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経営録

2025.05.17

部下のやる気がないのはあなた(上司)のせいかもしれない

1. はじめに

「うちの部下、全然やる気がないんだよね」
「いくら指示しても、積極的に動こうとしなくて困る」

こんな悩みを抱える上司や経営者の方は多いのではないでしょうか? しかし、本当に問題なのは「部下自身」だけでしょうか。もしかすると、その部下がやる気を出せるような職場環境や意義・メリットが、上司や会社から正しく伝えられていない可能性があるかもしれません。

組織において、人はただ言われた仕事をやるだけでは高いモチベーションを維持しにくいものです。なぜその仕事をしなければならないのか? やり遂げた先にどんな成果やメリットがあるのか? それを理解できるほど、部下は自然と動き出すもの。逆に言えば、それが見えなければ「やりがいなんてない」「ただの作業だ」と感じてしまい、結果として“やる気がない”状態に陥ってしまいます。

2. 部下のやる気がない理由は「部下だけが悪い」とは限らない

2-1. やり方・目的が不明確

部下が「何のためにこの仕事をするのか?」「どうすれば上手くいくのか?」を理解できていないと、モチベーションが生まれにくいのは当然です。例えば、上司が雑な指示をするだけで、具体的なゴールや期待する成果を伝えていなかったり、「この業務の先にどんなチャンスや成功があるか」を説明していなかったりするケースが考えられます。やり方も目的もよくわからないまま進めたところで、意欲は湧きづらいでしょう。

2-2. 成果を上司や会社が正当に評価しない

上司が「とにかくやって」と押し付けるだけで、部下が頑張った結果を見てもらえない環境では、だんだんモチベーションが下がっていきます。良い結果を出しても「ふーん、当然でしょ」と言われ、失敗したときだけ叱られるなら、「やりたくない」と思うのが人間の心理。正しく評価されないと、部下は自分の成長や成果を実感できず、“やる気がない”状態に見えてしまうかもしれません。

2-3. やりがい・メリットを感じられない

たとえ定型的な作業でも、「この作業を終わらせれば、組織にとってこんなメリットがある」「これが成功すると、あなたのキャリアにこんな好影響がある」というビジョンが見えれば、人は意欲を持って取り組めるものです。しかし上司がそれを説明せず、「当たり前のことだからやって」の一辺倒だと、部下は「ただの雑用」と感じてやる気を失います。

特に若い世代は「誰かの役に立っている」という実感や、「この先、自分が成長する」といったモチベーターを重視する傾向が強いと言われています。それを考慮せずに単純な命令で済ませると、部下はモチベーションを維持できないかもしれません。

2-4. 上司自身が明確な目標を提示していない

あるいは、会社全体や部門全体の方向性が定まっておらず、上司自身も「とりあえず忙しいからやってくれ」というスタンスの場合、部下もどこを目指せばいいか分からず、エネルギーを出しようがないのです。そんな空気が続くと、「指示に従うだけの人間になっているかも……」と部下が感じるようになり、「どうせ頑張っても無駄だ」と思い込んでしまうケースもあります。

3. 上司や会社側に必要な視点

3-1. 部下のモチベーションは“引き出してこそ”

モチベーションというのは、決して一方的に湧いてくるものではなく、“環境”によって左右される部分が大きいです。もちろん部下本人の性格ややる気にも個人差がありますが、同じ人でも「この会社なら面白い仕事ができそう」と思えば燃えるし、「何も期待されていない」と感じればしぼんでしまうもの。

つまり、部下のやる気は会社や上司が引き出してこそ最大化されるのです。「部下が悪い」と一蹴する前に、自分たちが十分に彼ら彼女らのモチベーションを引き出す取り組みをしているか、振り返ることが大切です。

3-2. やる気を生む「意義づけ」と「メリット」

どんな仕事にも、「こういう形で会社に貢献できる」「このように社外の人から感謝される」「将来に向けてスキルを習得できる」といったプラス面があるはずです。上司としては、その意義づけ(Why)と、そこから得られるメリット(What’s in it for me?)を丁寧に伝える必要があります。

例えば、「今回の企画は新しい顧客層を開拓するチャンスだから、成功すれば会社の売上アップだけじゃなく、あなたの実績にもなる。結果が出れば、社内評価やキャリアアップにもつながるよ」と言えば、部下は取り組む意味やメリットを理解できるでしょう。

3-3. 「気づかせる」マネジメントが求められる

「上司がやる気を与える」とは、単に熱血指導で鼓舞するだけではありません。むしろ、部下自身が気づくきっかけを与えるような接し方が理想的です。上司が一方的に「これをやれ」と言うより、部下が「これって意外に面白そうかも」「やれば自分の成長になる」と思う瞬間を引き出すことが大切です。

そのために、上司が「なぜこの仕事が大事なのか」「どんなスキルが得られるのか」を対話の中で擦り合わせたり、部下の目標や興味をヒアリングし、それに合う形で仕事を任せる工夫をしたりすると効果的でしょう。

4. 具体的なアプローチ方法

4-1. 部下の“関心”を把握する

やる気がないと感じる部下でも、何かしら興味や得意分野を持っていることが多いです。上司がまずすべきは、「この部下はどんな仕事にやりがいを感じる人だろう?」「何を達成したいのだろう?」と観察し、直接ヒアリングすることです。

  • 「最近気になってること、仕事でやってみたいことはある?」
  • 「これまで楽しいと感じた仕事はどんなもの?」
  • 「キャリアの目標って考えたことある?」

こんな会話を丁寧にしていく中で、その部下のモチベーションのフックが見えてくるかもしれません。

4-2. 仕事の意義・ゴールを共有する

単なる作業指示で終わらせず、「なぜこれをやるのか」「その先にどんなゴールがあるのか」を具体的に伝えましょう。やる気を出した先に何が待っているのかが曖昧だと、部下は「ただの雑用」と捉えてしまいます。

たとえば、「このレポート集計の先に、上司がまとめて役員会でプレゼンをする。そのプレゼンが通れば、新しいプロジェクトが始まり、会社が大きく変わるかもしれない。あなたの仕事は、その土台を築く重要な役割だよ」といった“ストーリー”を示してあげるのです。

4-3. 小さな成功体験を積ませる

部下がやる気をなくすのは、指示されたことが難しすぎて成果が出なかったり、評価がされなかったりするパターンが多いです。逆に、達成しやすい小さな目標を設定し、それを達成するたびに承認や褒め言葉を与えると、部下は「やればできるんだ」と自信を深められます。

“スモールステップの成功”を繰り返すことで、モチベーションが徐々に上がっていくのは心理学的にも知られた手法です。上司は部下に“大きすぎる課題”を丸投げせず、適切なサイズに切り分けて成功を体感させることを心がけましょう。

4-4. 成果をしっかり認め、フィードバックする

部下が頑張って仕上げた成果に対して、「いいね、次はこうするともっと良いよ」と具体的なフィードバックを返すことが大切です。結果がどうであれ、“取り組んだこと自体”を評価し、そこからの改善点を一緒に考えると、部下は「やればやるほど自分は成長できる」と感じられます。

逆に、何も言わずにスルーしたり、出来が悪いとダメ出しだけする上司は、部下の意欲を奪う“元凶”になってしまうので要注意です。

4-5. キャリアの可能性を見せる

特に若手の場合、「将来どんなスキルが身につくのか?」「どんなキャリアパスがあるのか?」が明確だと、モチベーションが高まりやすいです。これは中堅以上の社員にも言えることで、将来的な役職や担当領域、あるいは専門分野を極める道が用意されているなら、その道筋を示しつつ、今の仕事との関連性を説明すると良いでしょう。

「このプロジェクトで実績を出せば、次はリーダーを任せるかも」「この分野の知識を深めれば社内で唯一無二の存在になれるよ」といった具体例を示すことで、“やる気が出た先のメリット”を部下がイメージしやすくなります。

5. 会社の仕組みとして考えるべきこと

5-1. 評価制度や報酬の設計

上司一人の努力だけでは、部下のやる気を長期的に維持するのは難しい面もあります。会社として、「頑張りが正当に評価される」制度を整備するのは極めて重要です。成果主義を導入するなら、その評価基準を分かりやすく示すべきですし、チームワークを重視するなら、協調やサポートなども評価対象に含めるなど、“頑張った人が報われる仕組み”を徹底する必要があります。

5-2. 教育研修の充実

人は、自分が成長していると感じられるときにやる気を強く持ちやすいものです。会社が研修やセミナー受講制度、自己啓発支援などを充実させれば、部下は「この会社で学ぶことが多い」「もっとスキルを高めたい」と思えるかもしれません。結果として、業務への取り組みも積極的になるでしょう。

逆に、学ぶ機会が与えられず、ずっと同じ作業だけを繰り返していると、モチベーションが上がらないのは当然です。

5-3. 組織風土の改革

部下のやる気がない企業は、大抵の場合、組織全体が“やる気を阻害する”ような風土を持っている可能性があります。上司同士が保守的で、失敗を異常に叱責する文化があったり、トップが「まぁこんなもんでしょ」と現状維持に甘んじていたりする状況では、部下のモチベーションを上げるのは至難の業です。

会社としてのビジョンや理念がしっかりしていて、それを全社員で共有し、挑戦を応援する風土を作ることこそが、部下のやる気を継続的に高める土台となります。

6. もし部下のやる気がないと感じたら、まずは自分を疑ってみる

ここまで読んできたように、部下のモチベーションが低いとき、それは単に「部下の性格や態度が悪い」わけではなく、上司や会社側が適切な環境を提供できていない場合が多いのです。言い換えれば、上司が「やる気を出す先のメリット」や「目指す方向性」をうまく伝えられていない可能性が高いということ。

6-1. 自問自答のポイント

  • 部下に対して、仕事の意味や目的をきちんと説明しているか?
  • 部下が成果を出したとき、ちゃんと承認や評価をしているか?
  • この仕事をすることで部下が得られるメリットや成長機会を示しているか?
  • 部下との対話の中で、彼/彼女が求めているものを理解しようとしているか?
  • 会社の制度や評価システムは、部下の頑張りを正当に反映できているか?

これらをチェックし、もし自信を持って「できている」と言えないなら、まずは上司側の行動を見直すのが先決です。

6-2. 対話とフィードバックがカギ

部下がやる気を出せるようになるには、「普段からのコミュニケーション」が不可欠です。一方的な指示ではなく、定期的な面談や1on1の場を設けて、部下の声を聞き、上司の考えを伝えるというサイクルを回すことで、少しずつ相互理解が深まります。

そこで確認するのは、「今の仕事への想い」「抱えている不安や課題」「今後のキャリア希望」など。上司が耳を傾け、共感しつつアドバイスやサポートをする姿勢を見せれば、部下は自分の存在を認められていると感じ、やる気を高めていくでしょう。

7. まとめ:やる気がない部下は、上司や会社が“作り出して”しまうもの

人は本来、何かに挑戦したり、新しいスキルを身につけたりすることに喜びを感じる生き物です。その“やる気”の源泉を塞いでしまっているのが、上司の態度や会社のシステムである場合も珍しくありません。

  1. 部下のやる気がないと感じたら、まず自分(上司)の言動を振り返ろう
    • 仕事の意義や目標をわかりやすく伝えたか
    • 成果を正当に評価しているか
    • 部下の関心や希望をヒアリングしているか
  2. 部下にとってのメリットや成長の可能性を提示しよう
    • 「この仕事でスキルアップできる」「これが成功するとこんな未来がある」など
    • 小さな成功体験の積み重ねと、評価・報酬のフィードバックが重要
  3. 会社として仕組みや風土を整備する
    • 評価制度、研修制度、失敗を許容するカルチャーなど
    • 「頑張った人が報われる」環境を作る

やる気を失った部下を変えたいと思うなら、まずは上司自身が部下にとって「この人と一緒に仕事するのが楽しい・自分の成長につながる」と思われる存在になれるよう心がけましょう。「部下がやる気を出さないのは、自分(上司)にも責任があるかもしれない」という視点を持つだけで、マネジメントのアプローチは変わります。

最初は少し戸惑うかもしれませんが、部下が意欲を取り戻したとき、組織全体にプラスの連鎖が生まれるはずです。上司・会社・部下の三者がウィンウィンになるような関係性を築くためにも、どうか「やる気がないのは部下の問題」と決めつけずに、上司や会社側の行動を見直してみてはいかがでしょうか。

これらのポイントを意識し、実践してみることで、部下が自発的にやる気を出し、組織としてのパフォーマンスも高まるでしょう。どうか“部下のモチベーション”をただ批判するのではなく、“上司や会社のせいかもしれない”と自覚して、改善策を模索する姿勢を忘れずに。そうすれば、きっと今の“やる気がない部下”も、頼もしい存在へと変わっていくはずです。