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経営録

2025.08.10

相続税額は「財産評価基本通達」で決まる!経営者が知るべき自社株評価のキホン

「相続税は、財産の総額によって税率が変わる」ということは多くの方がご存知でしょう。では、その「財産の総額」は、一体誰が、どのような基準で決めているのでしょうか?

土地、建物、預貯金、そして会社の株式…。これらの財産一つひとつの値段を決め、相続税額を算出するための絶対的な「公式ルールブック」。それが、国税庁が定めている**「財産評価基本通達」**です。

特に、会社を経営されている方にとって、この通達は事業承継の成否を左右するほど重要な意味を持ちます。この記事では、一見すると難解な「財産評価基本通達」の基本から、経営者が絶対に知っておくべき「自社株評価」の核心、そして最新のルール変更まで、ポイントを絞って分かりやすく解説します。

そもそも「財産評価基本通達」とは何者か?

国税庁が定めた「相続財産の公式な値段の計算ルールブック」

財産評価基本通達とは、相続税や贈与税を計算する際に、課税対象となる個々の財産をどのように評価(=値段付け)するか、その具体的な方法を定めた国税庁の内部規定(通達)です。

税務署の職員は、この通達に定められたルールに従って財産の価額を評価し、相続税額を計算します。つまり、この通達は、私たちの納税額を直接的に決定づける、非常に強力な「ルールブック」なのです。

なぜ必要?「時価」という曖昧さをなくし、全国で公平な課税を実現するため

「財産の値段なら、売買される価格、つまり『時価』でいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、不動産や非上場株式のように、常に売買されているわけではなく、明確な市場価格がない財産は数多く存在します。

もし評価方法が統一されていなければ、評価する人や地域によって値段がバラバラになり、税負担に不公平が生じてしまいます。そこで、全国の誰もが同じ基準で財産を評価できるよう、この財産評価基本通達が定められているのです。

これだけは押さえたい!主な財産の評価方法のキホン

財産評価基本通達では、財産の種類ごとに詳細な評価方法が定められています。ここでは代表的な財産の評価の基本をご紹介します。

土地:「路線価」または「固定資産税評価額×倍率」で評価

市街地にある宅地などは、国税庁が定めた道路ごとの1平方メートルあたりの価格である**「路線価」を基に評価します(路線価方式)。一方、路線価が定められていない地域では、その土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の倍率を掛けて**評価します(倍率方式)。

建物:「固定資産税評価額」そのものが評価額

家屋やビルなどの建物は、原則として市区町村が定めている**「固定資産税評価額」**がそのまま相続税評価額となります。比較的シンプルで分かりやすい評価方法です。

上場株式:4つの価格から最も有利な(低い)ものを選択可能

証券取引所に上場している株式は、以下の4つの価格のうち、最も低い価格を選んで評価することができます。納税者にとって有利な仕組みになっています。

  1. 相続があった日の終値
  2. 相続があった月の毎日の終値の月平均額
  3. 相続があった月の前月の毎日の終値の月平均額
  4. 相続があった月の前々月の毎日の終値の月平均額

【事業承継の最重要テーマ】複雑怪奇な「非上場株式(自社株)」の評価

さて、ここからが本題です。会社経営者にとって最も重要かつ、最も評価が難しいのが「非上場株式」、つまり自社の株式です。

なぜ自社株の評価は難しいのか?(市場価格がないから)

自社株は上場株式と違って証券取引所で売買されていないため、客観的な市場価格が存在しません。そのため、財産評価基本通達に定められた複雑な計算方法を用いて、その会社の価値をゼロから算出しなければならないのです。そして、この評価額が、後継者が負担する相続税額に直結します。

原則的な評価方法:「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」

非上場株式の評価は、原則として以下の2つの方式を組み合わせて行います。

  • 類似業種比準価額方式上場している同業他社の株価を参考に、「配当」「利益」「純資産」の3つの要素を比較して、自社の株価を評価する方法です。会社の「収益力」に着目した評価方法と言えます。
  • 純資産価額方式会社の総資産から総負債を差し引いた「純資産価額」を、発行済株式数で割って株価を評価する方法です。会社の「資産価値」に着目した評価方法であり、会社を今すぐ解散した場合の価値を示すものとも言えます。

会社の規模に応じて、2つの方式のブレンド比率が変わる

どちらの方式をどのくらいの割合で使うかは、会社の規模(従業員数、総資産価額、取引金額)によって決まります。一般的に、大会社は類似業種比準価額方式の比重が大きく、小会社は純資産価額方式の比重が大きくなります。このブレンド比率一つで、株価は大きく変動します。

特例的な評価方法:「配当還元方式」とは

経営に関与しない少数株主(同族株主以外)が株式を相続した場合などには、特例として「配当還元方式」という評価方法が用いられます。これは、その会社が支払った過去の配当金額を基に株価を評価する方法で、一般的に上記の原則的評価方式よりも株価はかなり低く評価されます。

知らないでは済まされない!2024年10月から変わる新ルール「総則6項」

最後に、近年注目されているルール変更について触れておきます。それは、財産評価基本通達の総則(全体に関わるルール)の第6項、通称「総則6項」の改正です。

背景にあるのは「行き過ぎた節税対策」への警鐘

これまで、一部では財産評価基本通達のルールを形式的に利用し、実態とかけ離れた低い評価額を算出するような、行き過ぎた節税対策が見られました。今回の改正は、こうした租税回避的な行為に歯止めをかけることが目的です。

具体的に何が変わる?通達どおりの評価が「著しく不適当」な場合の否認リスク

新しいルールでは、財産評価基本通達の方法で評価した価額が、客観的な交換価値(時価)と照らして「著しく不適当」と認められる場合には、税務署長がその評価を否認し、時価で評価し直すことができる、という点が明確化されました。

特に注意すべきは「相続直前の不動産購入」などの対策

例えば、相続税対策として相続開始の直前にタワーマンションなどを購入し、通達上の低い評価額を利用して相続税を圧縮するようなケースが、この新ルールの対象となる可能性があります。今後は、形式的なルールだけでなく、その取引の合理性や実態がより厳しく問われることになります。

まとめ:「財産評価」を制する者が、事業承継と相続を制する

「財産評価基本通達」は、単なる税金の計算ルールではありません。それは、あなたの会社の価値、そして次世代へ引き継ぐべき財産の価値を測るための「物差し」そのものです。

特に、非上場株式の評価は非常に専門的で、どの評価方式を選択し、どのように計算するかによって、相続税額は何千万円、場合によっては何億円も変わってきます。これは、まさに税理士や専門家の腕の見せ所であり、知識と経験が結果を大きく左右する世界です。

適切な事業承継対策や相続税対策は、まず「自社の株価が今いくらなのか」という正確な財産評価から始まります。現状を正しく知ることなくして、効果的な未来への一歩は踏み出せないのです。

貴社の本当の価値、把握していますか?財産評価と株価対策は株式会社勝継屋へ

「うちの会社の株価は、一体いくらなんだろう?」

「後継者のために、少しでも株価を下げておきたいが、何から手をつければいい?」

「最近の法改正で、これまでの相続税対策が通用しなくなるのではないかと不安だ」

財産評価、特に非上場株式の評価は、事業承継における全ての戦略の出発点です。しかし、その計算は極めて複雑で、専門家でなければ正確な価額を算出することは不可能です。

もし、貴社の株価や相続対策にご不安をお持ちなら、事業承継と財産評価を専門とする株式会社勝継屋にぜひ一度ご相談ください。

私たちは、貴社の財務状況を詳細に分析し、「財産評価基本通達」に基づいた正確な株価をシミュレーションいたします。その上で、退職金の活用、組織再編、事業承継税制の適用など、あらゆる選択肢の中から、貴社にとって最も効果的で、かつ新しいルールにも対応した株価対策・相続対策をご提案します。

全ての対策は、現状の正確な把握から始まります。まずは無料相談で、貴社の「今」を知ることから始めてみませんか。