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経営録

2026.01.05

老舗企業の採用ブランド戦略|「古臭い」を「伝統と安定」に変える見せ方

「創業100年の歴史があるが、学生からは『古い会社』としか見られていない」

「安定性は抜群なのに、地味なイメージが先行してエントリーが集まらない」

「ホームページをリニューアルしたいが、伝統あるイメージを壊したくない」

長い歴史を持つ老舗企業の経営者や人事担当者様から、このようなご相談を頻繁にいただきます。ベンチャー企業が「成長」や「革新」を武器に若手を惹きつける一方で、老舗企業は「古臭い」「堅苦しい」といったネガティブなレッテルを貼られ、採用市場で苦戦を強いられているのが現実です。

しかし、結論から申し上げます。「歴史」は、お金で買えない最強の差別化資産です。

若者が老舗企業を敬遠するのは、歴史があるからではありません。その歴史の「見せ方(翻訳)」が現代の価値観とズレているからです。

正しくリブランディングを行えば、「古臭さ」は「圧倒的な信頼」へ、「変化のなさ」は「揺るぎない安定」へと変わり、ベンチャーにはない魅力を放つようになります。

本記事では、老舗企業が持つポテンシャルを最大限に引き出し、若手人材から「選ばれる会社」へと変貌を遂げるための採用ブランド戦略について解説します。

なぜ若者は老舗企業を「古臭い」と感じ、避けるのか

対策を練る前に、まずは敵を知る必要があります。現代の求職者(特にZ世代やミレニアル世代)が、老舗企業に対して抱く「古臭い」というイメージの正体を解像度高く分解してみましょう。彼らは単に設立年数が古いことを嫌っているわけではありません。

1. 「昭和的価値観」への警戒心

彼らが最も恐れているのは、前時代的な労働慣行です。「古臭い」という言葉の裏には、以下のようなネガティブな連想が含まれています。

  • 「見て覚えろ」という非効率な教育体制ではないか?
  • サービス残業や根性論が美徳とされていないか?
  • IT化が遅れており、ハンコやFAXに縛られるのではないか?
  • 飲み会の強制やハラスメントが横行していないか?

つまり、「働きやすさ」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」を阻害する要素として、歴史の長さをネガティブに捉えているのです。

2. 「成長・変化」への諦め

変化の激しい時代において、若者は「スキルが身につかないこと」を最大のリスクと捉えます。「老舗=変化しない=市場価値が上がらない」という図式です。

「年功序列でポストが空いていないため、若いうちは裁量権が持てないだろう」という懸念も、エントリーを躊躇させる大きな要因です。

3. 「透明性」の欠如

多くの老舗企業は、情報発信が控えめです。「沈黙は金」の文化が残っており、Webサイトを見ても具体的な仕事内容や社内の雰囲気が伝わってきません。デジタルネイティブ世代にとって、ネット上に情報がないことは「存在しない」あるいは「何か隠している(怪しい)」と同義です。

ネガティブをポジティブに変える「リフレーミング」戦略

では、これらのマイナスイメージをどう払拭すればよいのでしょうか。無理に若作りをして、流行りのベンチャー企業の真似事をする必要はありません。それはかえって「痛々しい」印象を与えます。

重要なのは、自社の特徴を現代的な価値観に合わせて**「意味の変換(リフレーミング)」**を行うことです。

1. 「古い」→「時代を超えて選ばれ続けた本物」

創業100年ということは、幾多の不況や戦争、震災を乗り越え、市場から選ばれ続けてきたという「生存証明」です。

これを単に「古い」と言うのではなく、**「サステナビリティ(持続可能性)の実証」**として打ち出します。

「流行り廃りの激しい時代だからこそ、100年残る本質の仕事をしよう」

このメッセージは、表面的なトレンドに疲れた層に深く刺さります。

2. 「変化がない」→「ぶれない軸(心理的安全性)」

変化が激しい現代において、変わらないものがあることは「安心感」につながります。

「変化がない」のではなく、**「変えてはいけない哲学(理念)があるから、安心して挑戦できる」**と伝えます。

「失敗しても会社が傾くことはない。盤石な基盤があるからこそ、君は思い切りバットを振れる」

これは、リソースの乏しいベンチャーには言えない、老舗企業だけの殺し文句です。

3. 「年功序列」→「長期的なキャリア形成」

成果主義に疲弊する若者も増えています。「使い捨てにされないか」という不安に対し、老舗企業の雇用慣行は**「人を大切にする(長期的育成)」**という強みになります。

「即戦力なんて求めない。10年かけて一流に育てる」

このスタンスは、成長を焦る若者に対し、逆に「プロフェッショナルへの最短ルート」として映る場合があります。

「伝統」を「革新」の武器にする3つの具体的アクション

リフレーミングの方向性が定まったら、それを具体的なクリエイティブやメッセージに落とし込んでいきます。老舗企業の採用サイトやパンフレットが見違えるようになる、3つのアクションを紹介します。

1. ビジュアルの刷新:レトロモダンと「違和感」の演出

「伝統」と「革新」のギャップを視覚的に表現します。

  • レトロモダンなデザイン:家紋や筆文字といった「和」の要素を使いつつ、レイアウトや配色は現代的なミニマルデザインを採用する。あえてフィルムカメラのような質感の写真を使うなど、「エモさ」を演出するのも有効です。
  • 意外性のある組み合わせ:「老舗の暖簾(のれん)」と「最新のタブレット端末」、「職人の手仕事」と「産業用ロボット」など、対照的な要素を一つの画角に収めることで、「伝統を守りながら進化している」事実を一瞬で伝えます。

もっとも避けるべきは、10年前から更新されていないような「古臭いだけのHTMLサイト」です。スマホ対応は必須条件であり、UI/UX(使い勝手)の良さそのものが、「この会社は現代の感覚を持っている」という証明になります。

2. ストーリーの転換:創業者は「当時のベンチャー起業家」だった

歴史を語る際、単なる年表の羅列になっていないでしょうか。それでは誰も読みません。

創業の歴史を、**「挑戦とイノベーションの物語(ナラティブ)」**として再編集してください。

100年前、創業者はその時代において、誰もやっていないことに挑戦した「ベンチャー起業家」だったはずです。

「当社は100年前のベンチャー企業だ。そして今、次の100年を作るための『第二創業期』を迎えている」

このように定義することで、老舗企業は「完成された組織」ではなく、**「歴史あるアセット(資産)を使って新しい挑戦ができる場所」**へと変わります。これは、ゼロから立ち上げるリスクは負いたくないが、面白い仕事はしたいという優秀な若手にとって、非常に魅力的な環境です。

3. 実態のアップデート:DXと働き方改革の「証拠」を見せる

見せ方を変えるだけでは、入社後のミスマッチ(リアリティショック)を招きます。見せ方と同時に、実態としての「働きやすさ」もアップデートし、それを証拠として提示する必要があります。

  • ツールの導入: Slack、Zoom、クラウド会計など、若者が当たり前に使うツールを導入していることを明示する。「うちは古いけど、道具は最新だよ」というアピールは、ITリテラシーへの不安を払拭します。
  • 制度の柔軟性: リモートワークやフレックス制度、男性育休の取得実績など、数字や社員インタビューで具体的に見せます。

「伝統企業なのに、働き方は最先端」というギャップこそが、最強の採用ブランドになります。

ターゲット設定の妙|「地味にスゴイ」を好む層を狙え

老舗企業が採用戦略を立てる際、ターゲット設定も見直すべきです。キラキラした派手なベンチャー志向の学生を無理に狙う必要はありません。老舗企業の風土に合い、かつ高いパフォーマンスを発揮するのは、以下のような層です。

1. 「職人気質」のコツコツ型

派手な自己アピールよりも、一つの技術や知識を深めることに喜びを感じるタイプ。彼らは、短期的な成果よりも、熟練した先輩から技を盗める環境や、質の高い仕事ができる環境を求めています。老舗企業が持つ「本物志向」と非常に相性が良いです。

2. 「地元志向」の安定重視型

地元に貢献したい、転勤せずに長く働きたいと考える層。彼らにとって、地域での知名度や信頼度は何よりのステータスです。「親が喜んでくれる会社」であることは、地方の老舗企業にとって強力な武器です。

3. 「社会課題解決」に関心がある真面目層

SDGsやサステナビリティに関心の高いZ世代に対し、長年地域社会を支えてきた実績は響きます。流行りの社会貢献ではなく、ビジネスを通じて100年間社会課題を解決し続けてきた事実を伝えましょう。

まとめ:歴史は「重荷」ではなく「土台」である

採用ブランドにおいて、「新しさ」は誰でも作れますが、「歴史」はどれだけお金を積んでも買えません。100年の歴史があるということは、それだけの期間、顧客に価値を提供し続け、雇用を守り続けてきたという動かぬ証拠です。

その事実を「古臭い」と卑下する必要は全くありません。

必要なのは、その重厚な歴史という土台の上に、現代的な意匠(デザイン)と機能(働きやすさ)を実装することです。

「うちは古い会社だから」と諦めるのは今日で終わりにしましょう。

「古いからこそ、新しいことができる」。その自信と誇りを持って自社を語り始めたとき、貴社の歴史は若者たちの目に「輝かしい未来へのパスポート」として映るはずです。

伝統を武器に、次の100年を担う人材との出会いを手繰り寄せてください。