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経営録

2026.01.09

採用サイトに書くべき“物語設計”|条件欄よりも読まれている「社長メッセージ」

「給与や休日の条件を良くしたのに、応募が増えない」

「採用サイトをきれいにリニューアルしたのに、反応が薄い」

「面接に来ても、ウチの熱意がいまいち伝わっていない気がする」

もし貴社がこのような悩みを抱えているなら、その原因は「条件」でも「デザイン」でもありません。採用サイトの中で最も重要なコンテンツが、機能していない可能性があります。

それは、**「社長メッセージ」**です。

多くの求職者、特に優秀な人材ほど、福利厚生の欄よりも先に「トップの言葉」を熟読します。なぜなら、彼らは単なる労働条件ではなく、「誰と、どこを目指して働くか」という**「物語(ストーリー)」**を探しているからです。

結論から申し上げます。中小企業が大手に勝てる唯一の武器は、経営者の「想い」です。

条件面での劣勢を覆し、求職者の心を鷲掴みにする社長メッセージとはどのようなものか。本記事では、単なる挨拶文で終わらせない、採用を成功に導くための「物語設計」の極意について解説します。

なぜ、求職者は「条件」よりも「社長」を見るのか

「給料が高ければ人は来るだろう」というのは、昭和的な古い価値観です。もちろん条件は重要ですが、それだけで決める人は、より良い条件の会社が現れればすぐに去っていきます。

現代の求職者が企業選びで最も重視しているのは、**「心理的な安全性」と「働く意味(パーパス)」**です。

「この船に乗って大丈夫か?」を確認したい

中小企業に入社することは、求職者にとってリスクを伴う決断です。「すぐに潰れないか?」「ブラック企業ではないか?」「社長は信頼できる人間か?」。これらの不安を払拭できるのは、船長である社長の言葉だけです。

社長メッセージが形式的な挨拶だけであれば、求職者は「顔が見えない会社」と判断し、不安を感じて応募を躊躇します。逆に、社長が自分の言葉で熱く、かつ誠実に語っていれば、「この人ならついていけるかもしれない」という安心感が生まれます。

「条件」の比較から「共感」の指名買いへ

給与や待遇といった「条件(スペック)」の土俵で戦えば、資本力のある大企業には勝てません。しかし、「なぜこの事業をやるのか」「どんな世界を作りたいのか」という「物語(ストーリー)」の土俵であれば、企業の規模は関係ありません。

強烈な原体験やビジョンに基づいた物語は、スペック比較を無効化します。「給料は他社より少し安いけど、この社長の考えに共感したからここで働きたい」。このような**「共感による指名買い」**を起こせるのが、社長メッセージの力です。

読まれない社長メッセージの「3大NGパターン」

しかし、残念ながら多くの企業の採用サイトに掲載されている社長メッセージは、誰の心にも響かない「死んだ文章」になっています。以下のようなパターンに心当たりはないでしょうか。

1. 「当たり障りのない挨拶」になっている

「当社は創業以来、お客様第一をモットーに……」

「地域社会に貢献し、社員の幸せを追求します……」

これらは決して間違ったことではありませんが、**「どの会社でも言えること」**です。固有名詞を入れ替えれば他社でも通用するような定型文は、求職者の記憶に1ミリも残りません。彼らが知りたいのは、建前ではなく「あなた自身の本音」です。

2. 「成功自慢・武勇伝」になっている

「私は若い頃、これだけ苦労して成功した」「俺についてくれば間違いない」

自信を見せることは大切ですが、一方的な成功譚や上から目線の説教は、若手人材に「古い」「面倒くさそう」という印象を与えます。

求職者が求めているのは、完成されたスーパーマンではありません。共に悩み、共に成長できる「人間味のあるリーダー」です。

3. 「誰に書いているか」が不明瞭

「優秀な人材を求む」「コミュニケーション能力の高い方へ」

ターゲットを広げようとして、八方美人の文章になっていませんか? 「皆さん」に向けたメッセージは、「私」には刺さりません。

たった一人の「未来の同志」に向けて語りかけるような、手触り感のある言葉が必要です。

心を動かす「物語設計」3つのフレームワーク

では、どのように書けばよいのでしょうか。人を惹きつける物語には、古今東西変わらない「型」があります。それは**「過去(原体験)」→「現在(葛藤)」→「未来(ビジョン)」**という時間軸の展開です。

このフレームワークに沿って構成することで、読み手は映画を見るようにあなたの会社に感情移入します。

1. 過去(原体験):なぜ、この会社をやっているのか?

物語の始まりは、必ず個人的な「動機」からです。

  • なぜ、この事業を立ち上げたのか(継いだのか)?
  • 過去にどんな悔しい思いをしたのか?
  • 誰のどんな笑顔を守りたいと思ったのか?

「儲かりそうだから始めた」ではなく、「やらざるを得なかった理由」や「怒り」「悲しみ」といった感情の原点をさらけ出してください。泥臭い原体験こそが、理念の説得力(根っこ)となります。

「幼い頃、父の工場で見た職人の背中が忘れられなかった」「理不尽な業界の慣習に、どうしても納得がいかなかった」。そんな個人的なエピソードが、読み手の心を掴みます。

2. 現在(葛藤):今、どんな壁に挑んでいるのか?

次に、現在のリアルな姿を伝えます。ここでは、良いことばかりを書く必要はありません。むしろ、直面している「課題」や「困難」を正直に伝えることが重要です。

  • 業界のどんな常識と戦っているのか?
  • まだ達成できていない悔しさは何か?
  • どんな人材が不足していて困っているのか?

「我々はまだ道半ばだ。こんな高い山に登ろうとしているが、まだここなんだ」。

この**「未完成さ」**の開示が、求職者の「助けてあげたい」「自分がそのピースを埋めたい」という参画意欲を刺激します。完璧な会社に、自分の出番はありません。未完成な会社こそが、挑戦の舞台なのです。

3. 未来(ビジョン):この船はどこへ向かうのか?

最後に、この苦難を乗り越えた先に見える「景色」を語ります。

  • 3年後、5年後、会社はどうなっているか?
  • その時、社員はどんな働き方をしているか?
  • 社会はどう変わっているか?

単なる売上目標の数字ではなく、**「ワクワクする映像」**として未来を描くことがポイントです。「この会社に入れば、自分もその景色の一部になれるんだ」と想像させることが、クロージング(応募への決断)となります。

「条件」よりも「意味」を売るライティングの技術

構成が決まったら、実際に文章を書いていきます。プロのライターに頼むのも良いですが、まずは社長自身の言葉で「下書き」を書くことを強くお勧めします。その際、以下の3つの技術を意識してください。

1. ペルソナ(たった一人)に向けて手紙を書く

「人材」という抽象的な対象ではなく、具体的な「誰か」を思い浮かべてください。

例えば、現在のエース社員が入社前に悩んでいた姿や、あるいは過去の自分自身でも構いません。

「今の環境に満足していない君へ」

「安定よりも、手触り感のある仕事をしたいあなたへ」

その「たった一人」に向けて、喫茶店で目の前に座って話しかけるような口調で書いてみてください。その親密さが、読み手に「これは私のことだ」と感じさせます。

2. ネガティブ・スクリーニング(覚悟を問う)

「うちは楽な会社ではありません」「変化を嫌う人には向かないでしょう」

あえて厳しい側面(ネガティブ情報)を伝えることで、ミスマッチを防ぎます。

これは「脅し」ではなく「誠実さ」の証明です。「良いことばかり言う会社は怪しい」と疑う求職者に対し、厳しさも隠さず伝える姿勢は、強烈な信頼(トラスト)を生みます。

「それでも挑戦したい」と応募してくる人材は、覚悟が決まっているため、入社後の定着率も圧倒的に高くなります。

3. 自分の「弱さ」をさらけ出す

社長は完璧である必要はありません。「私にはできないことがある。だから君の力が必要だ」と、弱さを認めて助けを求めてください。

「私は営業は得意だが、デジタルのことはさっぱりわからない。だから、君のITスキルでこの会社を変えてほしい」

この**「謙虚なSOS」**は、若手人材の承認欲求を満たし、「自分が主役になれる場所」という確信を与えます。

【事例】心を動かすメッセージへの変換

では、具体的にどのように書き換えるべきか、BtoB製造業(部品メーカー)を例に見てみましょう。

Before:よくある残念なメッセージ

「当社は昭和〇年の創業以来、確かな技術力で日本のモノづくりを支えてきました。お客様のニーズに応える高品質な製品を提供し、社会に貢献することが私たちの使命です。アットホームな職場で、一緒に成長してくれるやる気のある方を募集します。」

(感想:どこにでもある文章。記憶に残らない。)

After:物語のあるメッセージ

『下請け』という言葉を、この業界からなくしたい。

創業者の祖父は、素晴らしい技術を持ちながら、元請けからの理不尽な値下げ要求に苦しみ続けました。私はその悔しさを忘れたことはありません。

だから私は、会社を継いだ時、誓いました。『もう言いなりにはならない。自分たちで値決めができる、世界一の部品メーカーになる』と。

今、私たちは航空宇宙分野への進出という大きな賭けに出ています。正直、社内の技術者は悲鳴を上げています。失敗の連続です。安定した仕事を捨てて、茨の道を選んだ私を恨む社員もいるかもしれません。

ですが、この壁を越えなければ、日本の町工場に未来はないのです。

私たちには、世界を変える技術はある。しかし、それを世界に売り込む『発信力』と『英語力』が圧倒的に足りません。

安定を求めるなら、他社に行ってください。でも、もしあなたが、日本の技術で世界を驚かせたいと本気で思うなら。そして、泥臭い工場の油の匂いを『誇り』と感じてくれるなら。

ぜひ、あなたの力を貸してください。一緒に、町工場の逆襲を始めましょう。」

(感想:動機、課題、求める人物像、ビジョンが明確。熱量が伝わり、共感する人には強烈に刺さる。)

まとめ:社長メッセージは「求愛(ラブレター)」である

採用サイトにおける社長メッセージは、単なる会社紹介ではありません。

それは、未来の仲間に対する**「魂のプレゼンテーション」であり、人生の一部を預けてもらうための「求愛(ラブレター)」**です。

条件の良し悪しは、相場の変動や競合の出現によって簡単に覆ります。しかし、あなたの人生から紡ぎ出された「物語」だけは、誰にも真似できない、世界で唯一無二のコンテンツです。

かっこいい言葉で飾る必要はありません。

プロが整えた美文よりも、多少不格好でも、汗と涙が滲むような「あなたの本音」の方が、人の心を動かします。

今すぐ、採用サイトの社長メッセージを見直してください。

そこに「あなた」はいますか?

そこに「熱」はありますか?

もし、借り物の言葉が並んでいるなら、今夜、書き直しましょう。たった一人の同志に向けて。その熱意が、採用の景色を一変させるはずです。