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経営録

2025.05.30

地方企業の人手不足は理念経営で解決する

1. はじめに

日本中で進む人口減少若年層の都市部への流出に伴い、地方企業が深刻な人手不足に悩む状況はますます顕著になっています。特に、中小規模の地方企業では、採用難が続き、せっかく採用してもすぐ離職してしまうなど、組織づくりがままならないという声もよく聞かれます。

しかし、すべての地方企業が一様に衰退しているわけではありません。中には魅力的なビジョンや経営理念を掲げ、地元学生やU・Iターンの人材を引きつけ、さらに外部の優秀な人材を呼び込んで着実に成長している企業もあります。

彼らが実践しているのが、「理念経営」という考え方。具体的かつ経営者が心の底から語れるビジョンを定め、それに沿った経営計画・採用計画・財務計画・社内制度を徹底することで、人材不足を逆手に取り、共感してくれる優秀な仲間を集めることに成功しているのです。

「地元企業の未来を考え、地域で事業を続けたい」「でも、人手不足でいつまで続けられるか分からない」と悩む経営者にとって、理念経営はただの精神論ではありません。ビジョンが経営の羅針盤となり、それを徹底的に実行することで、求職者の共感度が高まり、組織が強化される――そんな具体的な成功への道筋を考えてみましょう。

2. なぜ地方企業は人手不足に悩むのか?

2-1. 人口減少と若年層の都市部集中

地方では、少子高齢化が顕著に進み、若年層が学業・就職を機に都市部へ流出しがちです。特に、地方の中小企業は大企業や都会の企業と比べて給与や待遇面で劣るというイメージがあり、地元に残る学生も限られています。その結果、新卒採用や若手人材の確保が難しい状況です。

2-2. 中小企業ならではの制約

地方の中小企業は資金力も限られ、PRや広告に大きな予算を割くのが難しいでしょう。採用広報に力を入れたくても「人手不足→忙しい→採用活動に時間やお金をかけられない」という悪循環に陥りがち。さらに、業種によっては職場環境が古くからの体質を引きずり、「ブラックではないか」という疑念を持たれやすい面もあります。

2-3. 求職者が大企業・都市部を選ぶ心理

若い人にとって、大企業や都会で働く方がキャリアチャンスや給与アップなどの魅力が大きいと感じられやすいです。地方企業は「成長できるのか?」「ちゃんと給与が出るのか?」などの不安を払拭しなければ、応募すら集まらないのが現実。それを打破する強力な武器が**“理念”“ビジョン”**なのです。

3. 理念経営とは?――経営者が心の底から語れるビジョンの力

3-1. 理念経営の基本

理念経営(ビジョン経営)とは、「企業がどんな価値観を大切にし、どんな未来を実現したいのか」を全社員が共有し、その理念に基づいて経営判断や行動を行う考え方です。ここでいう理念は、単なるスローガンではなく、経営者の心の底からの想いや、企業が果たすべき存在意義を具体的に示すものであることが重要。

  • 「地域を盛り上げたい」「社会問題を解決したい」という熱い想い
  • 「お客様がワクワクできるサービスを作りたい」というビジョン
  • 「社員が夢を持てる職場」を目指す経営方針

3-2. ビジョンが求職者を惹きつける理由

人は給与や条件だけを求めて働くわけではありません。特に若い世代は**「やりがい」「社会的意義」「自分らしさを活かせる場所」を重視する傾向が強いと言われます。もし地方企業が明確で魅力的なビジョンを掲げ、それを経営者や社員が本気で共有している**ならば、「面白そう!」「この会社で働きたい!」と感じる学生や若者は増えるはずです。

  • 大企業と比べると給与や規模で負けても、“ビジョンへの共感”という武器で差別化
  • 「こんな未来を作っている会社の一員になりたい」と思わせる力がビジョンにはある

3-3. 経営者が「心の底から語れる」こと

理念経営で大切なのは、経営者自身がその理念を**“心の底から”**信じ、社員や求職者に向けて一貫して語り続けることです。うわべだけの言葉では、社員も求職者も見抜いてしまいます。熱量こそが人の心を動かし、採用活動においても「この会社は本気だ」と思わせる決定打になります。

4. 理念経営を軸に経営計画・採用計画・財務計画・社内制度を徹底する

理念を掲げるだけでは、売上や採用が急に良くなるわけではありません。理念を“頂点”に置き、そこから経営計画や採用計画、財務計画、社内制度まで一貫性を持って作り込む必要があります。

4-1. 経営計画:ビジョンを数値化・行動計画化

  • ビジョンを達成するために、3年後・5年後にどの市場でどれくらいの売上・顧客数を目指すか
  • そのために必要なプロジェクトや新商品開発のスケジュール
  • 部門ごとの目標を明確化

こうした計画があると、社員も「どんな努力をすればビジョンに近づくのか」を理解できます。

4-2. 採用計画:理念に沿った人材像を定義

  • 求める人物像を「会社の理念・バリューを体現できる人」として明文化
  • 採用サイトや説明会で理念を強調し、応募者にも「共感して入社してもらう」スタンスを貫く
  • 面接時にもスキルだけでなく、ビジョンへの共感度を重視した評価を行う

4-3. 財務計画:理念を実行するための投資を決める

  • 「このプロジェクトに投資すればビジョンが前進するか」を基準に予算配分
  • 社員の学習やスキルアップに投資し、組織力強化を図るなど、理念との関連性を明確化
  • CFOや財務担当も理念を理解し、単なる数字の最適化ではなく長期的なビジョン実現をサポート

4-4. 社内制度:評価・報酬・働き方を理念と整合させる

  • 行動評価の軸に「理念をどれだけ実践しているか」を追加
  • 残業削減や柔軟な働き方を通じて、社員がビジョンに向けたチャレンジをしやすい環境を作る
  • 福利厚生や社員教育も、理念と紐づけて設計する

こうした制度を一貫したストーリーで整備することで、社員が「会社は本当に理念を大切にしているんだ」と納得し、外部へのアピールにも効果を発揮します。

5. ビジョンに共感した仲間による“一枚岩の組織”を作り上げる

5-1. “心からの共感”が採用時の決定打になる

新卒・中途問わず、求職者は「この会社で働く意義を感じられるか」「仲間と協力して達成したいことがあるか」をチェックしています。給与や休日条件も大事ですが、それだけでは都市部や大手企業に勝ちにくいのが現実。だからこそ、経営者の理念やビジョンを語り、それに共感した人が集まる仕掛けが効果的なのです。

共感が高ければ、少々の条件差は「将来の面白さや挑戦のほうが大事」として乗り越えられる学生や若手がいます。

5-2. 集まったメンバーが“一枚岩”になる

理念経営で採用すると、入社段階で理念への賛同がフィルターになっています。すると社員は同じ方向性・価値観に共感しており、結束力が高い組織になりやすい。事業を進める際も「この仕事をやる意味は理念に合致するか」「どうすればビジョンに近づけるか」といった共通言語があり、部門間での連携やコミュニケーションもスムーズです。

5-3. 地方企業の強みを活かせる

地方企業は地元の文化やコミュニティを大事にし、地域貢献を理念に含むケースが多い。それに共感してくれる人は、地域外からも集まることがあります(Uターン、Iターン、あるいは完全移住など)。“地域を盛り上げる”という理念が明確なら、心を動かされる人は必ずいるのです。

6. 実例や注意点――理念を形骸化させない運用方法

6-1. 成功事例(仮想ストーリー)

ケース:地方の製造業A社

  • 課題:人材不足が続き、技術継承が進まない。若手がすぐ都会に転職してしまう
  • 転機:社長が「地元の伝統技術を、最新テクノロジーで世界へ広げたい」というビジョンを掲げ、社員と徹底的に議論
  • 具体的実践
    • 採用計画で「地域の文化を世界に発信する仲間を探しています」と明確に打ち出す
    • 社内制度を見直し、若手でもプロジェクトをリードできる環境を整備
    • 経営計画においても、新プロダクト開発や海外出展に積極的投資を行う
  • 結果:Uターン希望の若者や地元高校・大学出身者から「面白い会社」と注目され、採用説明会に学生が集まる。内定後の離脱も減り、入社後もビジョン実現に向けてモチベ高く働く社員が増えた

6-2. 理念の押し付けは逆効果

注意すべきは、理念をただスローガンのように押し付けるやり方です。社員が納得していないのに「うちの理念はこれだ、守れ!」と言われても、息苦しさが生まれ、逆に離職率が上がることも。経営者やリーダーが現場を巻き込みながら理念を作り上げるプロセスが欠かせません。

6-3. 経営環境に応じた定期的なアップデート

理念は一度決めて終わりではなく、社会情勢や会社のステージが変わればアップデートを検討しても構いません。ただしコアとなる「何のために存在する会社か」はそう簡単に揺らぐものではないため、基本思想を大切にしつつ、表現や運用を柔軟に改善していくのが理想的です。

7. まとめ:地方企業の人手不足を“理念経営”で解決しよう

地方企業が人手不足を解消するには、大企業並みの給与や福利厚生を提供するのは難しいかもしれません。しかし、そのハンデを“理念経営”という強力な武器でカバーすることは十分可能です。実際に多くの地方企業が、明確なビジョンとともに若者の心を掴み、強固な組織を作り上げています。

具体的かつ経営者が心の底から語れるビジョンを掲げると、求職者は“ここで働く意味”を感じ取りやすくなり、面白そう!やってみたい!というモチベーションが高まります。さらに、そのビジョンを実現するために、経営計画・採用計画・財務計画・社内制度設計を一貫させることで、社員は「会社が本気だ」と感じ、一枚岩の強い組織が形成されるわけです。

もし現在、採用広報や説明会を行っても応募数が集まらず困っているなら、あるいは地域企業として地元の若者から見向きもされないと嘆くなら、今こそ理念経営を見直してみてください。会社の本質的な価値を明確に言語化し、現場と共有し、採用活動に落とし込む。そこに時間と労力を注げば、必ずビジョンに共感してくれる人材が現れ、地域企業の力を結集して成長する未来が開けるはずです。