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経営録

2025.12.31

利益と理念、どっちが大事?「儲け」を生み出すための理念経営論

「きれいごとの理念で飯が食えるか」

「まずは利益だ。理念なんて儲かってから言え」

「利益追求に走りすぎると、社員が疲弊して心が離れていく」

経営の現場において、「利益」と「理念」はしばしば対立概念として語られます。特に、資金繰りに追われる創業期や、業績が悪化した局面では、理想(理念)を語ること自体が現実逃避のように感じられることもあるでしょう。

「利益と理念、結局どちらが大事なのか?」

この究極の問いに対し、本記事では精神論ではなく、経営の持続可能性と経済合理性の観点から明確な答えを提示します。

結論から申し上げます。「利益」と「理念」は対立するものではなく、強力な「因果関係」で結ばれています。

正しい順序で経営を行えば、理念は最強の集金装置となり、利益は理念を実現するための燃料となります。逆に、どちらか一方を軽視した瞬間に、企業の寿命は尽きます。

本記事では、多くの経営者が陥る「二項対立の罠」を解き明かし、理念を武器にして持続的に「儲け」を生み出すための経営論について解説します。

結論:「利益」と「理念」は対立しない。因果関係にある

まず、この2つの関係性を正しく定義する必要があります。

よくある間違いは、「利益(アクセル)」と「理念(ブレーキ)」という捉え方です。「儲けすぎると理念に反するからブレーキを踏む」という考え方は、企業の成長を阻害します。

正しい認識は以下の通りです。

  • 理念(ミッション・ビジョン):目的地(Why / Where)
  • 利益(プロフィット):燃料・手段(How)

車で例えるなら、理念は「どこへ行きたいか」という目的地であり、利益はその車を走らせるための「ガソリン」です。

「ガソリン(利益)を入れること」自体を目的にドライブする人はいません。ガソリンはあくまで、目的地(理念)に到達するために必要な手段に過ぎないからです。しかし、ガソリンがなければ車は1ミリも進まず、目的地にたどり着くことはできません。

つまり、「理念を実現するために、利益が必要である」。これが経営における絶対的な真理です。利益が出なければ、社会貢献も、従業員の幸せも、顧客への価値提供も、すべて絵に描いた餅で終わります。

したがって、「理念経営」とは、利益を度外視することではありません。むしろ、**「崇高な理念を実現するために、誰よりも貪欲に利益を追求する」**という、極めて現実的なスタイルなのです。

「理念なき利益」と「利益なき理念」の末路

このバランスが崩れた時、企業はどのような末路をたどるのでしょうか。江戸時代の思想家、二宮尊徳の言葉を借りれば、その答えは明白です。

理念なき利益=犯罪(暴走する組織)

「道徳なき経済は犯罪である」

理念(道徳・倫理観)を持たず、ただひたすら利益だけを追求する組織は、遅かれ早かれ社会的な制裁を受けます。

  • 不正会計やデータ改ざん
  • 従業員への過重労働の強要(ブラック企業化)
  • 顧客を騙すような強引な営業

「儲かれば何をしてもいい」という判断基準が蔓延すれば、一時的には売上が上がるかもしれません。しかし、コンプライアンス違反や炎上、離職率の激増によって、企業ブランドは瞬時に崩壊します。理念というハンドルのない車がアクセル全開で走れば、事故を起こすのは必然です。これは経営ではなく、ただの暴走です。

利益なき理念=寝言(持続不可能な慈善事業)

「経済なき道徳は寝言である」

一方で、どれほど高尚な理念を掲げていても、利益を生み出せなければ、それはビジネスではなくボランティア(あるいは趣味)です。

「お客様のために安く提供する」「社員を大切にする」と言いながら赤字を垂れ流していれば、いずれ資金ショートし、会社は倒産します。倒産すれば、お客様へのサービスも停止し、社員とその家族を路頭に迷わせることになります。

「良いことをしているのだから、儲からなくてもいい」というのは、経営者の甘えであり、無責任な「寝言」に過ぎません。理念を掲げる以上、それを継続させるための利益を稼ぐ義務があるのです。

理念が「儲け」を生み出す3つの経済合理的メカニズム

では、なぜ「理念」を重視することが、結果として「利益(儲け)」に繋がるのでしょうか。ここには、精神論ではない明確な経済合理的メカニズムが3つ存在します。

1. 採用・定着コストの劇的な削減

経営において最も大きなコストの一つが「人件費(採用・教育コスト)」です。

理念がない会社は、給与条件で人を釣るしかありません。しかし、条件で来た人は、より良い条件の会社があればすぐに転職します。結果、採用コストと教育コストが垂れ流しになります。

一方、理念に共感して入社した人材は、定着率が高く、モチベーションも自律的に維持されます。「この会社で働きたい」という内発的動機があるため、金銭的報酬以上のパフォーマンスを発揮します。

採用コストを下げ、一人当たりの生産性を高める。理念経営は、PL(損益計算書)のコスト構造を劇的に改善する効果があるのです。

2. 「指名買い」による価格競争からの脱却

理念は、独自のブランドストーリーを生み出します。

機能や価格だけで勝負すれば、資本力のある大手に負けます。しかし、「なぜやるのか(Why)」という理念に共感が集まれば、顧客は「機能」ではなく「意味」に対価を支払うようになります。

「少し高いけれど、この会社の考え方が好きだから買う」

「このビジョンを応援したいから契約する」

このような「指名買い」が起きれば、価格競争に巻き込まれることはありません。適正な利益(あるいは高付加価値によるプレミアム利益)を確保できるようになり、粗利率が向上します。

3. 意思決定スピードの向上による機会損失の回避

ビジネスにおいて、スピードは利益です。

判断基準(理念)が曖昧な組織では、現場がいちいち上司にお伺いを立てたり、会議で結論が出ずに持ち越したりと、意思決定に膨大な時間がかかります。

理念が浸透している組織では、現場の社員が「これは理念に合致するからやる」「これは反するからやらない」と即断即決できます。このスピード感こそが、チャンスを逃さず利益を最大化するための強力な武器となります。

どちらを優先すべきか?究極の判断基準

「因果関係にあることはわかった。それでも、目の前の資金繰りが厳しい時、理念を曲げてでも利益を取りに行くべきか?」

経営者なら、このような究極の選択を迫られる場面があるでしょう。

この問いに対する答えは、**「短期的生存のためなら利益、長期的成長のためなら理念」**という使い分けです。

生存のための「緊急避難」は許される

会社が潰れてしまっては元も子もありません。倒産寸前の状況であれば、なりふり構わず利益を確保し、延命を図ることは経営者の責任です。この局面で「理念が…」と言って動かないのは愚策です。

ただし、それはあくまで「緊急避難」であることを自覚し、社員にも説明する必要があります。「今は非常事態だから、一時的にこの方針をとる。しかし、危機を脱したら必ず本来の理念に戻る」という約束が必要です。これを怠ると、なし崩し的に理念が形骸化します。

平時における「損して得取れ」の決断

一方、生存が脅かされていない平時においては、**「利益よりも理念」**を優先すべきです。

「この怪しい案件を受ければ、今期の売上目標は達成できる。しかし、理念には反する」

このような場面で、勇気を持って「No」と言えるか。ここで目先の利益を捨てて理念を守ることが、長期的には「信頼」という莫大な資産になります。

「あの会社は、損をしてでも筋を通した」

この評判は、将来的にその損失を補って余りある優良な顧客や人材を連れてきます。理念を守るために一時的な利益を捨てることは、**「未来のブランドへの投資」**なのです。

まとめ:理念経営とは、最も合理的な「金儲け」の戦略である

「利益と理念、どっちが大事?」

この問いは、「心臓と脳、どっちが大事?」と聞いているのと同じです。心臓(利益)が止まれば即死します。脳(理念)が死ねば、生きている意味がありません。どちらも健全に機能して初めて、企業という生命体は躍動します。

重要なのは、理念を「利益を犠牲にする言い訳」にしないこと。

そして、利益を「理念を軽視する免罪符」にしないことです。

「崇高な理念を実現したいからこそ、泥臭く利益を稼ぐ」

「圧倒的に稼いでいるからこそ、理念に基づいた正しい投資ができる」

このサイクルを回すことこそが、理念経営の本質です。

理念は、額縁に入れて飾っておくためのものではありません。それは、激しい競争社会の中で、組織を束ね、ファンを作り、適正な利益を上げ続けるための、極めて実利的で合理的な**「最強の戦略ツール」**なのです。

もし貴社が今、利益か理念かで迷っているなら、視座を上げてください。

「どっちか」ではなく、「理念を使って、どう利益を最大化するか」を考えてください。その思考の転換ができた時、経営の景色は劇的に変わるはずです。