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経営録

2025.05.29

複数のwebサイトを持つ企業がやっておくべきサーバー・セキュリティ対策10選

企業が運営するウェブサイトの数は増加し続けています。

コーポレートサイトだけでなく、商品・サービス別のサイト、採用や広報用のサイト、特設キャンペーン用のランディングページ、さらには顧客向け会員サイトやECサイトなど、「1社で複数のWebサイトを同時に運営」するのはもはや珍しくありません。

一方で、ウェブサイトが増えるほど管理コストやセキュリティリスクも比例して高まります。サーバーの負荷が大きくなり、ソフトウェア更新や脆弱性対策を怠ってしまえば、外部からの不正アクセスデータ流出のリスクが一気に高まるでしょう。特に攻撃者から見れば、「企業の運営するサイトはいくつもあるので、どれか1つが脆弱性を持っていればそこから侵入できる」ことにもなります。

そのため、複数サイトを運営している企業ほどサーバー・セキュリティ対策を入念に実施すべきです。単に1サイトを守るのではなく、すべてのサイトを安全に運用し、かつ効率的に管理する仕組みを整えなければなりません。そうでなければ、いつの間にか放置されていたサイトがサイバー攻撃の「入口」になり、企業全体への深刻なダメージに発展する可能性があります。

1. サーバーやCMSの定期的アップデート&パッチ適用

1-1. なぜアップデートが大事なのか?

ウェブサイトを運営する上でまず意識すべきは、サーバーOSやミドルウェア、CMS(コンテンツ管理システム)などのソフトウェアを常に最新バージョンに保つことです。ハッカーやマルウェアは、ソフトウェアの脆弱性を狙って攻撃を仕掛けてきます。開発元が脆弱性を発見した場合、通常はすぐにパッチ(修正プログラム)がリリースされるので、そのパッチを適用すれば多くのリスクを回避できます。

1-2. 放置サイトが弱点になる

複数のウェブサイトを持つ企業では、1つのサイトがメインで他は更新頻度が低いといった状況もあり得ます。こうした「準放置」状態のサイトこそ、アップデートが遅れやすいです。バージョンの古いCMSやプラグインが残ったままだと、そこが攻撃の入り口になり、メインのサイトや社内ネットワークに侵入される可能性が生じます。

1-3. 具体的な対策ポイント

  • 定期スケジュールを組む:月1回や2週に1度など、パッチ適用やアップデートをチェックするサイクルを決める
  • 自動更新を活用:OSやCMSプラグインの自動更新機能があるなら積極的に使う(ただし互換性のテストは必要)
  • テスト環境の用意:本番サーバーへアップデートを直に当てると不測の不具合が出るかもしれないので、テスト環境で検証を行うのが望ましい

2. Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入

2-1. WAFとは?

WAF(Web Application Firewall)は、ウェブアプリケーションに対するHTTP/HTTPSの通信を解析し、不正なリクエストや攻撃パターンを遮断するセキュリティシステムです。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなど、アプリケーションレベルでの攻撃からサイトを守ることができます。

2-2. 複数サイト運営時の恩恵

複数サイトを1つのサーバー環境で運用している場合、どれか1つが脆弱性を突かれると他サイトも危険です。WAFを導入すれば、共通のフィルタリングレイヤーで全サイトの通信を監視できるため、管理コストも削減。クラウドWAFやCDN(Content Delivery Network)タイプのWAFもあるので、導入が比較的容易なのもポイントです。

2-3. 設定と運用の注意点

  • 適切なルール設定:WAFが厳しすぎると正当なリクエストもブロックしてしまい、ユーザビリティ低下を招く。最初は学習モードで動かすのがおすすめ
  • 定期的なログ監視:WAFがどんな攻撃を防いでいるのか、ログを見れば把握できる。攻撃が多発しているパターンがあれば対策やサイト改修を検討
  • バージョン更新:WAF自体も定期アップデートが必要

3. SSL/TLSの常時化とHSTS設定

3-1. HTTPS化の重要性

数年前まではログインページや決済ページのみ暗号化するケースが多かったですが、今やGoogleや各種ブラウザが「全ページをHTTPSで保護するのが望ましい」と推奨する時代になりました。SSL/TLSで通信を暗号化していないと、ユーザーの入力データやクッキーなどが盗聴される恐れがあり、フィッシングやセッションハイジャックにつながります。

3-2. HSTS(HTTP Strict Transport Security)とは

HSTSは、ブラウザに対して「このサイトは必ずHTTPSでアクセスせよ」と通知するヘッダーを設定する仕組み。これにより、ユーザーが誤ってHTTP(平文)でアクセスしても自動でHTTPSにリダイレクトされ、ダウングレード攻撃(HTTPSをHTTPに切り替える攻撃)を防げます。

3-3. 実装ポイント

  • 無料SSL証明書(Let’s Encrypt)もあるので、コスト的ハードルは低下
  • すべてのサブドメインでHTTPS化するときはワイルドカード証明書も検討
  • HSTSを導入する際、最初は短いmax-ageでテストし、問題なければ長めに設定
  • HTTPリダイレクトループや混在コンテンツのチェックが必要

4. ユーザー権限の分離と最小権限の原則

4-1. ユーザー権限管理がなぜ重要か

サーバー管理者やCMSの管理者アカウントが高い権限を持ったままだと、万が一ハッキングされると全サイトが改ざんされる可能性が高い。複数サイトを同一サーバーで運営していると、1つの管理者アカウントが全サイトをコントロールできる状況が多いです。
**「最小権限の原則」**とは、各ユーザーやシステムが必要最低限の権限だけを持ち、不要な機能にはアクセスできないようにするという考え方。これにより、アカウントが侵害されても被害範囲を最小化できます。

4-2. 具体的対策例

  • 管理者アカウントを限定する:サイト管理やサーバー管理のアカウント数を最小限に
  • 権限レベルの細分化:編集だけできるアカウント、プラグイン導入だけできるアカウントなどを用意
  • ルート権限を頻繁に使わない:Linuxサーバーのrootアクセスは極力避け、sudo経由で必要時だけ昇格

5. マルチファクター認証(MFA)の導入

5-1. パスワードだけでは不十分

ほとんどの攻撃は、パスワード漏えい辞書攻撃によってアカウントを乗っ取ろうとします。特に面倒がらずに単純パスワードを使っていれば、複数サイトの管理アカウントが簡単に破られる恐れがある。複数サイトを運営している企業の場合、「本番サーバーのログイン情報」を1つ破られただけで大惨事です。

5-2. MFAでログイン強化

マルチファクター認証(MFA)は、パスワードに加えて他の要素(スマホアプリの認証コード、ハードウェアトークン、メール認証など)を組み合わせてログインする仕組み。これにより、たとえパスワードが漏れても、攻撃者は追加の認証要素を入手できなければログインできません。

5-3. 運用のヒント

  • CMS管理画面やサーバーSSHアクセスなど重要な箇所に導入
  • Google AuthenticatorやAuthy、YubiKeyなどの認証ツールを検討
  • 社員にはMFAの重要性と手順を周知し、導入の習慣化を促す

6. ログ監視・侵入検知システムの活用

6-1. 何かあったときにまずログを見る

ウェブサーバーやファイアウォールのログは、攻撃の痕跡や異常なアクセスを示す重要な証拠です。複数サイトを抱える企業では、ログが分散して膨大なデータになることも。そこでログを一元管理し、不審なパターンをリアルタイムに検知する仕組みを導入するのが望ましいです。

6-2. IDS/IPS、SIEMの導入

  • IDS/IPS(侵入検知/防御システム):ネットワークやホストを監視し、攻撃と疑われるパケットや振る舞いを検知・遮断
  • SIEM(Security Information and Event Management):ログを集中収集して相関分析し、セキュリティインシデントを早期発見

これらを活用すれば、サイバー攻撃の初動不審な内部アクセスをいち早く察知し、被害拡大を防げます。

7. 定期バックアップとディザスタリカバリ(DR)計画

7-1. バックアップは「最後の砦」

ランサムウェアやハードウェア故障などでサーバーのデータが消失した場合、最後に頼れるのはバックアップしかありません。複数のウェブサイトを運営している企業は、各サイトのデータ量も多く、しかも重要ファイルやデータベースが複数に分散しているため、バックアップ設計が難しくなりがち。

7-2. オフサイト保管とバージョン管理

  • オフサイト:バックアップデータは別の場所(クラウドストレージなど)に保存し、サーバー障害や災害リスクを分散
  • 世代管理:直近だけでなく、過去数世代分を保持しておく(数日前に改ざんされた場合、最新バックアップも同じ状態だったりするので、古い世代が必要)

7-3. ディザスタリカバリ計画

DR(Disaster Recovery)計画は、万一サーバー全体がダウンした際に何をどう復旧するかを決めておくフローです。

  • RTO(どれくらいの時間で復旧したいか)
  • RPO(どこまでのデータで復旧できれば許容範囲か)

これを社内で共有し、定期的にリハーサルを行うことで、本当に障害が起きても慌てず対処できます。

8. 脆弱性スキャン・ペネトレーションテストの実施

8-1. 攻撃される前に自主的にチェック

脆弱性スキャンツール(OpenVASなど)や、専門家によるペネトレーションテスト(疑似ハッキング)を実施することで、サイトやサーバーが抱える潜在的なセキュリティホールを早期に発見できます。特に、複数サイトを同一サーバーで動かしている場合は、どこか1つに脆弱性があれば全体が危険にさらされるため、定期的な診断が有効です。

8-2. 内部向けテストやソーシャルエンジニアリングも

システム面だけでなく、社員のアカウント管理運用手順に問題があるケースも多いです。内部の人間が安易にパスワードを使い回しているなど、「人的脆弱性」へのテスト(ソーシャルエンジニアリング)も視野に入れましょう。

9. (非技術)専門知識があり信頼できる社員を採用・育成する

9-1. 組織としてのセキュリティ体制

上述した技術的対策をいくら導入しても、最終的に運用するのは人です。特に複数サイトを運営する企業では、一人の“なんでも屋”がセキュリティを兼任しているケースもあるでしょう。しかし、セキュリティが高度化・複雑化する中で専門知識を持つ人材を確保・育成することが不可欠となります。

9-2. 採用と育成のポイント

  • 情報セキュリティやネットワークに詳しいエンジニアを採用する
  • 既存の社員でもセキュリティ研修や資格取得(情報セキュリティスペシャリストなど)を支援
  • 常に最新の脆弱性情報やセキュリティトレンドをキャッチアップする仕組み(社内勉強会など)を作る

組織内に「この人に任せれば安心」といえるセキュリティ担当がいれば、現場レベルでのサーバー設定や運用ルールも適切に管理できるはずです。

10. (非技術)信頼できる外注先を見つけ、長期的な関係を築く

10-1. すべてを内製化するのは難しい

多くの中小企業は、セキュリティやサーバー管理の専門家をフルタイムで抱えるのが厳しいかもしれません。また、複数サイトの設計・運用に広範なスキルが必要で、内製化コストが高いという実情もあるでしょう。そこで大事なのが、信頼できる外部パートナーを見つけることです。

10-2. 外注先を選ぶ際のポイント

  • 実績・口コミを確認:同規模の企業での実績や紹介を頼りに
  • コミットラインを明確に:先方が「どこまでやってくれるのか」、緊急対応は?監視は?
  • 保守運用の継続契約:単発で作って終わりでなく、長期的に保守を任せられる関係

10-3. 長期的パートナーシップのメリット

一度きりのプロジェクトではなく、定期的にセキュリティ監査やサイト更新も依頼できるパートナーがいると、問題が発生したときに迅速に対応してもらえる安心感があります。何年も継続して付き合う中で、外注先が自社の状況を深く理解してくれ、効率的かつ的確なサポートが期待できます。

まとめ:複数サイトを守るための総合的なセキュリティ戦略を

複数のwebサイトを持つ企業は、単に1つのサイトを守る以上に管理が複雑であり、放置サイトや古いプラグインなどの盲点が増えがちです。そのため、以下の10個の対策をセットで考える総合的なセキュリティ戦略を立てることが重要となります。

  1. サーバーOSやCMSの定期的アップデート&パッチ適用
    • 古いバージョンや放置サイトがハッキングの入り口にならないように
  2. Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入
    • SQLインジェクションやXSSを自動的にブロックし、全サイトを一括保護
  3. SSL/TLSの常時化とHSTS設定
    • 全ページを暗号化し、HTTP通信の脆弱性を防ぐ
  4. ユーザー権限の分離と最小権限の原則
    • 管理アカウントを最小限にし、不要な権限を削減
  5. マルチファクター認証の導入
    • パスワード漏えい対策のため、追加の認証要素を加える
  6. ログ監視・侵入検知システムの活用
    • 攻撃を早期に発見し、迅速に対処する基盤を整備
  7. 定期バックアップとディザスタリカバリ(DR)計画
    • 最後の砦としてバックアップを複数世代確保し、DRプランを策定
  8. 脆弱性スキャン・ペネトレーションテストの実施
    • 攻撃される前に自主的に弱点を洗い出し、対策
  9. 専門知識があり信頼できる社員を採用・育成
    • 内部でセキュリティ知識を持つ人材を確保し、定期的にアップデート
  10. 信頼できる外注先を見つけ、長期的な関係を築く
  • すべて内製化が難しい場合、外部パートナーと継続的に協力

どれか1つだけに注力しても「穴」が生じるのがセキュリティ対策です。すべてを網羅するのは大変かもしれませんが、企業規模や状況に合わせて少しずつ導入していきましょう。特に社員の育成外注先の確保は技術面だけでは補えない重要要素であり、複数サイトを安全に守り抜くには不可欠な要素です。

複数のウェブサイトを運営する企業は、ビジネスチャンスを広げる一方で、セキュリティリスクも背負うことになります。しかし、上記の10項目を丁寧に実践することでサーバー・セキュリティ体制を強化し、安心してビジネスを拡大していく土台が作れるでしょう。ぜひ今一度、自社の現状を棚卸ししてみて、必要な強化ポイントを見つけ、一歩ずつセキュリティ対策を進めてみてください。きっと貴社のサイト運営が、より安全で強固なものへと生まれ変わるはずです。