1. はじめに
地方企業にとって「正社員不足」は、長年続く深刻な課題です。人口減少や若年層の都会流出で、そもそもの労働力プールが小さくなっているうえ、大企業・都市部企業と比較して給与水準や企業ブランドで不利という認識を学生や求職者が持っている場合が多い。一生懸命採用活動をしても、応募数が少ない、内定辞退が多い、さらには入社後も早期離職…となると、まさに死活問題になりかねません。
しかし近年、社会全体で**“副業”が注目されるようになり、大企業や公務員でも副業解禁する動きが加速しています。これを地方企業が活用することで、正社員不足を補うどころか新しい風を取り入れ、専門的なスキルや都市部との繋がり**を得られる可能性があるのです。
本記事では、**「地方企業の正社員不足は副業人材でまかないましょう」**という視点から、なぜ副業人材の活用が有力なのか、その背景やメリット、具体的な進め方までを総合的に解説します。これまでのブログでお伝えしてきた「理念経営」「DX推進」「インターンシップ」などの要素とも繋げながら、地方企業が生き残り・成長していくための手段として副業人材をどう組み込めば良いか、一緒に考えていきましょう。
2. なぜ地方企業は「副業人材」に注目すべきなのか
2-1. 正社員を増やせない現実
地方企業が抱える問題の一つは、「人材を雇いたいが、正社員雇用には常に一定の固定コスト(給与・社会保険など)が伴う」ということです。収益が不安定な状態で無理に正社員を増やすと、資金繰りが苦しくなってしまうかもしれません。一方、アルバイトやパートでは担えない専門的スキルや責任ある業務があり、どうしたものか…という悩みがつきまといます。
2-2. 副業が一般的になりつつある背景
一方で、最近は企業側も労働者側も副業に寛容になり、国が掲げる「働き方改革」の流れで大企業や官公庁でも副業を認める動きがあります。働き手としては、本業が別にあっても空いた時間やスキルを活かして別の会社をサポートすることで収入や経験を得られる。こうした副業人材を地方企業が活用すれば、足りないリソースや専門知識を必要な分だけカバーできるメリットが生まれます。
2-3. 都市部の優秀層を“リモート副業”で引き込める
技術者やデザイナー、マーケターなどは都会に集中しがち。でも地方企業でもリモートワークを取り入れれば、都心在住の優秀層が「週末や夜だけ地方企業のプロジェクトに参加する」といった形で協力が得られます。正社員としてフルタイムで雇うのは予算的に難しくても、副業という形でスポット的にスキルを提供してもらうことで、正社員不足による課題を解消できるわけです。
3. 副業人材を活用するメリットと注意点
3-1. メリット:専門スキル・新しい視点を低コストで獲得
副業人材は本業で培ったスキルやノウハウを持っているため、即戦力になりやすいです。しかも地方企業が正社員を雇うより柔軟な契約ができ、コストも固定費ではなく変動費的に扱えるのが利点。DXやマーケティングなど専門分野でアドバイスを受けるだけなら、それでも大きな成果が期待できるでしょう。
3-2. 社員への刺激となる
外部から副業人材が参加すると、社内の社員が刺激を受け、新しい発想やスキルアップに繋がる効果があります。特に地方企業で人材が固定化していると、変化に乏しい文化ができあがりがち。そこへ外部の風を入れることで社員が視野を広げ、イノベーションや改善意識を高めるきっかけになるのです。
3-3. 注意点:理念との整合性や情報管理
副業人材を活用する際の注意点として、
- 理念・ビジョンを共有し、方向性の合う人材を採用する
- 単にスキルが高いだけでなく、会社の価値観や地域貢献に共感できる副業人材でないと、ミスマッチを起こす
- 社外への情報漏洩リスク
- 副業者が他社でも働いているため、**秘密保持契約(NDA)**や情報管理ルールを厳格化する必要
- 社員との役割分担
- 社員が「副業の人ばかり優遇されている」と感じると士気が下がる可能性。明確にどこを副業人材が担い、社員がどう連携するかを決め、コミュニケーションを十分に取る
4. 理念経営と副業人材の相性
4-1. “なぜこの会社で副業をするのか”を理念で引き寄せる
副業人材には、本業があるうえで時間を割いて地方企業をサポートしようという意欲が必要です。なぜ彼らがそこまでしたいと思うか――それは**「この会社が面白そう」「やりがいがありそう」「地域をこう変えたいというビジョンに共感する」などの理由が大きいはず。つまり理念**が魅力的であれば、優秀な副業人材を得やすいということです。
4-2. 地元愛や社会貢献意識を刺激する
地方企業が**“地域貢献”“地元を守る”といった想いを理念に掲げていれば、他県出身でも「そこに社会的価値を感じるからこそ、副業で関わってみたい」という人材が現れます。特にUIターン希望者や地元出身なのに都会で働いているエンジニア・デザイナーなどが「自分のスキルで地元を盛り上げたい」**と思うケースは少なくありません。
4-3. 経営を前進させるための“理念+副業”シナジー
理念経営で「この会社はこういう未来を目指す」と社員が理解していれば、副業人材が参画した際にもスムーズに統合しやすい。社員は「理念に沿ってこの人のスキルをどう活かそうか?」と考えられるし、副業人材も「自分はこれを実現するために呼ばれている」と明確に役割を捉えられる。結果、組織全体が“理念”という軸でつながり、正社員不足という弱みを逆手にとって多彩な人材プールを獲得できるわけです。
5. 副業人材活用のステップ:地方企業の観点で
5-1. ステップ1:目的と範囲を定める
まず、「なぜ副業人材が必要か」「どの領域のスキルや時間を求めているか」を明確にする。例:DXプロジェクトを指導してほしい/SNSマーケ担当が欲しい/海外展開で翻訳や交渉が必要 など。
経営者と幹部で話し合い、理念との関連も確認。「地元技術を世界に伝えるために海外対応が必要なので、副業通訳を半年活用しよう」といったストーリーを社員にも共有するとスムーズに受け入れられます。
5-2. ステップ2:募集・マッチング
副業人材を探す方法としては、副業専門マッチングサイトやSNS、在京の地方出身者ネットワークなどが活用可能。自治体や商工会議所が副業人材の受け皿を紹介している場合もあります。
募集要項では、「地元をこう盛り上げたい」という理念や目的をきちんと載せ、求める業務内容・期間・報酬などを明確に。すると、共感した優秀層がエントリーしてくれる可能性が上がります。
5-3. ステップ3:契約内容と情報管理を確定
副業の場合、通常の正社員と違う契約形態となります。業務委託契約や業務内容の定義をしっかり行い、報酬体系(時給か固定か成果報酬か)や守秘義務、競業避止、勤務時間・コミュニケーション手段などを明文化しておく。地方企業はこうした契約に不慣れかもしれませんが、専門家やクラウドソーシングサイトのサポートなどを活用すると安心です。
5-4. ステップ4:現場受け入れ準備と連携ルール作り
副業人材が参画するとき、社内の誰が窓口担当となるか決める。業務説明やスケジュール、成果物の提出フローを取り決めるなど、受け入れ体制を整える。オンライン会議ツールやチャットでコミュニケーションを定期的に行い、進捗を共有し合うのが一般的。
5-5. ステップ5:定期的に評価・フィードバックし、必要なら契約を拡大
半年や1年の契約であれば、途中で定期レビューを行い、「予想以上に成果が出たので、プロジェクトを拡大しよう」「別の分野でも副業人材を追加しよう」といった判断をする。逆に、期待した成果が得られなければ契約終了も選択肢。一度成功経験があれば、地方企業でも副業人材活用のノウハウが社内に蓄積されるため、次以降の運用がスムーズになります。
6. 副業人材活用+理念経営で期待できる成果
6-1. 人材不足解消だけでなく、組織全体が活性化
単に正社員を補うのではなく、高度スキルや外部視点を取り込むことで、社員が新たなアイデアや働き方を学び、会社全体が変化に強い組織へと進化します。これは地方企業が衰退を防ぎ、逆に成長する大きな契機になるでしょう。
6-2. 採用ブランディング強化と後継者候補へのアピール
副業人材がうまく活躍している事例は、**「柔軟な働き方を受け入れる企業」「面白い外部人材とコラボしている会社」**としてのアピールにもなり、若者や後継者候補が興味を持つかもしれません。理念経営のもとで副業人材も動いている姿をSNSや採用サイトなどで発信すれば、本格的に新卒や中途社員を募集する際に大きなインパクトが期待できます。
6-3. 新規事業・DXの加速で地域に貢献
副業を通じて、たとえば東京のITエンジニアが週末に地方の工場をサポートする形が成立すれば、DXが一気に進むかもしれません。地方企業が地域経済の柱として活性化し、住民や自治体からの評価も高まり、また別の良い循環を生むというシナリオが描けるでしょう。
7. まとめ:地方企業の正社員不足を“理念×副業活用”で克服しよう
地方企業が直面する正社員不足は、人口減少や都市集中という構造的背景もあり一筋縄ではいきません。しかし、その打開策の一つとして、副業人材の活用が高まっています。
- フルタイムで雇う余裕がない
- 専門スキルや外の視点を入れたい
- 地元の人手だけではまかないきれない業務がある
こうした課題に対して、副業人材が柔軟に労働力や知識、ノウハウを提供してくれるのは有力な解決策と言えるでしょう。そして、それを成功させるキーポイントが**“理念経営”**です。
- 理念がしっかりしている企業は、「なぜ副業人材を募集しているのか」「どんな未来を作る会社か」を明確に伝えられる
- 副業で参加する人も「自分のスキルがこの理念実現に役立てる」と理解し、モチベーションが高まる
- 社内の正社員も、「外部の人が入ってきても会社の軸(理念)はブレない」と安心し、協力体制が築きやすい
- 結果として、正社員不足を補いつつ、会社全体がイノベーティブになり、採用面や後継者問題にも好影響
「地方企業なんだから、人材が来ないのは仕方ない…」と諦める必要はありません。理念経営で自社の存在意義を強固にし、それを軸に外部の副業人材とコラボレーションを進めれば、想像以上の組織変革や成長が手に入るかもしれないのです。
ぜひ今一度、経営者や幹部が集まり、**“自社の理念は何か?” “どういう未来を描いているのか?”**を再確認し、合わせて副業人材を具体的にどう活用できるかを検討してみてください。そこから新たな風が生まれ、正社員不足というピンチをチャンスに変える道がひらけるでしょう。