「親が亡くなって株式を相続したけど、名義変更にはどれくらい費用がかかるんだろう?」
「思わぬ費用が発生したらどうしよう…」
ご家族を亡くされた後、悲しみの中で進める相続手続きは、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。その中で、株式の名義変更は、その手続きの複雑さや、それに伴う費用の不透明さから、不安を感じる方も少なくないでしょう。特に、上場株式と非上場株式(自社株)では、手続き方法だけでなく、発生する費用も大きく異なります。
本記事では、相続や事業承継を考える方に向けて、株式の名義変更にかかる具体的な費用について、どこよりも分かりやすく徹底解説します。実費から専門家へ依頼する際の費用相場まで、知っておくべきポイントを解説しますので、安心して手続きを進めるための知識をぜひインプットしてください。
1. 株式の名義変更にかかる費用の全体像
株式の名義変更にかかる費用は、大きく以下の3つの種類に分けられます。
- 実費: 書類の取得費用や郵送費など、手続きに必須で発生する費用。
- 手数料: 証券会社や発行会社、または代行機関に支払う費用。
- 専門家報酬: 司法書士や税理士など、専門家に手続きを依頼した場合に支払う費用。
これらの費用は、上場株式か非上場株式か、相続人が自身で手続きを行うか、専門家に依頼するかによって大きく異なります。
2. 【実費】手続きに共通して発生する費用
相続による株式の名義変更では、上場・非上場問わず、相続人を確定したり、所有権を証明したりするために、様々な公的書類が必要となります。これらの書類の取得には実費がかかります。
- 戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本含む): 1通あたり450円~750円程度。故人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要となるため、複数枚必要になることが多く、数千円程度かかる場合があります。
- 印鑑証明書: 1通あたり300円~400円程度。相続人全員の印鑑証明書が必要です。
- 住民票: 1通あたり300円~400円程度。
- 遺言書の検認手数料: 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認手続きが必要となり、1件あたり800円の収入印紙が必要です。
- 郵送費・交通費: 郵便による書類のやり取りや、役所、金融機関などへの移動にかかる費用。
これらの実費は、手続きの複雑さや、取得する書類の通数によって変動しますが、合計で数千円から1万円程度を見ておくと良いでしょう。
3. 【手数料】名義変更の窓口に支払う費用
株式の種類によって、手数料の考え方や金額が異なります。
3-1. 上場株式の場合の手数料
上場株式の名義変更は、故人が口座を持っていた証券会社が窓口となります。
- 証券会社の手数料:
- 多くの証券会社では、**相続による名義変更手続き自体は「無料」**としている場合があります。
- ただし、一部の証券会社では、**1銘柄につき2,200円、5銘柄以上で一律11,000円(税込)**といった移管手数料(名義変更手数料)が発生することがあります。手数料は証券会社によって異なるため、事前に確認が必要です。
- この手数料は、一般的に株式を「譲り渡す側」(故人の口座)に請求されるケースが多いです。
- その他:
- 証券保管振替機構(ほふり)の開示費用: 故人がどの証券会社に口座を持っていたか不明な場合、ほふりに照会することが可能で、1件あたり6,050円(税込)の手数料がかかります。
3-2. 非上場株式(自社株)の場合の手数料
非上場株式の名義変更は、その株式を発行している会社が窓口となります。
- 発行会社の手数料:
- 多くの非上場会社では、名義変更自体に手数料を徴収しないのが一般的です。
- ただし、定款で別途手数料を定めている場合や、株主名簿の管理を信託銀行などに委託している場合は、その委託手数料が発生することがあります。これは会社が負担することが多いですが、念のため確認が必要です。
- 株券発行会社の場合:株券発行会社の場合、株券を再発行する際に「株券再発行手数料」が発生することがありますが、これは名義変更とは直接関連しない費用です。
4. 【専門家報酬】依頼した場合の費用相場
相続手続き全体、特に株式の名義変更は複雑なため、司法書士、税理士、弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。専門家報酬は、依頼する範囲や財産の規模によって大きく変動します。
4-1. 司法書士に依頼する場合
- 依頼範囲: 株式の名義変更手続きの代行、相続関係書類の収集、遺産分割協議書の作成など。
- 費用相場:
- 上場株式の名義変更: 1銘柄あたり数万円~10万円程度が相場ですが、複数の証券会社に口座がある場合や、案件が複雑な場合は追加費用がかかります。
- 非上場株式の名義変更: ケースバイケースですが、会社の規模や定款の内容(譲渡制限の有無など)によって変動し、数万円~数十万円程度となることがあります。
- 全体相場: 預貯金や不動産などを含め、相続手続き全体を司法書士に依頼する場合、最低でも10万円~20万円程度から、財産の種類や相続人の人数に応じて費用は変動し、数百万円を超えることもあります。
4-2. 税理士に依頼する場合
- 依頼範囲: 相続税の計算、申告書の作成・提出、非上場株式の評価、事業承継税制の適用支援など。
- 費用相場:
- 相続税申告報酬: 相続財産の総額によって変動する「料率制」が一般的です。例えば、相続財産が1億円の場合、報酬額は100万円~200万円程度となることがあります。
- 非上場株式の評価報酬: 相続税申告報酬に含まれることもありますが、評価が複雑な場合は別途数十万円~数百万円の費用がかかることもあります。
- 事業承継税制適用支援: 特例承継計画の作成やその後の報告義務サポートなど、別途費用が発生します。
- 特例承継計画作成支援:数十万円~100万円程度
- 適用後の年次報告:年間数万円~数十万円程度
4-3. 弁護士に依頼する場合
- 依頼範囲: 遺産分割協議の代理・交渉、遺言書の有効性に関する問題、M&Aに伴う法務サポートなど。
- 費用相場: 紛争解決型の場合は、着手金と成功報酬(経済的利益の〇%など)が発生し、高額になる傾向があります。
5. まとめ:株式の名義変更費用は「何をするか」で変わる
株式の名義変更にかかる費用は、単純な手続き費用だけでなく、関連する税務や法務の知識が必要となるため、その全容を把握しておくことが重要です。
- 実費は数千円~1万円程度: 戸籍謄本などの書類取得費が主。
- 手数料は証券会社や発行会社による:
- 上場株式: 多くの証券会社で名義変更自体は無料だが、一部で銘柄ごとの手数料(例:2,200円/銘柄)がかかる場合あり。
- 非上場株式: 発行会社での手数料は基本無料だが、信託銀行など委託先がある場合は費用発生の可能性も。
- 専門家報酬が最も高額:
- 司法書士: 名義変更代行で数万円~、相続手続き全体で10万円~。
- 税理士: 相続税申告や自社株評価で数十万円~数百万円以上。
- 弁護士: 遺産分割紛争などで高額になる可能性あり。
ご自身で手続きを行う場合は実費のみで済みますが、その時間と労力、そして専門知識の不足によるミスのリスクを考慮すると、税理士や司法書士などの専門家へ依頼する方が、結果的にスムーズで確実な手続きとなり、安心できるケースが多いでしょう。特に、非上場株式の場合は評価や手続きが複雑なため、専門家のサポートは不可欠です。
まずは、M&Aや事業承継に詳しい専門家に相談し、どの範囲まで依頼するべきか、費用の見積もりも含めて相談してみることを強くお勧めします。