後継者不足や事業承継のコスト問題に悩む経営者にとって、事業承継税制は非常に重要な制度です。この制度が、近年の税制改正によって大幅に要件緩和され、これまで以上に使いやすくなっていることをご存知でしょうか。
今回の改正は、多くの中小企業にとって事業承継を円滑に進める絶好の機会となり得ます。本記事では、事業承継税制の概要から、今回の要件緩和で具体的に何が変わったのか、そして企業にとってどのようなメリットがあるのかを、専門的な内容を交えつつ分かりやすく解説します。
そもそも事業承継税制とは?
後継者の税負担を実質ゼロにする画期的な制度
事業承継税制とは、会社の株式や事業用資産を後継者が先代経営者から贈与または相続によって引き継ぐ際に、本来発生する多額の贈与税や相続税の納税が猶予され、最終的には免除される制度です。
この制度には「一般措置」と、より使いやすく措置が拡充された「特例措置」の2種類があります。特に「特例措置」は、納税が猶予される株式数の上限が撤廃され、納税猶予割合も100%となるなど、非常にメリットの大きい制度として多くの企業で活用が検討されてきました。
これまでの「特例措置」が抱えていた課題
しかし、この非常に有用な「特例措置」を利用するためには、いくつかの厳しい要件をクリアする必要がありました。特に、以下の2点は多くの経営者を悩ませてきた課題です。
- 特例承継計画の提出期限: 制度を利用するには、承継の具体的な計画を記した「特例承継計画」を都道府県庁に提出する必要があり、その提出期限が2024年3月31日までと定められていました。
- 承継後5年間の雇用維持要件: 事業承継後5年間、従業員の平均雇用人数を8割以上維持しなければならないという要件がありました。これを満たせない場合、猶予されていた税金を全額納付する必要があり、経営の大きな足かせとなっていました。
これらの厳しい要件があったため、制度の利用をためらったり、諦めたりする企業が少なくありませんでした。
【2024年度改正】事業承継税制の抜本的な要件緩和ポイント
今回の税制改正では、前述のような課題を解消し、より多くの中小企業が制度を活用できるよう、抜本的な要件緩和が行われました。特に重要なポイントを3つご紹介します。
最も大きな変更点:特例承継計画の提出期限が2年延長
これまで最大の障壁の一つとされていた**「特例承継計画」の提出期限が、2026年3月31日まで2年間延長**されました。
「もう間に合わない」と諦めていた企業にとって、これは最大の朗報です。事業承継には周到な準備が必要であり、計画策定の時間的な猶予ができたことで、より多くの企業が特例措置の活用を現実的に検討できるようになりました。今からでも十分に間に合いますので、再検討する価値は非常に高いと言えるでしょう。
実質撤廃へ:承継後5年間の雇用維持要件の大幅な緩和
経営者を最も悩ませてきた**「承継後5年間の雇用維持要件」が、大幅に緩和**されました。これまでは、従業員の雇用を平均で8割維持する必要がありましたが、改正により、この要件を満たせない場合でも、その理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されたもの)を提出することで、納税猶予が継続されることになったのです。
景気変動や業界再編など、企業努力だけではどうにもならない外部環境の変化がある中で、この要件は非常に厳しいものでした。今回の緩和は、事実上の「雇用維持要件の撤廃」とも言える大きな変更であり、承継後の経営の自由度を格段に高めるものです。これにより、後継者は雇用の維持に過度に縛られることなく、事業の実態に即した柔軟な経営判断を下しやすくなります。
M&Aでの活用も:第三者承継における緩和措置
今回の改正では、親族内承継だけでなく、M&A(合併・買収)による第三者への事業承継を後押しする緩和措置も盛り込まれました。
具体的には、M&Aによって株式を譲渡した場合でも、一定の要件を満たせば、猶予されていた税金の免除手続きがよりスムーズに行えるようになります。これにより、後継者不在の企業がM&Aを選択しやすくなり、事業と雇用の維持につながることが期待されています。
要件緩和がもたらす3つの大きなメリット
今回の要件緩和は、中小企業に計り知れないメリットをもたらします。
メリット1:これまで諦めていた企業も制度活用が可能に
最大のメリットは、何と言っても「特例承継計画」の提出期限延長でしょう。時間的な制約から特例措置の活用を断念していた企業にとって、再チャレンジの道が開かれました。計画策定に十分な時間をかけられるため、より精度の高い承継計画を立てることが可能です。
メリット2:承継後の経営の自由度が格段に向上
雇用維持要件の実質的な撤廃は、後継者にとって大きな安心材料です。承継後の経営において、事業の成長や変化に対応するための柔軟な人員配置や組織再編が行いやすくなります。税金の猶予打ち切りリスクに怯えることなく、大胆な経営戦略を打ち出せるようになるでしょう。
メリット3:多様な承継シナリオに対応可能に
M&Aに関する緩和措置は、事業承継の選択肢を大きく広げます。親族や社内に適任な後継者が見つからない場合でも、第三者への承継を円滑に進める道筋が示されました。これにより、廃業を選択せざるを得なかった企業が事業を存続させ、従業員の雇用や取引先との関係を守ることにつながります。
制度活用における注意点と成功の秘訣
要件は緩和されましたが、事業承継税制が誰でも無条件に利用できるようになったわけではありません。制度を確実に活用し、事業承継を成功させるためには、いくつかの注意点があります。
緩和されても遵守すべき要件は存在する
雇用維持要件は緩和されましたが、他にも遵守すべき要件は残っています。例えば、承継後も後継者が代表者であり続けること、資産管理会社に該当しないことなど、いくつかのルールは引き続き守る必要があります。これらの要件を正しく理解し、計画段階から織り込んでおくことが重要です。
複雑な手続きは専門家のサポートが不可欠
事業承継税制は、その手続きが非常に複雑です。特例承継計画の作成・提出から、承継後の都道府県への年次報告まで、専門的な知識が求められる場面が数多くあります。要件緩和によって利用のハードルは下がりましたが、手続きの複雑さは変わりません。
自社だけで全てを完結させようとすると、思わぬところでミスを犯し、最悪の場合、納税猶予が打ち切られるリスクもあります。税理士や専門コンサルタントなど、事業承継に精通した専門家のサポートを受けながら進めることが、成功への確実な道筋です。
計画的な準備が事業承継成功の鍵
期限が延長されたとはいえ、事業承継の準備には時間がかかります。現状分析、後継者の選定・育成、株価対策、そしてステークホルダーとの合意形成など、やるべきことは山積みです。今回の要件緩和を好機と捉え、できるだけ早く準備に着手することが、円滑な事業承継を実現する鍵となります。
まとめ:要件緩和は事業承継の絶好の機会
今回の事業承継税制の要件緩和は、多くの中小企業にとって、事業承継という大きな経営課題を乗り越えるための強い追い風となります。「特例承継計画」の提出期限延長と「雇用維持要件」の実質的な撤廃は、制度活用のハードルを劇的に下げました。
この機会を逃さず、自社にとって最適な事業承継の形を検討してみてはいかがでしょうか。しかし、その手続きは依然として複雑であり、専門的な知見が不可欠です。
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