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経営録

2025.05.19

地方企業がオウンドメディアに力を入れるべき理由

1.はじめに

近年重要性を増しているオウンドメディア。自社サイトやブログ、SNSといった“自分たちがコントロールできる媒体”を通じて情報を発信し、ブランドや価値を広く伝える手法です。

「広告出稿や既存メディアへの露出」だけが情報発信の方法ではありません。

むしろ、自社で直接情報を発信するオウンドメディアこそが、これからの地方企業が地域で信頼を得て生き残るために不可欠な存在になりつつあります。本記事では、地方企業がオウンドメディアに力を入れるべき理由を、以下の観点から解説していきます

2. 人口減少時代、地方企業にとっての課題とチャンス

2-1. 人口減少と競争激化

地方企業は、従来から大都市との人材・資本の格差に苦しんできました。さらに人口減少が進むなかで、地域内の顧客数や若年労働力が減少し続けるのは避けられない流れです。そのため、

  • 地元だけでビジネスを完結するのが難しくなる
  • 後継者不足や人材の確保が困難になる
  • 大手企業や都会の企業がネットを使って地域へ参入してくる

など、多方面で競争が激化する厳しい状況が続いています。

2-2. デジタルで“世界”と繋がれるチャンスも

一方で、インターネットやSNSの普及により、地域の企業であっても世界と繋がる可能性が広がっています。昔なら都市部のメディアに取り上げられなければ全国に情報を発信できなかったのが、いまや自分たちでブログやSNSを使えば、直接情報を届けられる。これは地方企業にとって大きなチャンスです。

  • 地元で培ってきた技術やサービスをネット経由で広域・全国へ販売・アピールできる
  • 移住やUターンを考える人に向けて、自社の雰囲気や働き方を発信し、人材獲得の可能性を高められる
  • 大手が手が回らないニッチな市場を、地域発の強みでオンライン展開できる

この“ネット経由で世界と繋がる”ために有効なのが、オウンドメディアというわけです。

3. 広告に頼りきれない時代に、“自社発信”が不可欠

3-1. 広告費のコスパと限界

地方企業にとって、広告は必ずしも簡単ではありません。新聞やテレビなど大手メディアへの広告は費用が高く、地元紙への出稿やチラシ配布にしても効果が読みにくいのが現実です。さらに、広告という形で一方的に情報を投げるだけでは、顧客との深い繋がりや信頼関係を築きにくい面もあります。

また、都市圏に比べればメディアの選択肢が限られ、広告展開だけで売上や認知度を伸ばすのは非効率です。特に人口が減少している地域において、広告費のリターンを十分に確保することはますます難しくなります。

3-2. オウンドメディアなら継続的で低コスト

対して、オウンドメディアは自分たちがコントロールできる媒体であり、運用にかかるコストは主に人件費や制作の手間だけで済むため、長期的には広告費より低コストで継続的な発信が可能になります。また記事やSNS投稿など、一度作成したコンテンツは資産となり、検索エンジン経由で長期的にアクセスを集める効果も期待できます。

  • 地方企業の強み(地域特有の素材や文化、風景など)を発信するブログ
  • 自社のノウハウや事例を紹介するオウンドメディアサイト
  • SNSでの生きた発信や顧客とのコミュニケーション

これらの手段を組み合わせれば、広告出稿に依存しない安定的な情報発信を行い、潜在顧客との接点を増やすことができます。

4. 非本質的な編集が入らない“ストレート”な情報発信

4-1. メディアに頼ると情報が編集されるリスク

テレビや新聞、雑誌などの既存メディアで取り上げてもらう場合、編集部や記者の視点・方針によって内容が切り取られたり、誇張・省略されたりすることは避けられません。
もちろん、メディアが持つ大きなリーチは魅力ですが、地方企業が自社の想いやサービスの特徴を100%正確に伝えられるかといえば、そこはメディア側の判断に大きく左右されます。

  • 紙面の都合で重要な部分が割愛される
  • 都市部の読者に向けて話を簡略化するため、ニュアンスが変わってしまう
  • 企業の思い描くブランドイメージとは異なる角度で報道される

こうした状況では、“自分たちが本当に伝えたいメッセージ”を発信しづらいのです。

4-2. オウンドメディアなら意図をそのまま届けられる

一方で、自社サイトやブログ、SNSなどのオウンドメディアを使えば、第三者による編集を受けずにストレートな情報を世に出すことができます。

  • 地元の文化や歴史と絡めた自社商品の物語を、ありのまま描く
  • 経営者や社員の想いを、そのままの言葉で伝える
  • 新しい取り組みや失敗談も、企業の視点からリアルに発信する

こうした“リアルでストレートな情報”は、特に地元住民やターゲット顧客の心を打ちやすいポイント。「自分たちはこんな企業なんだ」「こういうビジョンで動いている」と言葉を直接届けられるため、結果として信頼関係を築きやすくなるのです。

5. 地方×オウンドメディアの相乗効果

5-1. 地域性とストーリーテリングが相性抜群

地方企業が持つ“地域ならではの強み”は、オウンドメディアにおいて大きな武器となります。たとえば:

  • 地元特産品の生産過程やレシピを動画や写真で紹介
  • 観光要素と絡めて地域の魅力を発信しつつ自社商品をPR
  • 社員が地域イベントや伝統文化と連携して活動する様子を発信

これらは都市部の企業には出せない独自のストーリー。オウンドメディアで丁寧に伝えれば、ファンを育て、地元外からの注目を集めるチャンスになります。

5-2. 地域コミュニティとの繋がりを可視化

地方企業は地域コミュニティと密に繋がっているからこそ、生き残っている面もあります。その繋がりや貢献活動をオウンドメディアで可視化することで、地域社会への姿勢や価値観を内外に示せます。例えば:

  • NPOや学校とのコラボ事例をブログで詳細に紹介
  • 地域行事のレポートや社会貢献活動をSNSで発信
  • 地元住民や顧客の声をオウンドメディアでピックアップ

こうした取り組みで、社内外から「この企業は本当に地域を大切にしている」という信頼感が高まり、地元の若者も「ここで働きたい」と思うきっかけになるかもしれません。

5-3. オンライン活用で市場を拡張

地方企業こそ、地域だけでなく全国や海外に向けて情報を発信する必要があります。オウンドメディアをしっかり育てれば、SEO(検索エンジン最適化)を通じて遠方のユーザーにもリーチでき、通販やオンラインサービスの利用に繋げることが可能です。

  • 地域に埋もれた高品質な食品や工芸品を全国に売り込む
  • 地元の観光資源を紹介し、旅行客を呼び込む
  • テレワークやリモートを活用し、都市部の人材を採用する

ネットを介して地域の魅力を広げ、新たな市場や人材を獲得する戦略には、自社でコントロールできるオウンドメディアが欠かせません。

6. 長期的なブランディングと経営への好影響

6-1. 企業の信頼度を高める“デジタル資産”になる

オウンドメディアは、すぐに成果が見える広告とは違い、**じわじわと企業の信用やブランド力を育ててくれる“デジタル資産”**です。

  • 過去に書いたブログ記事や、SNS投稿が長期的にアクセスを集め、会社への問い合わせを増やす
  • 採用候補者が検索で「○○企業 評判」を調べた際、自社サイトやブログで会社の想い・実績を直接見てもらえる
  • 取引先が「どんな企業なんだろう」と調べたとき、オウンドメディアで詳しい情報が得られれば安心感が高まる

このように、中長期的に積み上げていくコンテンツが企業の顔や履歴書のような役割を果たし、将来のビジネスチャンスを呼び込む材料となるのです。

6-2. 人材採用にも有効

地方企業の最重要課題の一つが人材採用や後継者問題です。そこでオウンドメディアが有効活用できれば、会社のビジョンや理念、働く環境や社員の声などを、リアルに伝えられます。

  • 社員インタビューを載せることで、社内の雰囲気や仕事への想いを共有できる
  • 経営者のメッセージや会社の歴史、未来の方向性を詳しく説明する
  • 地域の暮らしや魅力も合わせて発信し、Uターン・Iターン希望者に興味を持ってもらう

「この会社、なんだか面白そうだな」「自分がやりたいことと合いそう」と感じる人を見つけるには、企業が情報をオープンにすることが不可欠。オウンドメディアはその場を提供する最適な手段と言えるでしょう。

6-3. 運用を通じて社内の情報共有と意識改革が進む

オウンドメディアの運用には、ネタ探しや取材、記事作成など、社内での協力が欠かせません。これにより部署間のコミュニケーションが活性化し、社員同士が「うちの会社の強みって何だろう?」と考えるきっかけになります。

また、記事やSNS投稿を作る際に、「顧客は何を求めているか」「この地域の特徴は何か」を改めて掘り下げることで、経営全体の視野が広がる効果も期待できます。したがって、オウンドメディアを運用していくプロセスそのものが、社員の意識改革や組織力強化にも繋がるのです。

7. 実際にオウンドメディアを始めるステップ

7-1. 目的とターゲットを明確にする

「オウンドメディアをやろう」と決めても、まずは何を目指すのか、誰に届けたいのかを明確化する必要があります。

  • 地元の顧客向けに情報発信し、店舗来店やファンづくりを目指す
  • 全国の潜在顧客に向けてECサイトへの誘導を狙う
  • 求職者や若い世代に向けて職場情報や企業理念を伝える

複数の目的を兼ねることもできますが、焦点を絞ったコンテンツ企画が重要です。

7-2. 運用体制とコンテンツ戦略

オウンドメディア運用には、運用体制を整えることが肝心です。

  • 誰が記事を書くのか(社内広報担当・経営者・社員リレー形式など)
  • アップの頻度やテーマの決定方法
  • 取材や編集、SNSシェアなどのフロー

コンテンツ戦略としては、企業の強みや地域の魅力を活かし、読者が興味を持つテーマ(例:地元食材のレシピや観光情報、ビジネスノウハウ、採用情報など)を定期的に発信します。

7-3. 継続的な検証と改善

オウンドメディアは、短期間で効果が出るものではありません。アクセス解析やSNSの反応を見ながら、試行錯誤を繰り返すことが大事です。

  • アクセス数や問い合わせ数、SNSでの反応をチェック
  • 読者や顧客からのフィードバックを収集
  • SEOやSNS運用のノウハウを学び、コンテンツを改善

このように地道な運用を続けることで、少しずつ認知度や信頼が高まり、ビジネスチャンスに繋がるはずです。

8. まとめ:オウンドメディアこそ、地方企業が選ばれ続ける要になる

人口減少が進むなかで、選ばれ続ける地方企業になるためには、自社発信の情報の力が欠かせません。単に広告に頼るだけではなく、自分たちの想いをストレートに発信し、顧客と直接繋がる場が必要なのです。

オウンドメディア(自社サイトやブログ、SNS)は、まさにその土台を作る最適解と言えます。第三者の編集が入らず、企業の個性や理念、地域の魅力をありのままに伝えられる。コストを抑えつつ、長期的にブランディングや採用にも好影響を及ぼす。それがオウンドメディアの強みです。

  • 広告費のコスパと限界を感じるなら、オウンドメディアで情報を蓄積しよう
  • “地方”という強みを活かしたストーリーテリングで差別化を図ろう
  • 経営者や社員が一丸となって情報発信することで、地域コミュニティとの信頼関係を深めよう
  • 長期視点でブランディング資産を育て、経営の安定と発展に繋げよう

もちろん、オウンドメディア運用には時間と手間がかかりますが、その成果は長期的な集客力・ブランド力として蓄積されていきます。地方企業だからこそ、地域の独自情報を活かし、オウンドメディアでしか発信できないコンテンツを作り上げることで、人口減少の時代でも“選ばれ続ける企業”を目指すことが可能です。

広告に頼らない自社発信が経営の生命線になる――それは今や大都市の企業だけでなく、地方企業にも当てはまる原則です。むしろ地方企業こそ、自社の魅力や地域との繋がりを存分にアピールできる強力なツールとして、オウンドメディアを活用すべきだと思います。