高卒採用 vs 大卒採用|地方企業が戦略的に狙うべきターゲットはどっちだ?

「大卒採用にこだわっているが、都会の大手企業に競り負けて応募が来ない」

「高卒採用を検討しているが、教育コストや早期離職が心配だ」

「地方で持続可能な組織を作るためには、どちらを優先すべきか?」

地方の中小企業経営者や人事担当者にとって、新卒採用のターゲット選定は会社の未来を左右する最重要課題です。これまでは「優秀な人材=大卒」という図式が一般的でしたが、労働人口の急減と採用コストの高騰により、その常識は通用しなくなっています。

結論から申し上げます。地方企業が戦略的に狙うべきは、「高卒採用」を基盤に据えつつ、ピンポイントで「大卒採用(特にUターン層)」を組み合わせるハイブリッド戦略です。

特に、現場の核となる人材の確保という点では、高卒採用こそが地方企業の生存戦略における「最強のカード」となり得ます。本記事では、高卒と大卒それぞれの採用メリット・デメリットを徹底比較し、地方企業がとるべき戦略的なターゲット選定の考え方を解説します。

採用市場の現状|大卒採用の「レッドオーシャン」と高卒の可能性

現在の大卒採用市場は、地方企業にとって極めて厳しい「超・レッドオーシャン」です。

大卒採用:空前の「売り手市場」と都市部への流出

マイナビやリクナビといった大手媒体を活用した大卒採用は、全国の競合他社と比較される戦いです。地方の学生であっても、WEB面接の普及により容易に東京や大阪の企業を併願できます。給与条件や福利厚生で劣る地方中小企業が、この土俵で勝ち続けるには膨大なコストと「特別な魅力」が必要です。

高卒採用:地域密着型の「ブルーオーシャン」

一方で、高卒採用は「学校斡旋」という独自のルールに守られた、地域密着型の市場です。高校生は自宅から通える範囲で就職先を探す傾向が強く、地元企業にとっての競合は、近隣の企業に限定されます。また、大卒に比べて求人倍率が極めて高い職種であっても、学校との信頼関係を築くことで安定的な採用ルートを確保できる可能性があります。

高卒採用のメリット・デメリット|若さと定着率をどう活かすか

地方企業がまず検討すべき高卒採用には、特有の性質があります。

メリット:早期の「企業文化」への適応と高い定着率

高卒採用の最大の魅力は、その「素直さ」と「柔軟性」です。18歳という若さで入社するため、他社の色に染まっておらず、自社の理念や行動指針(バリュー)を吸収するスピードが非常に速いのが特徴です。

また、地元志向が強いため、一度定着すれば長期にわたって活躍してくれる可能性が高いという利点もあります。地方企業にとって、3年で辞めない「地元出身の若手」は、何物にも代えがたい資産です。

デメリット:初期教育の負担と「社会性」の未熟さ

一方で、高卒生は社会人としてのマナーや基礎知識がゼロの状態からスタートします。大卒生なら当たり前にできるPC操作やビジネスメール、論理的なコミュニケーションの教育に時間がかかることは覚悟しなければなりません。

また、高校時代の人間関係や環境がそのまま続くため、プライベートのトラブルが仕事に影響しやすかったり、最初の「壁」にぶつかった際に精神的に不安定になりやすかったりする側面もあります。これらをカバーする「メンター制度」などのフォロー体制が不可欠です。

大卒採用のメリット・デメリット|専門性と「変化」をどう取り込むか

次に、大卒採用を戦略的にどう位置づけるかを整理します。

メリット:即戦力に近い基礎能力と「視座」の高さ

大卒生の強みは、大学生活で培った「論理的思考力」や「自己管理能力」です。また、専門的な知識(理系なら技術、文系ならマーケティング等)を背景に持っていることが多く、現場作業の枠を超えた「将来の管理職候補」や「DX推進の担い手」としての期待が持てます。

特に、一度都市部に出た学生が地元に戻る「Uターン採用」は、外の世界を知っているからこその客観的な視点を社内にもたらし、組織の硬直化を防ぐスパイスとなります。

デメリット:圧倒的な「採用コスト」と「離職リスク」

大卒採用の最大のネックは、コストです。ナビサイトの掲載費、説明会、適性検査、内定者フォロー……。一人当たりの採用単価は高騰し続けています。

さらに、大卒生は「キャリアの選択肢」が多い分、少しでも条件が良い他社や、自分がやりたい仕事とのズレを感じると、容易に離職を選択します。高いコストをかけて採用した大卒生が3年以内に辞めてしまうダメージは、中小企業にとって致命的です。

地方企業がとるべき「戦略的ハイブリッド」の設計図

高卒か大卒か、という二者択一ではありません。地方企業が勝つための戦略は、それぞれの役割を明確に分けた「ポートフォリオ」を組むことです。

1. 現場の主戦力は「高卒採用」で固定化する

製造現場や施工現場、サービス職といった「現場のプロフェッショナル」が必要な領域は、高卒採用を主軸に置きます。地元の高校と長期的な信頼関係を築き、「あの会社なら安心だ」と先生や保護者に思われるブランドを構築します。これにより、若年層の労働力を安定的、かつ低コストに確保する基盤を作ります。

2. 管理・企画の種は「Uターン大卒」で狙い撃つ

全方位に向けた大卒採用は行わず、「将来の幹部候補」や「専門職」に絞って募集をかけます。特に、都市部での激務に疲れ、地元での「働きがい」と「生活の質」を天秤にかけ始めた20代中盤から30代の層(第二新卒を含む)を狙うのが最も効率的です。

3. 高卒生を「大卒レベル」に育てる投資を行う

最近注目されているのが、高卒で採用した社員に対し、働きながら通信制大学や資格取得を支援する「企業内教育」です。

「大卒を採る」のではなく、「高卒を採って、自社に最適な大卒レベルの人材に育てる」。この方が、採用コストや離職率を考えた際にトータルコストが低くなるケースが増えています。

ターゲット選定を成功させるための「3つの絶対条件」

ターゲットが決まっても、受け入れ態勢が整っていなければ採用は成功しません。

条件1:高卒・大卒の「混合組織」のマネジメント

高卒生と大卒生が混在する組織では、時に「学歴による壁」や「給与格差への不満」が生じることがあります。

「実力主義」を理念に掲げ、高卒であっても能力次第で早期に昇進できるキャリアパスを明文化しておくことが、組織の活性化と定着につながります。

条件2:SNSや動画を活用した「透明性」の確保

高校生も大学生も、情報の入り口はSNSです。求人票の文字情報ではなく、実際に現場で働いている若手社員の「表情」や「本音」を動画で発信しましょう。

「この先輩たちなら、自分も馴染めそうだ」という安心感は、ターゲットに関わらず応募の最大の動機となります。

条件3:「働きやすさ」の標準化(DXと制度改革)

高卒採用だからといって、アナログなままで良いわけではありません。むしろ若年層ほど、無駄な残業や非効率な紙業務を嫌います。

「地方企業だけど、最新のツールを使っている」「若手の意見が通る風土がある」。この実態を整えることが、ターゲットを引き寄せる磁力となります。

まとめ:地方企業の強みは「顔の見える」距離感にある

高卒採用は大手の参入が難しく、地方企業が「地の利」を最大限に活かせる聖域です。一方で、大卒採用は組織の「血を入れ替える」ために必要な劇薬です。

「うちは地方だから人が来ない」と嘆く前に、今の自社の組織構造にはどちらのエネルギーが必要なのか、改めて考えてみてください。

現場を支える土台を「高卒」で固め、未来を切り拓く翼を「大卒」で補う。

この戦略的な使い分けこそが、人口減少時代において地方企業が100年続くための正解です。

まずは近隣の高校の進路指導室を訪ねることから始めてみませんか。そこには、貴社の未来を担う「原石」が眠っているはずです。