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経営録

2025.05.25

M&A仲介とは?買い手も売り手も知っておきたい構造や関わり方を徹底解説!

1. はじめに

企業の成長や事業承継、経営の方向転換など、さまざまな局面で**M&A(エムアンドエー)**という選択肢が注目を集めています。M&A(Merger and Acquisition:合併と買収)は、大企業だけでなく中小企業や地方企業でも積極的に検討されるようになり、事業規模の拡大や後継者問題の解決手段として定着しつつあります。しかし、M&Aプロセスは複雑であり、売り手・買い手双方が適切な相手企業を探し、交渉や契約を進めるのは容易ではありません。

そこで、多くの企業が活用しているのがM&A仲介会社です。名前の通り、仲介会社は**「売り手と買い手をつなぐ橋渡し役」**として、取引の成立に向けた支援を行います。しかし「M&A仲介会社って具体的にどんな役割?」「アドバイザリーとはどう違う?」「仲介会社を使うメリット・デメリットは?」など、疑問や不安をお持ちの方も多いはず。

本記事では、M&A仲介とは何かを基本から丁寧に解説し、仲介会社の構造や報酬体系、そして買い手・売り手企業の視点から見た「仲介との上手な関わり方」を徹底的にご紹介します。M&Aを成功させるうえで、仲介会社との相性や理解度はとても大切なポイントです。売り手企業として事業承継を検討中のオーナー経営者や、買い手として企業を探している経営者の皆さんは、ぜひ最後までお読みください。

2. M&A仲介とは何か:基本概念

2-1. M&Aにおける「仲介」とは

M&A取引には、売り手企業買い手企業の2当事者が存在し、互いのニーズや条件が合致したときに取引が成立します。しかし、両者が直接やり取りをしても、相手企業の情報や価格交渉、契約手続きなど、多くの壁にぶつかる可能性があります。そこで間に入ってスムーズな調整を行うのがM&A仲介会社です。

仲介会社は、“一者専属”ではなく両者をまとめる中立的立場として、以下のような支援を提供します。

  1. 売り手・買い手のマッチング:売却希望企業と買収希望企業を探し出し、相性の良い候補を紹介
  2. 情報整理・企業評価:企業価値の査定や情報の整理を行い、買収・売却価格の目安を立てる
  3. 交渉支援:価格交渉や契約条件について両者の間を取り持ち、合意形成をサポート
  4. 成約までの手続き管理:基本合意書や最終契約、必要書類作成を進行管理し、クロージングをフォロー

仲介会社は両者の間に立つ形が基本であり、どちらか一方の利益を代弁するわけではなく、**“取引成立”**こそが使命となります。

2-2. 「アドバイザリー」との違い

M&A仲介とよく混同されるのがM&Aアドバイザリーです。両者の違いを簡単にまとめると:

  • M&A仲介
    • 売り手・買い手の“真ん中”に立ち、両者をマッチングして取引をまとめる
    • 場合によっては一つの案件で、同じ仲介会社が売り手と買い手両方から報酬を受け取る(両手仲介)ことがある
    • 中立的な立場を強調し、取引成立をゴールとする
  • M&Aアドバイザリー
    • 一方のクライアント(売り手または買い手)に寄り添って、相手との交渉をリードする
    • 企業価値評価(バリュエーション)や戦略的アドバイスなど、クライアント側の利益最大化を目指す
    • 相手方にはアドバイスしない立場

つまり、仲介は両者を“仲立ち”するイメージで、アドバイザリーは片方の代理人的な位置づけです。実際には、仲介会社が「売り手側専門」としてアドバイザリーに近い業務を行うケースもあり、実態としてはグレーに混在していることがあります。

3. M&A仲介の構造と報酬体系

3-1. 両手仲介と片手仲介

M&A仲介には、両手仲介片手仲介という構造があります。

  • 両手仲介:同じ仲介会社が「売り手」「買い手」双方から報酬を受け取る形態。
    • メリット:1社でマッチングしやすく、対応がスピーディ
    • デメリット:中立性が損なわれるリスク。どちらの利益を優先するか曖昧になる可能性
  • 片手仲介:仲介会社が「売り手側」、「買い手側」いずれか一方のみから報酬を受け取る形態。
    • メリット:利益相反が起きにくく、クライアントの利益を追求しやすい
    • デメリット:買い手・売り手のマッチングが上手く進まない場合も

大手M&A仲介会社の多くは“両手仲介”のビジネスモデルをとっており、買い手・売り手の両方のマッチングを同時に行い、成功報酬を得る形です。片手仲介を標榜するところも増えてはいるものの、実際には取引成立件数が多いのは両手仲介の会社が多い傾向があります。

3-2. 手数料や報酬の基本

M&A仲介における報酬体系は以下の要素を含むことが多いです。

  1. 着手金:契約時に支払う初期費用(ゼロ円の場合も)
  2. 中間金(中間成功報酬):基本合意書締結時やDD(デューデリジェンス)開始時に支払う
  3. 成功報酬:最終契約が成立した際に支払う(一般的にレーマン方式などで算出)
  • レーマン方式:取引金額に応じて一定率(5億円以下→5%、5~10億円→4%などの段階的手数料率)を掛ける仕組み

また、仲介会社によって報酬率や計算方法はバラつきがあり、数百万円~数千万円以上になるケースも。検討時には必ず見積もりを取り、ほかの仲介会社との比較が大切です。

3-3. 成功報酬主義のメリットと注意点

多くの場合、“成功報酬主義”を採用し、M&Aが成立しなければ報酬が発生しないというシステムが採られています(ただし着手金や中間金を除く)。これにより企業側は「失敗しても大きな支出は抑えられる」というメリットを感じられますが、同時に売り手・買い手の希望条件よりも“クロージング自体”を優先する仲介が存在するリスクも。

つまり、仲介会社は成立してこそ報酬を得るため、最終的に妥協を促し、迅速に決着させようとする可能性があるのです。企業としては、この点を理解したうえで交渉プロセスに臨む必要があります。

4. M&A仲介が行う主な業務と流れ

4-1. 売り手・買い手のマッチング

仲介会社がまず行うのは、**「売りたい企業」「買いたい企業」**のニーズを把握し、最適なマッチング先を探すことです。ここでは自社が持つネットワーク(金融機関や登録データベースなど)を活用し、クライアントの条件(希望価格、業種、地域など)に合いそうな候補をリストアップして提案します。

  • 売り手企業:事業承継の理由や業種、企業規模、財務状態、希望売却価格などを整理
  • 買い手企業:予算や業種・地域の条件、シナジーを得たい分野などを設定
  • そのうえで仲介会社が、複数候補を提示し、当事者同士の面談をセット

4-2. デューデリジェンス(DD)と企業評価

マッチング相手が決まり、基本合意に向けて話が進むと、デューデリジェンス(DD)という詳細調査がスタートします。ここでは、財務・税務・法務・ビジネス・人事など幅広い観点で買収対象企業にリスクや隠れ負債がないかを確認。仲介会社もこのプロセスをサポートし、弁護士や会計士などと連携して調査を進めることが多いです。

  • 財務DD:決算書や取引先状況、キャッシュフローなどをチェック
  • 法務DD:契約書や知的財産、訴訟リスクの有無を確認
  • ビジネスDD:市場競合分析、ビジネスモデルの将来性など

4-3. 価格・条件の交渉

DD結果を踏まえ、買い手は提示価格の再調整を行うことがあります。また、経営者の残留期間や従業員の処遇など、条件面の交渉が細かく行われます。このとき仲介会社は、両者の意向をすり合わせて合意を探るのが主な役目です。

  • 価格だけでなく、「社員を何年間は雇用継続する」「事業所を維持する」などの条件も交渉対象になる
  • 両手仲介だと、両サイドのバランスを取りつつ、契約成立を目指す形が多い

4-4. 最終契約とクロージング

価格や条件が合意に至れば、最終契約書が締結されます。ここで、経営権の移転日や支払い条件、経営陣の処遇などが正式に定義され、クロージング(実行日)を迎えるわけです。仲介会社は、この最終手続きも全体のスケジュール管理や書類作成支援などを通じてサポートしてくれます。

5. 買い手・売り手が仲介会社と上手く付き合うコツ

5-1. 明確な「コミットライン」を設定しよう

コンサルやアドバイザリーと同様、M&A仲介においても「コミットライン」を設定することが重要です。どこまで仲介会社が面倒を見てくれるのか、どんなマイルストーンで報告してくれるのかを事前に合意しておくと、後で「聞いていた話と違う」というトラブルを減らせます。

  • 基本合意締結までの期間、何社くらい候補を提示してくれるか
  • DDのサポート範囲(書類収集、弁護士・会計士との連携)はどこまでか
  • 成約後のPMI(買収後統合)支援をするかどうか

5-2. 自社の希望条件やアフターケアをしっかり伝える

とくに売り手企業は、「従業員の雇用を守りたい」「地元の取引先を維持してほしい」といった譲れない条件を明確に仲介会社へ伝えましょう。曖昧にしておくと、高値で買ってくれる買い手が見つかっても、実際には従業員リストラがあったり、事業所を閉鎖する可能性もあります。

  • 「金額優先か、従業員の雇用維持優先か」など優先順位をはっきり
  • 買い手企業がその条件に応えられるか、仲介会社にフィルタリングしてもらう

5-3. 定期的なコミュニケーションと進捗確認

M&Aプロセスは、数カ月~1年以上かかる場合もあります。その間、仲介会社に丸投げではなく、定期的に進捗報告を受け、懸案点があれば早めに協議することが大切です。忙しさを理由に放置していると、思わぬ方向で話が進んでしまう可能性があります。

  • 定期ミーティングやメールでの報告スケジュールを決める
  • 候補企業との接触状況や交渉経過をこまめに把握
  • もし不満や疑問があれば、遠慮なく質問して改善を求める

6. よくある質問・疑問

6-1. 仲介会社は大手が良いの?中堅が良いの?

一概には言えません。大手は案件数が多く、全国ネットワークを持つため買い手・売り手の候補探しがやりやすい。一方、中堅や地域密着型の仲介会社は、地元事情に詳しく、小回りが利くといった利点がある。
案件の規模や業種、地域性によって適切な企業が変わるので、複数社に話を聞き比較すると良いでしょう。

6-2. 成功報酬を下げたい場合はどうしたら?

仲介会社の手数料はレーマン方式などが多く、取引額が大きいほど報酬が高額になる仕組み。しかし、交渉次第では手数料率の調整を検討してもらえる可能性もあります。社内の「M&A担当チーム」があるなら、一度仲介会社と報酬交渉を行い、着手金と成功報酬のバランスなど提案してみる価値があります。

6-3. M&A仲介会社とアドバイザリーをどちら選ぶ?

  • 仲介:相手を見つける力が強く、取引成立を重視。両手仲介だと中立性が課題。
  • アドバイザリー:自社サイドに立ち、価格交渉や戦略を最大化してくれる。

売り手企業で「価格や条件を最大化したい」場合はアドバイザリー(片手)が合うことも。買い手の場合は、仲介のほうが良いケースもあり、どちらにしろ自社の求めるスタイルを明確にするのが先決。

6-4. M&A仲介で失敗するリスクは?

  • 購入・売却価格が不当に低かったり高かったりする
  • 相手企業の実態を十分に調査せず、買収後に負債や問題が発覚
  • コミットラインが曖昧で、仲介が十分なサービスを提供しない

これらを回避するためには、信頼できる仲介会社選び丁寧な契約書・合意が重要です。

7. まとめ:M&A仲介をうまく活用し、Win-Winの取引を実現しよう

人口減少と競争激化が進むなかで、多くの企業が事業承継の課題新規成長分野への投資を検討せざるを得ない時代になっています。そんな局面で、M&Aは有効な経営戦略として注目されていますが、売り手と買い手が直接やり取りするのはハードルが高く、時間もコストもかかるのが現実です。

そこでM&A仲介会社の存在意義が大きくなります。両者の間に入り、最適なマッチングやスムーズな交渉をサポートし、取引成立までリードしてくれるからです。特に以下の点を踏まえて仲介会社と関わることで、理想的なWin-Winの取引が見えてくるでしょう:

  1. 自社の目的・条件を明確化:価格優先か、雇用維持か、技術獲得か、それともスピードか
  2. コミットラインを設定:仲介会社に対し、どこまでやってもらうのか、成功報酬やスケジュールを具体的に定義
  3. 複数社比較し、担当者の人柄や手数料を考慮:1社だけで即決せず、少なくとも2~3社は候補を当たり、実際のコミュニケーションを見極める
  4. PDCAを意識し、定期的な進捗報告を受ける:丸投げではなく、経営者・担当者も主体的に関与する

M&A仲介会社を上手く活用できれば、地方企業が事業承継問題を解決し、存続・発展を果たすことも、都心のベンチャーを買収して新たな市場を開拓することも、十分に射程圏内に入ります。大手のみならず、中堅・地域特化型の仲介会社も多様に存在しますので、ぜひ自社に合ったパートナーを探してみてください。