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経営録

2026.01.07

旅館・建設・運送業でも若手は採れる|不人気業界の採用ブレイクスルー

「求人を出しても、応募が来るのは60代以上のシニア層ばかり」

「ハローワークに行っても『その業界は今、若い人は来ませんよ』と諭される」

「せっかく入社した新人も、現場の厳しさに耐えかねてすぐに辞めてしまう」

旅館・ホテル、建設、運送。これらの業界は、いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」や「長時間労働・低賃金」といったネガティブなイメージが先行し、慢性的な人手不足に喘いでいます。特に2024年問題に直面する建設・物流業界や、インバウンド需要でパンク寸前の宿泊業界において、若手人材の確保は事業存続をかけた喫緊の課題です。

しかし、諦める必要はありません。世の中を見渡せば、同じ「不人気業界」に属しながら、SNSを駆使して若手からの応募を殺到させている建設会社や、大卒の新卒採用に成功し続けている運送会社、若女将を中心にZ世代が活躍する旅館が存在します。

結論から申し上げます。若者が来ないのは「業界」のせいではありません。「見せ方」と「働き方」のアップデートが止まっていることが原因です。

若者は決して「汗をかく仕事」や「対人の仕事」を嫌っているわけではありません。彼らが嫌うのは、「意味を感じられない苦労」と「古臭い理不尽な慣習」です。ここさえ解消できれば、むしろデジタルネイティブな彼らにとって、リアルな手触り感のあるこれらの仕事は魅力的に映ります。

本記事では、不人気と言われる業界が、どのようにして若手の心を掴み、採用ブレイクスルー(現状打破)を起こすべきか。その具体的な戦略と、業界別の勝ちパターンについて解説します。

なぜ「不人気業界」と呼ばれるのか?若者の本音を解剖する

対策を講じる前に、なぜ若者がこれらの業界を敬遠するのか、その深層心理を理解する必要があります。単に「仕事が大変そうだから」という表面的な理由だけではありません。

1. 「ブラックな昭和体質」への警戒心

Z世代を中心とする若手求職者は、タイムパフォーマンス(タイパ)や効率性を重視します。

「見て覚えろ」という非合理な指導、サービス残業の常態化、FAXや手書き日報などのアナログ業務。これらに対して「自分の時間を搾取される」「スキルが身につかず市場価値が上がらない」という強烈な危機感を抱いています。

2. 「キャリアパス」が見えない

「トラック運転手はずっと運転手のまま」「現場作業員はずっと現場のまま」という、将来の広がりのなさも懸念材料です。一生体力勝負の仕事が続くのか、それともマネジメントや経営幹部への道があるのか。この「未来の地図」が提示されていないことが、エントリーを躊躇させる要因です。

3. 社会的意義(パーパス)の言語化不足

これらの業界は、社会インフラや文化を支える極めて重要な仕事です。しかし、企業の多くが「きついけど頑張ろう」といった精神論ばかりを発信し、「なぜこの仕事が尊いのか」「社会にどんなインパクトを与えているのか」という“意義”を言語化できていません。

「意味報酬(やりがい)」を重視する若者にとって、理念なきハードワークはただの苦役でしかないのです。

採用ブレイクスルーを起こす「3つの転換」

では、どうすればこの壁を突破できるのか。成功している企業が実践しているのは、以下の3つの視点転換(リフレーミング)です。

1. 【定義の転換】作業員ではなく「クリエイター/ヒーロー」と呼ぶ

まず、仕事の定義を変えます。

単なる「穴を掘る仕事」ではなく「地図に残る未来を作る仕事」へ。

単なる「荷物を運ぶ仕事」ではなく「日本経済の血流を守るヒーロー」へ。

言葉遊びと思われるかもしれませんが、この「定義」が変わることで、求職者が抱くセルフイメージは劇的に変わります。自社の業務を、社会にとってなくてはならない「かっこいい仕事」として再定義し、プライドを持って発信することが第一歩です。

2. 【実態の転換】DXを「採用広報」として使う

「うちは古い業界だけど、働き方は最新です」

このギャップこそが最強の武器になります。

  • 建設現場でのタブレット活用やドローン測量
  • 運送業でのAI配車システムやデジタコによる労務管理の透明化
  • 旅館でのインカム廃止とチャットツールの導入

これらDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、業務効率化のためだけではありません。「当社は古い慣習を打破し、若者が働きやすい環境を整えている」という、強力な採用メッセージになります。スマホ一つで業務が完結するスマートさは、若手にとって大きな安心材料です。

3. 【媒体の転換】ハローワークから「ショート動画」へ

文字だけの求人票で、現場の熱量や人間関係の良さを伝えるのは不可能です。不人気業界こそ、InstagramのリールやTikTok、YouTubeショートといった「動画」を活用すべきです。

ヘルメット姿で真剣に打ち合わせる横顔、トラックの運転席からの絶景、旅館の裏側でのスタッフの笑顔。

「職場が汚い」「怖い人が多そう」というネガティブなバイアス(偏見)を払拭するには、ありのままの映像を見せるのが最も早道です。「意外と楽しそう」「先輩が優しそう」という感覚的な共感が、応募へのハードルを下げます。

【業界別】若手が集まる「勝ちパターン」の具体策

ここからは、旅館・建設・運送の各業界において、具体的にどのような切り口で訴求すれば若手に刺さるのか、その「勝ちパターン」を解説します。

ケース1:建設業|「ガテン系」から「テック系・アーティスト」へ

建設業の採用において今、最も反応が良いのは「スケール感」と「テクノロジー」の掛け合わせです。

  • 訴求ポイント:「地球を彫刻する仕事」重機を操り、何もない場所に巨大な建造物を作るプロセスを、ダイナミックな動画で見せます。BGMや編集にこだわり、「映画のワンシーン」のようなかっこよさを演出します。
  • 訴求ポイント:「ゲーム感覚の操作性」遠隔操作やICT建機の導入をアピールします。「ゲームが得意な君のスキルが活かせる」という切り口は、工業高校生だけでなく、一般的な若年層の関心も惹きつけます。
  • 安心材料の提示:「休みが少ない」というイメージに対し、「完全週休2日制(現場閉所日の設定)」や「有給取得率」を数字で出し、ホワイト化が進んでいることを証拠として提示します。

ケース2:運送業|「過酷な労働」から「自由と高収入のライフスタイル」へ

物流業界は「2024年問題」でネガティブなニュースが多いですが、逆手に取れば「労働環境が改善され、給与水準が上がっている」というチャンスでもあります。

  • 訴求ポイント:「一人の時間の自由さ」人間関係に疲れた若者に対し、「運転中は自分だけの城。好きな音楽を聴きながら、一人の時間を楽しめる」という側面をポジティブに伝えます。
  • 訴求ポイント:「稼げるという事実」「未経験から月収〇〇万円」「入社1年目でマイホーム購入」など、具体的な成功事例を見せます。奨学金の返済や早期の資産形成を考えている若者にとって、実力次第で稼げる環境は魅力的です。
  • 女性ドライバー(トラガール)の露出:女性が活躍している姿を見せることは、「力仕事ばかりではない」「女性でも働けるクリーンな環境(トイレなどが整備されている)」という証明になり、男女問わず応募のハードルを下げます。

ケース3:旅館・ホテル業|「下働き」から「プロデューサー」へ

宿泊業は「おもてなし」という言葉が逆に「滅私奉公」のイメージを与えがちです。これを「エンターテインメントのプロ」として再定義します。

  • 訴求ポイント:「マルチタスクによる飽きない働き方」フロント、清掃、調理補助を一人が担当する「マルチタスク制」を導入し、それを「ホテル運営の全てを学べる」「毎日違う景色が見られる」とポジティブに変換します。単調な作業を嫌う若者には「飽きない仕事」として映ります。
  • 訴求ポイント:「地域の魅力を編集するプロデューサー」単なる接客係ではなく、地元の食材や観光スポットを提案し、お客様の旅を演出するクリエイティブな仕事であることを強調します。「地域活性化」「地方創生」に関心のある層に刺さります。
  • 働き方の改革:「中抜けシフト」の廃止や、「3日働いて1日休み」ではなく「長期休暇(リフレッシュ休暇)」の導入など、オンオフの切り替えができる制度をアピールします。

成功事例に学ぶ「採用広報」の鉄則

実際にこれらの戦略で成功している企業には、共通する「広報の鉄則」があります。

1. 社長が顔を出し、本音で語る

「不人気業界」だからこそ、トップの求心力が重要です。社長自らがSNSや説明会に登場し、「業界を変えたい」「社員を幸せにしたい」という熱い想い(理念)を語ってください。

スペック(条件)で勝てないなら、ハート(想い)で勝負する。社長の人間性に惚れて入社する若者は、定着率も高い傾向にあります。

2. 「ネガティブ」を隠さず、対策をセットで伝える

「夏は暑いし、冬は寒いです。でも、空調服を全員に支給し、休憩はこまめに取れるようにしています」

このように、仕事の厳しさを隠さず伝えた上で、会社としてどう対策しているかをセットで伝えます。この「誠実さ」が入社後のリアリティショックを防ぎ、信頼を生みます。

3. 未経験者の「成長ロードマップ」を見せる

「未経験歓迎」と言うだけでなく、「入社1ヶ月目はこれ、3ヶ月目で資格取得、1年目で独り立ち」といった具体的な育成スケジュールを提示します。

「自分でもできそうだ」「会社が投資してくれるんだ」という安心感が、応募の最後の一押しになります。

まとめ:不人気業界こそ、ブルーオーシャンである

旅館、建設、運送。これらの業界は、AIが進化しても決してなくならない、人間生活の根幹を支えるエッセンシャルワークです。需要はなくなりません。

「不人気」というのは、あくまで過去のイメージが作ったレッテルに過ぎません。競合他社が「人が来ない」と嘆いて諦めている今こそ、見せ方と働き方を変えた企業にとっては、優秀な人材を独占できる**「ブルーオーシャン(未開拓市場)」**となり得ます。

若者は、仕事に「意味」と「誇り」を求めています。

あなたの会社の仕事は、間違いなくかっこいい仕事です。誰かの役に立ち、地図に残り、経済を動かす素晴らしい仕事です。

その誇りを、隠さずに、堂々と、現代の言葉で伝えてください。

「きつい仕事」を「熱狂できる仕事」へ。

その変換キーを見つけた時、あなたの会社には若者たちの熱気が戻ってくるはずです。まずは、自社の仕事を「最高の言葉」で再定義することから始めてみてはいかがでしょうか。